キャンパスライフ…。垂涎の甘い響きに心うばわれた男たちは、恥じらいもなく胸を高鳴らせていることでしょう。
しかしキャンパスに潜む魔物にとって、新入生を堕落させるなど容易いこと。
間もなく「腐れ大学生」となるあなたを、二度と戻れない森見ワールドへご案内いたします。
目次
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森見登美彦の小説を聴こう!
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・夜は短し歩けよ乙女
・有頂天家族
・ペンギン・ハイウェイ
・四畳半タイムマシンブルース
京大卒ヘンタイ作家・森見登美彦の略歴
1979年生奈良県生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院修士課程修了。在学中の2003年には『太陽の塔』でデビュー。同作は日本ファンタジーノベル大賞に選ばれた。
古風な文体でありながらユーモアのある屁理屈にあふれ、リズミカルな言い回しから生まれる独特の世界観は「森見ワールド」として親しまれている。その舞台は京都市左京区を中心とした狭い範囲に限られており、学業を怠けること甚だしい「腐れ大学生」による阿呆で男臭いストーリーが多い。
2006年発売の『夜は短し歩けよ乙女』は灰汁のない洒落た作品に仕上げたことから、大学生を中心とした多くのファンに支持されている。2011年には全ての仕事を休んで故郷に帰っているが、2018年の『熱帯』の発表をもって休載の後始末を終えたとしている。
なぜ、森見作品は大学生人気ナンバーワンなのか?
森見登美彦氏の小説は、腐れ大学生からの圧倒的な支持があります。
春になるとさえない男たちは大学デビューをもくろみますが、そのほとんどは桜の花よりも先にあえなく散っていくもの。
こうしてモテない、さえない、男くさいの三拍子をけたたましく打ち鳴らし、せっせと青春をムダにする「腐れ大学生」が量産されていくのであります。
そんなろくでもない連中にスポットライトを当てる奇人こそが、我らのカリスマ森見登美彦氏!彼は腐った野郎どもを主人公にするという性癖をもってして、阿呆な作品を生み出しては日陰の住人を鼓舞してくれています。
いやいや、そんな小説もさえないキャンパスライフも御免こうむるという御仁は、どうぞスタバで『ノルウェイの森』へ付箋貼りをキメればよろしい。
そしてモリミストたる蛮勇を持った選ばれしあなたは、さっそくヘンタイ作家の妄言にふける日々を謳歌して頂ければと願います。数多の腐れ大学生がいるかぎり、森見作品は人気ナンバーワンであり続けるでしょう。
大学生をとりこにする森見ワールドとは?
森見ワールドとはお洒落でお馬鹿なオモチロイ世界観であります。
大学三回生の春までの二年間、
実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。
『四畳半神話大系』諸君、異論があるか。
あればことごとく却下だ。
『夜は短し歩けよ乙女』
昭和が薫る古風な文体でありながら、つむがれる言葉は実益のない詭弁にまみれており、それでいて洒落ているのですから摩訶不思議ですね。
森見作品の舞台となるのは大学生の街、麗しの京都。雅なだけではない深淵なる世界のざわめきと、腐れ大学生の生臭きうめき声の不協和音は、耳にした者を堕落した生活へといざないます。
そんな魔都に惑わされた学生は安息の地を求めて森見ワールドへ逃げ込みますが、ここに踏み入った者のキャンパスライフは二度と日の目を見ることはありません。
無用の貞操を守りぬかんとする阿呆だけがこの先へ進むとよいでしょう。
『太陽の塔』
#日本ファンタジーノベル大賞受賞
森見ワール度:
モテない度 :
男汁度 :
おすすめ度 :
森見登美彦氏のデビュー作。
冒頭からの生臭いほどにリアルな腐れ大学生の日常は、いったいどこがファンタジーなのかとツッコミたくなりますが、どっこい気づけば不思議な世界に引きこまれています。
イケてないサークル「男汁」のメンバーである主人公は、非モテをこじらせた友人とクリスマスファシズムに抗い、恋人たちの邪魔をしては無用に傷口を広げるのですから救いようがありません。
鴨川に並ぶカップルの列に割って入る、男女男女男女男男男男男女男女男女の「哀しみの不規則配列」は、覚えがあるだけに笑えない京男子も多いことでしょう。
そんなどたばた劇から一転して、ラストでは本心に気づいた「私」のホロリとさせる述懐もあり、一筋縄ではいかない森見ワールドの原点を堪能できます。
恋人のいない鬱憤を晴らすための無益でみじめな時間こそが、真の友情を育んでくれるのかもしれません。
『夜は短し歩けよ乙女』
#第20回山本周五郎賞受賞 #2007年本屋大賞2位 #アニメ化
森見ワール度 :
ヒロインかわいい度:
お酒飲みたくなる度:
おすすめ度 :
女性に飢えた森見作品は数多くあれど、かろうじて恋愛小説のジャンルにねじ込めるのはこの一冊ぐらいでしょう。
風情のあるタイトルからも知れるように、森見節におしゃれなテイストが交わり、文学的妄言小説として磨きあがっています。相変わらずストーカー気質の主人公が登場しますが、新しい手法として女の子の目線からも進むストーリーはかつてない華やかさ。
なんといってもこの黒髪の乙女が、あらゆる作品のヒロイン史上最高にかわいい!なかでも巨大緋鯉のぬいぐるみを背負い、達磨の首飾りをかけて歩く場面は、想像しただけで頬がゆるみます。
女性読者からは「童貞の妄想だ」なんて厳しい指摘がありそうですが、いいではないですか男はみんなバカなんだもの。森見氏もおそらくは理想の女性像に共感してほしくて、その一心だけでこの作品を書き上げたのでしょう。
最後は本人たちも自覚するご都合主義で締められますが、たまにはモテない男の夢が叶ってもバチは当たりませんよね。
「俺も俺も」と勇み立っている奥手男子諸君!実際に女の子をつけ回すのは犯罪なのでいい子はマネしない。
『四畳半神話大系』
森見ワール度 :
コミュ障度 :
猫ラーメン食べたい度:
おすすめ度 :
第1話を読み終え、第2話に入ったところで「おや?」となります。同じような展開が始まったけど少し違う…。
四畳半部屋がつなぐ4つのパラレルワールドでは、それぞれの腐れ大学生が濁りきった泥色のキャンパスライフを送っています。どの「私」も今のサークルを選んだことを後悔しており、和気あいあいと楽しむ学生たちには馴染めていないようで、せっせと人間関係にヒビを入れては追い出される始末。
空を飛べそうなほど地に足がつかない生活をしているくせに、他人が恋愛にふわふわと浮かれるのは許せないとは、「お前は俺か!!」と妙なシンパシーがあったのは私だけでしょうか?
どのサークルに入ったところで根っこが同じ人間であれば、その場その場の選択などあまり意味を持たないのか、結局は似たような結末を迎えています。
どんな現実からでも幸せを選ぼうとする賢者にならず、「あの時ああすれば今頃は…」と可能性に生きる愚者の姿を、あたかも他人事のように笑ってやりましょう。
『四畳半王国見聞録』
森見ワール度 :
ヒキニート度 :
モザイク先輩と仲良くなりたい度:
おすすめ度 :
正直なところ、森見ワールド初心者にはおすすめできません。
これまでの腐れ大学生には何だかんだと熱い友情があったり、恋人がいたりとキャンパスライフを楽しめていましたが、今回の主人公は完全にひきこもりです。わずか四畳半しかない自室をたくましい妄想力によって無限に広げ、その王国の支配者としてさらなる深みへ沈みゆかんとしているのですから。
またはブリーフ姿でたたずむ男、桃色映像のモザイクを外す先輩など、登場人物はいずれも曲者だらけ…。かつてない阿呆どもが跋扈するこの作品は、おそらく森見登美彦氏からの挑戦状なのでしょう。
利口ぶるな、阿呆になれ!ストーリーを理解しようだとか、作者のメッセージを読み解こうだとか、そのような下心があっては読めるものではありません。
無益な物語に耐えぬく、森見フリークとしての実力が試される一冊です。
『新釈 走れメロス』
森見ワール度 :
エンタメ度 :
名作読んだつもりになる度:
おすすめ度 :
『走れメロス』を含む5つの名作を森見流にアレンジした短編集で、おなじみの腐れ大学生たちの登場によって親しみやすく書かれています。
「読んでいて何かを書きたくなった作品という基準で選んだ」と語るように、森見氏の心情を描写しているかのようなストーリーが続きます。
そのなかでも『山月記』は己の作風を突き詰めることへの不安、『桜の森の満開の下』ではプロとして売れるものだけを書く虚しさを吐露しているのではないでしょうか。
『夜は短し歩けよ乙女』のヒットにて売れっ子となった後、せっかくの新規ファンを置き去りにするような作品を書くあたりに、愛すべきひねくれ者の人柄があらわれていますね。
『走れメロス』ではお待ちかねの阿呆が桃色ブリーフ姿で走りまわっているので、文学に疲れたあなたの箸休めとして頭が空っぽになるまで楽しませてくれます。
『恋文の技術』
森見ワール度 :
手紙の書き方を学べる度:
おっぱいバンザイ度 :
おすすめ度 :
物語の舞台はキャンパスから遠く離れた研究室になるので、今回はおまけの紹介です。
この作品は主人公が文通の天才となるべく、誰かれ構わずに送りつけた手紙によってストーリーが進んでいきます。読者が目にするのは彼の手紙のみであるため、相手からの返信は想像で補うことになるのですが、不思議とやり取りを把握できるのが森見マジック!
見どころのひとつは手紙の署名と宛名。「男のグローバルスタンダード 守田一郎」、「唾棄すべきドン・ファン 森見登美彦様」など趣向が凝らしてあるので、次はどう来るかと楽しみにしながら読み進められます。「守田・デリカシスト・一郎」のようなミドルネーム調の署名はついついマネしたくなりますね。
肝心の想い人への恋文をかけないヘタレ院生の恋路をお楽しみください。合言葉はおっぱい万歳!!
おわりに 腐れ大学生3か条
気になる作品はあったでしょうか?
森見流キャンパスライフに興味を持ったあなたには、どうやら腐れ大学生になる素質があるようです。ここにまとめた三か条をよく読んで、来たるべき日に備えてください。
【腐れ大学生の三か条】
其の一、阿呆であることこそ学生の本分と心得よ
就活を見据えた常識人となってはいけません。
つまらない大人になるのを先延ばし、引き返せなくなるまで己の道を突き進んでください。
神仏父母に恥じないことを恥じる阿呆となりましょう。
其の二、非モテとなっても男の本能を忘れるべからず
モテない自分を肯定するための詭弁は大いに結構ですが、男たるもの桃色映像のお世話になり続けてはいけません。
恥をかくことを恐れずに、男としての本懐を遂げる勇気を持ちましょう。
例え当たって砕けたとしても、傷をなめ合う仲間との友情が育まれるものです。
其の三、四畳半王国を建国すべし
大学生におしゃれマンションなど不要!
わずか四畳半であっても妄想の領地を拡大し、男汁で塗り固めた城を築きましょう。
オートロックどころか自室すら施錠せず、盟友の便利な宿泊所&桃色映画館として門扉を開くのです。
これまでに紹介した森見作品と共にあれば、バラ色のキャンパスライフを送れなくても悲観することはありません。どうしてもイケてない自分を恥じてしまう時は、次の言葉を思い出しましょう。
腰の据わっていない秀才よりも、腰の据わっている阿呆の方が、結局は人生を有意義に過ごすものだよ
『四畳半神話体系』
一番いけないのは腰の据わっていない阿呆になること。大学には本当に色んな人がいるので、高校までは受け入れてもらえなかったキャラであっても、必ず好意を抱いてくれるものです。
まちがってもリア充を演じようなどとは思わずに、どしっと構えた堂々たる阿呆でいてください。あなたに阿呆神のご加護があらんことを。
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