「自分のなかでは本と同じくらい好きなので音楽の話はしたい。音楽の方が好きなときもあります。」
新井さんに「音楽」についてきいてみた
本が好きな人の多くは音楽も愛している。Twitterで実施したアンケートによると「読書好きの89%が音楽も好き」という結果が出た。
読書エンターテインメントメディア「ReaJoy」の特徴は、その本に合う「主題歌つき書評記事」。音楽と本の架け橋になるようなイベント「本の主題歌を決める読書会 BGMeeting」も開催している。
そして書店員は著者と読者を繋げる架け橋である。本を置く、というコミュケーションを受けて本を買う、というコミュケーションで返す。書店員がいなければ本屋さんで本を買うことはできない。ありがとう、書店員さん。でも恥ずかしい本をレジに買うときはなるべく裏返してほしい。バーコードが読み取りやすいように(本当は恥ずかしいから)裏返したのに。
表紙をレジ台の上に置くのは私の立ち読みの時間が長すぎる罰か?
…と、新井さんのエッセイに倣って書いてみたものの、収集がつかなくなってしまった。脱線はけっこう難しい。しかもあのスピード感で。一歩間違えたら大事故である。新井さんの脱線の巧さに脱帽です。
今回は、3冊目となるエッセイ『この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ』の出版を記念して、カリスマ書店員の新井見枝香(あらい・みえか)さんに「音楽」について伺った。好きなアーティストの中でもクリープハイプについては太客倶楽部(ファンクラブの名称)に入っているほど。
はたして、クリープハイプという線路に沿って進むインタビューは逸れるのか、逸れないのか。
新井見枝香 東京都出身、1980年生まれ。アルバイトで書店に入社し、契約社員数年を経て、現在は正社員として文庫担当。文芸書担当が長く、作家を招いて自らが聞き手を務める「新井ナイト」など、開催したイベントは300回を超える。独自に設立した文学賞「新井賞」は、同時に発表される芥川賞・直木賞より売れることもある。2019年2月に 、3冊目となるエッセイ『この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ』が刊行された。
クリープハイプ 4人組ロックバンド。2012年4月メジャーデビュー。18年5月、日本武道館公演を開催。最新作『泣きたくなるほど嬉しい日々に』が好評発売中。
16年にはフロントマン尾崎世界観が小説『祐介』を発表。18年には千早茜との共作『犬も食わない』を発表。小説家としても活躍している。
尾崎さんがつくった言葉から思考が始まることは結構あるかもしれないです
- 今日はよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願い致します。
- 新井さんのエッセイ、読ませて頂きました。オチの伏線の回収が上手いなと感じるのですが、あれはあらかじめオチを決めて書いているのですか?
エッセイは思ったまま書いてますね。たまたま上手くいってるだけで。上手くいかないものはそのまま。でも書いたので満足はしています。
- エッセイを書く上で大事にしていることはなんでしょうか。
自分が楽しいことですね。読まれる前提じゃなくてあくまで趣味みたいな。
- それがこれだけ売れているのはどう思いますか?
謎ですね(笑)
なぜ売れているのかも分からないし、面白いのかもあんまり良く分からない。
- 音楽が好きな人は文章のリズムも良いという話を耳にしました。新井さんのエッセイはリズム感が良くて読んでいるうちに疾走感のようなものを感じます。普段はどういう音楽を聴かれるんですか?
ロックの曲が多いですね。ノリノリな曲が多い。昨日もLIVEに行ってましたし。
- それは誰のライブですか?
それは言わない(笑)好きすぎて誰かと共有したくないです。
絶対に分かり合えないから。LIVEの一体感を逃れた後に話すのは感動が薄れる感じがしますし。
- ということはLIVEに一人で行かれる。
そうですね。知り合いに会っても話しかけないでくださいって言います(笑)
- 基本的にエンターテインメントは一人で楽しむんですか?
そうですね。
最近だと庭園美術館で岡上淑子さんのフォトコラージュ展に行きました。友達に会わないタイミングを狙って(笑)
- そういえばクリープハイプが好きだと伺いました。
はい。好きですね。太客(クリープハイプのファンの通称)です。
- 好きになるきっかけは何だったんでしょうか。
編集者から勧められて、信頼している人だったので読みました。
そのときはクリープハイプってぼんやりとしか分からなかったのであまり気が進まなかったけど、読んだら凄い面白くて。
ただ日本のロックはビジュアル系しか聴かないので、作家としてファンになりました。でもその後、ライブに行く機会があって、アレッ?て思って『世界観』を買って。武道館も行きましたが前回観たときより、かっこよかった。そこからはわぁーってCDを買って、ジワジワとハマりました。
- 作家尾崎世界観としてはどう思いますか?
『祐介』はとにかく苦しくて、冷静には読めなかったです。つまり、好きな小説でした。『苦渋シリーズ』もいちいち面白くて。いわゆるミュージャンの日記物ってコアなファンだけが楽しめるものなんだけど、全然そんなことない。全く知らない人が読んだとしても面白いバンドマンだなって思うし。書評とか文庫の解説とかも独特で好きです。
- 尾崎さんから影響を受けて書いたのはありますか?
悔しい!その感情、書かれた!と思うときはあります。
でもクリープハイプ発端で書いたものもありますね。『バンド』です。
尾崎さんがつくった言葉から思考が始まることは結構あるかもしれないです。
- 文章の尾崎世界観と、歌詞の尾崎世界観のイメージってどんな感じですか?
うーん、文章だと近い感じがする。親近感が湧きます。
でもLIVEやCDだとドキッとする。ステージに立つと映える人だなと思います。読んでからLIVEに行くとギャップにやられて、ときめいてしまう。私はバンドをやっていたのでステージに立つ人への強い憧れとコンプレックスみたいなのがあって。そういう意味では悔しいですね。
- エッセイにもバンドの活動休止に寄せたものが書いてありました。
バンドの休止は、誰も何もできなくって。でも書くことなら出来たので。それがわりと救いになりました。
昔、本当に好きだったビジュアル系バンドが解散したのと同じライブハウスで、10年以上後に1度だけ復活LIVEをしたことがあって、生きていればそういうこともあるんだな、と。大の大人が5人とか集まって同じことをやるのはよっぽど大変なことなんだなと思いましたね。
- ご自身でバンドやってるときは大変でした?
大変でした。最初は簡単に思えるんだけど、人のテンションってそれぞれなので、それが合わないともどかしくって。こうやってバンドがダメになっていくんだなと思いました。やる気とかそういうのって、とくに音楽っていうのは全部出てしまうので。
- パートはなんだったんですか?
なんでも出来るんだけど、歌だけはできませんでしたね。だから誰かいないと出来なかった。
- 好きな楽器は?
楽器というよりも音楽が好き。音楽の学校に行っていたので、クラシックもできます。でも歌だけはびっくりするほど下手(笑)
音程はわかってるんだけどコントロールが効かないので一番最悪なパターンですね。カラオケとかも基本的にはいかないです。
学校でもこんなに歌だけがダメな人はなかなか居ないって言われました。だからボーカルを好きになるのは、ある種のコンプレックスからなのかもしれません。
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