目次
ファンタジー3選
『アルテミス・ファウル 妖精の身代金』オーエン・コルファー【フェアリーテイルを期待するな】
あらすじ
伝説の犯罪一家で育った天才少年・アルテミスは、その天才的な頭脳でコンピューターを駆使し「妖精の書」の解読に成功。
そのお宝を奪おうとするが、目の前に現れた妖精はどんでもない姿をしており!?
ディズニープラスで2020年に配信された映画の原作。
『アルテミス・ファウル 妖精の身代金』の魅力
妖精は確かに登場する。
しかし、その妖精はおとぎ話のかわいらしい妖精なんかじゃなく、ハイテクな武器で武装した世にも恐ろしい妖精なのだ。
妖精が優しいだとか、かわいいだとか、そんな幻想を見事に打ち砕いてくれる。
生やさしいフェアリーテイルに真っ向から体当たりをくらわしてくるのが最大の魅力だ。
『アルテミス・ファウル 妖精の身代金』の基本情報 | |
出版社 | KADOKAWA |
出版日 | 2007/07/22 |
ジャンル | ファンタジー |
ページ数 | 368ページ |
シリーズ | アルテミス・ファウルシリーズ既刊8巻+外伝 |
発行形態 | 文庫、電子書籍、オーディオブック |
『魔法使いハウルと火の悪魔』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ【こっちが本物のハウルです】
あらすじ
魔法が実在するインガリー国で、3人の姉妹に長女に生まれたソフィー。
ある日ソフィーは荒れ地の魔女に呪いをかけられて、90歳の老婆の姿に変えられてしまう!
家族にショックに与えてしまわないように家出したソフィーは、魔法使いハウルの城のもとに掃除婦として転がり込むが……!?
映画「ハウルの動く城」の原作。
「魔法使いハウルと火の悪魔」の魅力
映画のハウルがあまりにも見目麗しいものだから、この原作のハウルを読んでしまうとかなりショックを受けるだろう。
しかし、こっちが本物のハウル。グズでわがままでくず人間なハウルが本物。
それでも、ソフィーとケンカしながらも少しずつお互いを信頼して、愛を育んでいくあたりは映画と一緒で心温まる。
『魔法使いハウルと火の悪魔』の基本情報 | |
出版社 | 徳間書店 |
出版日 | 2013/03/01 |
ジャンル | ファンタジー |
ページ数 | 413ページ |
シリーズ | ハウルの動く城シリーズ既刊3巻 |
発行形態 | 単行本、文庫、電子書籍 |
『九年目の魔法』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ【私の記憶は本物なのか?】
あらすじ
主人公のポーリィはなにかがおかしいと気づく。
覚えているものと、何もかもちがう。
記憶が二重になっている?
やがてリンさんという男の人と出会ったポーリィの周りでおかしなことが起き始めて……?
少女の成長ファンタジー!
『九年目の魔法』の魅力
「魔法使いハウルと火の悪魔」と同じ作者のファンタジー。
ファンタジーは、現実逃避をするのに持ってこいのジャンルだと思うのだ。
理不尽なことがたくさん起きる現実世界だけれど、ファンタジー小説の中の主人公も理不尽な目に遭って、成長していく。
悩める中高生におすすめしたい傑作だ。
『九年目の魔法』の基本情報 | |
出版社 | 東京創元社 |
出版日 | 1994/09/30 |
ジャンル | ファンタジー |
ページ数 | 420ページ |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
アンソロジー3選
『5分後に慄き極まるラスト』エブリスタ編【ただのホラーなんて生ぬるい】
あらすじ
結婚を前提に付き合っている彼氏の正体と謎のフォルダの中身は?
突如届いた「助けてください」というメールは果たしていたずらなのか?
5分。たった5分でガツンと衝撃を受けよう。
あなたを震えあがらせるのは、何もプロの作家だけではないのだ。
『5分後に慄き極まるラスト』の魅力
厳密にはアンソロジーではなく、エブリスタという小説投稿サイトに投稿されたものから選ばれた13編のショートショートホラーである。
内容もさることながら、この作品たちをプロではなくあなたと同じように会社へ行き、家事をし、特別文章を書くことを生業としていない人たちが考えて書いたことに震え上がる。
こんな怖い話を?
例えばただの主婦が?子供をあやしてる母親が?という具合に。
バラエティー豊かな5分後の戦慄をあなたへ。
『5分後に慄き極まるラスト』の基本情報 | |
出版社 | 河出書房新社 |
出版日 | 2021/04/20 |
ジャンル | ホラー |
ページ数 | 280ページ |
シリーズ | 5分シリーズ既刊24巻 |
発行形態 | 文庫 |
『日本SFの臨界点[怪奇篇]ちまみれ家族』石黒達昌など【SFをこんなにも愛してる】
あらすじ
「2010年代、世界で最もSFを愛した作家」と言われる伴名練が編んだ珠玉のSFアンソロジー。
中島らも、中田永一、山本弘から隠れた名作まで。
幻想、怪奇をテーマに11編収録。
『日本SFの臨界点[怪奇篇]ちまみれ家族』の魅力
壮大なSFばかりに目がいってしまうし、実際海外のSFはなかなか規模が大きいものが多い気がする。
しかし、ありふれた日常にもSFが詰まっていることを知ってほしい。
そして、日本のSFも海外に負けていないことを知れる1冊でもある。
『日本SFの臨界点[怪奇篇]』の基本情報 | |
出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2020/07/16 |
ジャンル | SF |
ページ数 | 431ページ |
シリーズ | 日本SFの臨界点シリーズ既刊2巻 |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
『密室と奇蹟 J・D・カー生誕百周年記念アンソロジー』芦辺拓など【豪華な布陣で挑む珠玉のアンソロジー】
あらすじ
本格ミステリの黄金時代を築いたジョン・ディクスン・カー。
「不可能犯罪の巨匠」「密室の巨匠」と呼ばれた彼への敬意と愛を込めて、国内のミステリ作家たち7名が書き下ろしたパスティーシュ。
子供時代のアンリ・バンコランを始め、カーとカーが創り出したキャラクターたちの邂逅、雰囲気たっぷりの館ものまで収録されている。
『密室と奇蹟』の魅力
アガサ・クリスティーと並んで本格ミステリというジャンルのいち時代を築いたカーへの愛があふれる1冊。
カー自身は「密室」というジャンルを得意としていたため、その「密室もの」をアレンジした作品も見られ、日本人ならだれでも知っているであろう「忠臣蔵」にそのアイデアを落とし込んだ作品はかなり斬新である。
カーに雰囲気も踏襲しつつも、作家個人の個性が際立つ作品群にファンは垂涎ものである。
『密室と奇蹟』の基本情報 | |
出版社 | 東京創元社 |
出版日 | 2020/08/20 |
ジャンル | 本格ミステリ |
ページ数 | 480ページ |
発行形態 | 文庫 |
まとめにかえて【私が文庫本にとりつかれた理由】
私の読書の入り口は実は文庫本ではなかった……と書いてしまうと怒られてしまうかもしれない。
最初に読んだのはゴリゴリの単行本「ハリー・ポッターシリーズ」だった。
その後本格的に文庫本を読み始めたのは、ライトノベルの電撃文庫や角川スニーカー文庫(「涼宮ハルヒの憂鬱」が全盛期だった)がきっかけである。
文庫本の手軽さを知ってからは、有栖川有栖の「国名シリーズ」に手を出し、ここから私は本格的にミステリを文庫で読み始めた。
そして様々な出版社の文庫本を読むうちに、だんだんと講談社文庫の紙のぬらぬらとした感じが好きになり、角川文庫のなんとも言えない軽さが好きになり、幻冬舎文庫のあの紙の束感が好きになり、新潮文庫のスピンの便利さを好きになり、創元推理文庫のあの文字の細かさが好きになり、ハヤカワ文庫の独自の文庫の大きさが好きになった。
個性が際立つ出版社ごとの文庫本が、私はとにかく好きなのである。
文庫本は本屋さんに行けば必ず置いてある人気の手堅い本の形態だ。
きっとあなたの好みの本が、あなたの手に取ってもらえるのを待っている。
レーベルからでも、タイトルからでも、著者名からでも、何がきっかけでも大丈夫なので、少しでも興味を持ったら手に取ってみてほしい。
きっと、世界が広がるはずだ。
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