世代を超えて愛されるシンガー、中島みゆき。
その力強い歌詞と歌声は、時に少年少女の孤独を癒し、中高年を奮い立たせ、挫けそうな人々を支えてきました。
今回は、そんな中島みゆきの曲を主題歌にしたい本を紹介します。
新生活で壁にぶち当たっている人にこそ届けたい、5つの物語です。
空と君のあいだに
「空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る
君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる」
(作詞:中島みゆき)
どんよりした天気になると、この曲をつい口ずさみたくなってしまいます。
「雨の日は読書が捗る」とよく言いますが、低気圧にやられるとページの進みも滞りがち。
そんな時は、背筋をちょっとだけ伸ばして「悪」について考えてみましょう。
(動画は絢香によるカバー曲です)
空と君のあいだに×辻村深月『ぼくのメジャースプーン』
大切な人を傷付けられてしまった「ぼく」は、きっと「君が笑ってくれるなら、悪になってもいい」と復讐に燃えていたはずです。
悪を裁くために、自分の力をどう使うべきか。秋先生との一週間のレッスンを経て、彼が出した結論とは?
『空と君のあいだに』は、ぜひオープニングテーマとして流したいですね。
辻村深月『ぼくのメジャースプーン』のあらすじ
ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。
(BOOKデータベースより引用)
宙船(そらふね)
「何の試験の時間なんだ 何を裁く秤なんだ
何を狙って付き合うんだ 何が船を動かすんだ」
(作詞:中島みゆき)
魂むき出しの詞に叱咤されるパワーソング。実は魔除けにもなります。
中学生の頃、コンビニで雑誌の立ち読みでもしようと思っていたら、有線でこの曲が流れてきたことがありました。
爽やかなTOKIOバージョンしか聴いたことのなかった私は完全に圧倒され、「だらしないことしてる場合じゃない!」と即時退散。それにしても、コンビニの守り神が出たかと思った・・・。
宙船(そらふね)×塩田武士『騙し絵の牙』
出版業界という海から逃げ去る水夫=編集者たち。多くの港=読者も、灯りを消して黙り込む。
吹き荒れる嵐の中で、誰にもオールを任せぬ男、速水の逆襲が始まった!
これほどに「何を狙って付き合うんだ 何が船を動かすんだ」という問いかけが似合う主人公はいません。
塩田武士『騙し絵の牙』のあらすじ
大手出版社で雑誌編集長を務める速水。誰もが彼の言動に惹かれてしまう魅力的な男だ。ある夜、上司から廃刊を匂わされたことをきっかけに、彼の異常なほどの“執念”が浮かび上がってきて…。斜陽の一途を辿る出版界で牙を剥いた男が、業界全体にメスを入れる!
(BOOKデータベースより引用)
Why&No
『もしかしたら世の中は そういうものかもしれないなんて
”そういうもの”なんて あるもんか
訊けばいいじゃんいいじゃん 「なんでさ」ってね』
(作詞:中島みゆき)
「世の中が正しいとは限らない」、そう年長者に言ってもらえるだけで、どれだけの若者が救われるでしょうか。
あまりに自由にされても困るので(笑)、身近な人同士ではなかなか言えません。だからこそ、大切にしたい歌詞だと思います。
会話のコミュニケーションとは別の角度で、世界の見方を変えられる。これは本と音楽に共通する「いいところ」ですね。
Why&No×朝井リョウ『何者』
就活を偉そうに語れる立場ではありませんが、無知であることは間違いなく不利でしょう。
しかし、「知ったかぶり」の姿勢でいる方が、実はずっと危ないのかもしれません。
「なんでさ(Why)」と「ことわる(No)」を言える勇気を、もうちょっとだけ持っていたいと痛感します。
朝井リョウ『何者』のあらすじ
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。直木賞受賞作。
(BOOKデータベースより引用)
地上の星
「名立たるものを追って 輝くものを追って 人は氷ばかり掴む」
(作詞:中島みゆき)
2000年代のロングヒット。ドキュメンタリー番組のテーマ曲であり、テレビの前で元気づけられた人も多いはず。
個人的には、小学校の授業(と発表会)で歌った思い出があります。当時は「皮肉な歌詞が多すぎる!!」と引いていましたが、今になって聴くとストンと腑に落ちます。
流行も、目先の成功も。掴んだ瞬間に溶けてしまう、氷みたいなものばかりで・・・
地上の星×木村元彦『争うは本意ならねど』
活躍すれば、寄ってたかって持ち上げる。でも、ひとたび不調や不祥事を報じられると、一気に叩き落す。そして、やがては忘れてゆく。
ファンは、スポーツ選手を少なからず”消費”しながら生きています。
たとえ少数派に回ったとしても「地上の星」を記憶し、光らせ続ける気概があるか否か。このノンフィクションは、そう読者に問うてきます。
木村元彦『争うは本意ならねど』のあらすじ
我那覇和樹を襲った、日本サッカー史上最悪の冤罪事件。沖縄出身者として初の日本代表入りを果たした彼のキャリアは、権力者の認識不足と理不尽な姿勢により暗転した。チームやリーグと争いたいわけではない。ただ、正当な医療行為が許されない状況を何とかしなければ。これは一人の選手と彼を支える人々が、日本サッカーの未来を救った苦闘の記録である。覚悟と信念が宿るノンフィクション。
(BOOKデータベースより引用)
時代
「まわるまわるよ時代はまわる 喜び悲しみ繰り返し
今日は別れた恋人たちも 生まれ変わってめぐり逢うよ」
(作詞:中島みゆき)
1975年リリース。今もなお、数々のアーティストにカバーされている名曲です。
高校の離退任式で(個人的な話ばかりで恐縮です)、檀上で一言も発さず、ラジカセから流れるこの曲(なぜかライブバージョン)を別れの挨拶とした先生がいましたね。
先生の真意は謎ですが、大人になった今でも覚えている生徒がいるのだから、作戦成功ではないでしょうか・・・
時代×深沢潮『ひとかどの父へ』
例えば、1964年の東京五輪であれば「戦後復興の象徴」「日本がひとつになったイベント」という”時代”だという見方が一般的でしょう。
しかし、この小説には「(ある事情で)気を遣い合いながらテレビを見ていた」「オリンピックどころではない状況だった」人々の”時代”が映し出されています。
時代とは、物語の共有であり、集積でもある。来年の東京五輪は、果たしてどんな”時代”になるでしょうか。
深沢潮『ひとかどの父へ』のあらすじ
幼少のみぎりに生き別れた父親を理想化し、朋美は誇らしく思っていた。ところが母親が選挙に出た際に「夫は北朝鮮の工作員ではないか」と報道され、朋美は衝撃を受ける。父親はいったい何者なのか―。母子二代、血をめぐる魂の彷徨を描く、感動の物語。
(BOOKデータベースより引用)
まとめ
個人的に、中島みゆきには”言葉の人”という印象を持っています。
以前、筆者は「全然いい」という表現を使うことに抵抗がありました(正しい日本語かどうか諸説あり)。しかし、『泣いてもいいんだよ』という曲で連発されているのを聴いて、安心して使えるようになったのです(笑)。
今回紹介した本も、「言葉の力」を感じられる顔ぶれが揃ったと思います。曲との相乗効果で、言葉の味わいはさらに深みを増すでしょう。
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