圧倒的にオリジナルな文体と世界観。つい読み進めたくなるリズミカルな文体。デビューから40周年を迎え、世界から高い評価を受け続ける作家・村上春樹。
今回は読書好きのみなさんに村上春樹おすすめの作品を1冊ずつ選んでいただきました。その結果をランキング形式で紹介します。
目次
オーディオブックで
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・海辺のカフカ
・東京奇譚集
・神の子どもたちはみな踊る
・職業としての小説家
・ねじまき鳥クロニクル
村上春樹のプロフィール
1949年、京都府生まれ。早稲田大学文学部卒。1979年デビュー作『風の歌を聴け』で第22回群像新人文学賞を受賞。1982年『羊をめぐる冒険』で第4回野間文芸新人賞、1985年『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で第21回谷崎潤一郎賞、1995年『ねじまき鳥クロニクル』で第47回読売文学賞、2009年『1Q84』で第63回毎日出版文化賞。また、海外の文学賞受賞歴も豊富。2006年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞、2016年ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞など。
1位『ノルウェイの森』
ひかる
まさみ
ビートルズの「ノルウェイの森」を聴いて青春時代を回想するワタナベ。彼は高校時代に親友を自殺で失い、その恋人の直子と大学時代に再会したのをきっかけに交際を始めます。しかし直子は心を病んで施設に入り……。
美しい異国の情景と共に紡がれる、退廃的な独白に引き込まれました。天才・村上春樹が繰り出す斬新な比喩や洒落た言い回しには、読んでいるだけで刺激を受けます。直子が入院する施設の患者・レイコのミステリアスな存在感や、ある計画にも魅せられました。
精神の均衡を崩した人々が多く登場するものの、世間と隔絶された環境で思索に耽る彼女たちの方が、真理を突いた洞察ができるのではないかと考えさせられます。
ページ数 | 304ページ |
2位『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
大勢の女性と交際を楽しむ35歳バツイチの主人公。やや協調性に欠ける性格なものの、組織の計算士として成功を収め、悠々自適な日々を送っていたのですが……。
「私」と「僕」、同一主人公の現実と内面で同時に進む実験的ストーリーが魅力。主人公は一見非の打ち所ない男性ですが、核は固い殻に覆われており、他人を信用することができません。そんな「やれやれ」が口癖の主人公の価値観が、バーチャルな世界の冒険を経て分解され、再構築されていく過程に引き込まれました。
SFやファンタジーに哲学が融合した世界観は、「読む麻薬」といっても過言ではない壮大さです。奔放な想像力と豊穣な筆力で紡がれる世界の終わりが、読者の心を鷲掴みにします。
ページ数 | 480ページ |
3位『風の歌を聴け』
第22回群像新人文学賞受賞
自分と社会の間にあるもやもやとした歪みや、漠然と頭の中で考えている事がこの本の中に言葉として存在しているのを確信しました。
友達とのたわいない会話ですら小説の中にあり、しかもそれが面白いのです。集まる度に友とこの本について語り合いました。
一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、“僕”の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。
ページ数 | 168ページ |
4位『海辺のカフカ』
15歳の誕生日を迎えた少年・カフカは家を遠く離れて知らない街に辿り着き、小さな図書館の片隅で暮らすようになりました。彼の手には小さい頃に姉と撮った写真があります。一方記憶を失った老人・ナカタもまた、ある目的を胸に移動を続け……。
カフカとナカタ、少年と老人の視点が交互に挟まれる長編。登場人物の生い立ちが重く、不幸な境遇に胸が痛みます。それなのに妙な軽やかさに包まれているのは、2人が旅を続けているからでしょうか。話が進むに従い、カフカとタナカの意外な接点が明らかになり、周囲の人々の運命が複雑に交錯し、物語が深みを増していきます。
村上春樹作品の中では比較的読みやすいので、初心者におすすめしたいです。
ページ数 | 496ページ |
5位『1Q84』
読んでいて私も気付くと、現実世界と本の中の世界のどちらにいるのか、分からなくなる中毒性があります。。
その中で主人公2人の恋物語が繰り広げられる……。読み応え抜群です。
1Q84年ー私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう。青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。…ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれて、主人公・青豆と天吾の不思議な物語がはじまる。
ページ数 | 357ページ |
6位『羊をめぐる冒険』
妻が家を出たのち、耳専門のモデルの女性と交際している主人公。ある日彼が経営している広告代理店に右翼の大物が現れ、「星型の斑紋がある羊をさがしてほしい」と謎めいた依頼を持ちかけます。
村上春樹の出世作となった長編。悪のメタファーである一頭の羊を巡る、奇想天外な冒険の顛末を描いています。北海道の雄大な自然の描写もさることながら、注目すべきは登場人物たちのユニークな会話。鯨の生殖器にまつわるうんちくは目から鱗です。キーパーソンとなる鼠の存在感も強烈で、一度読んだら忘れられません。
主人公のさがし物は見つかるのか、捜し出した時に彼らはどうなってしまうのか、最後までドキドキしながらページをめくりました。
ページ数 | 268ページ |
7位『国境の南、太陽の西』
少しショッキングな恋愛物語でした。
『ねじまき鳥クロニクル』や『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』を思わせるような主人公の思いや、人間を色彩で分けている感じがします。主人公の男は、悪人よりで国境の南と太陽の西は自分の善悪のふり幅の例えだったのかな。
すっきりしない恋愛物語ですが、こういう春樹作品も好きです。純文学の深みを感じられるかも。
全体を通して暗く重い内容でした。主人公と2人の女性との関係性がドキドキハラハラするものでしたが、主人公の葛藤するさまが繊細に描写されていて、共感する部分もありました。
自分の気持ちを正直に打ち明けることができれば、主人公はもっと早く楽になれただろうにと思いました。歳を重ねてから再読したい作品です。
今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろうーたぶん。「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現われてー。
ページ数 | 302ページ |
8位『スプートニクの恋人』
22歳の春、すみれは生まれて初めて恋に落ちました。相手は17歳年上の既婚者、しかも同性ときて、彼女たちの前に様々な障害が立ちはだかります。そんなすみれに想いを寄せる主人公の胸の内は……。
タイトルのスプートニクは「旅の連れ」の意味を持った人工衛星の名前。三者三様、孤独な軌道を描き続けるスプートニクが三角関係のメタファーになっているのが興味深いです。すみれはなぜ失踪してしまったのか、どこへ行ってしまったのか?愛する人を失い異国を彷徨する主人公の独白が、切実な余韻を帯びていました。
パートナーの全てを理解できるというのは幻想かもしれないけど、彼らが再び巡り会える日が訪れることを願ってやみません。
ページ数 | 328ページ |
9位『アフターダーク』
不思議な感覚の小説です。恋愛でもなく、悲哀でもなく、ただ一人の少女の一晩におきた出来事を描写しているんです。
さながら読者は演劇を観覧しているような感覚であっという間にエンディングなので、「?」と思うこともあります。
しかし、これが巧妙な春樹ワールド。一人の少女を取り巻く人間関係と夜、俯瞰している読者。これら全て登場人物だとしたら自分も作品の一部になったと嬉しくなる1冊です。
深夜のファミレスでタバコを吸いながら、読書をしている少女。
なんだかやさぐれた雰囲気。何かに巻き込まれそうな予感がすると思っていたら、さっそく声をかけてくる人が。なにやら前に一度会ってるようで、姉の知り合いだそうだけど、だからってなんの用だろうか。嫌な予感を最初から感じつつ、それでも先が気になってしまう。
時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえるー。
ページ数 | 304ページ |
10位『TVピープル』
夢に出てきそうなぐらい気味悪くて恐ろしかったですが、今ではいい思い出。
村上作品の中では、やや毛色が異なる作品になります。
ファンの人にはぜひ読んで欲しい作品の1つです。逆に、初めて村上春樹に触れるという人は、読まない方がよいです。作品を通して伝えたいことの振れ幅が大きすぎるだけでなく、ただの変な話としてのインパクトが強すぎるからです。
『TVピープル』を読んで、強いて言うと知らない間に集団圧力に囲まれている、気が付かない間にある方向に引っ張られているということを感じました。
人によって感じ方が違うのが村上春樹の作品の特徴ではありますが、この作品は特にそう思いました。ファンの人はぜひ読んでみてください。
村上春樹の話は、スコんとわかる作品は少ないです。
まあ中身的には、どこかに面白いやり取りが出てくるのでそれが楽しみで読んでいるというところもあります。
『TVピープル』は、スコンとわかる方はなかなかですし、クスッと笑えるところがほとんどなくて、ひたすら暗いです。
知らない人が留守している間にTVを持ち込んで、それがだんだん生活に入り込んで、ある宝庫性を示す。又そのことに違和感を何ら感じないというのがメインの流れです。これは、村上春樹流の大衆心理の1つのスケッチでしょう。いつの間にか各人の思考が奪われていくのが大衆の習性だとでも言いたいのかと思いました。
不意に部屋に侵入してきたTVピープル。詩を読むようにひとりごとを言う若者。男にとても犯されやすいという特性をもつ美しい女性建築家。17日間一睡もできず、さらに目が冴えている女。-それぞれが謎をかけてくるような、怖くて、奇妙な世界をつくりだす。
ページ数 | 210ページ |
11位『回転木馬のデッドヒート』
村上春樹さんの著書を初めて読む人におすすめしたい短編集。
読みやすく、自分の近くで発生した出来事のようにリアリティを持って読み進めることができます。
特に「タクシーに乗った男」では、主人公は思い入れのある絵を燃やしてしまうのですが、その理由を読みながら自分で考えていく辺りに、この作品の魅力が詰まっています。
現代の奇妙な空間ー都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人…、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。
ページ数 | 224ページ |
12位『カンガルー日和』
ゆっくりと時間が流れているような気分になれる作品で、非常に心が落ち着く印象を受けました。
秋の夜長にしっとりとしながら読むのにもってこいの作品だと感じましたし、内容も日常的な部分が多かったので、様々に共感ができ受け入れやすかったです。
読んでいるだけでここまで穏やかな気持ちになれる作品はあまりないと思いました。
時間が作り出し、いつか時間が流し去っていく淡い哀しみと虚しさ。都会の片隅のささやかなメルヘンを、知的センチメンタリズムと繊細なまなざしで拾い上げるハルキ・ワールド。ここに収められた18のショート・ストーリーは、佐々木マキの素敵な絵と溶けあい、奇妙なやさしさで読む人を包みこむ。
ページ数 | 252ページ |
13位『東京奇譚集』
どれもたまらなく素晴らしい短編ですが、「日々移動する腎臓のかたちをした石」はふとした時に自分の中で存在して、ぞわぞわと蠢いているような感覚があります。
肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却…。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。
ページ数 | 256ページ |
14位『ねじまき鳥クロニクル』
専業主夫の「僕」は、雑誌編集者としてバリバリ働く妻のクミコと平穏な生活を送っていました。ところが飼い猫の蒸発をきっかけに次第にバランスが崩れ始め、ある日突然クミコが失踪。調査を始めた僕は、妻の家出に彼女の兄が関与している事実を突き止め……。
「僕」とクミコの兄・綿谷ノボルの戦いを中心に、特殊な力を持った人々を描いた長編。クミコはどこへ消えてしまったのか、ノボルの目的は何なのか?様々な登場人物の思惑が錯綜し、時系列が前後する、謎めいたストーリーに翻弄されました。作中に引用される、ノモンハン事件の残虐さはショッキング。
従来の春樹作品とは一線を画すグロテスクな描写が多く、刺激的な仕上がりになっています。
1番好きな春樹作品です。電話の呼び出し音、猫の鳴き声、女性が飲むコーラの水滴までも美しく描写されているんです。何度読んでも飽きない私は単行本と文庫本まで購入しちゃいました笑。不思議な春樹ワールド全開の物語。妻の失踪、猫、ちょっと物静かな男。時間軸が歪む感じが本の上でも感じられる素敵な1冊です。
長編を一気に読ませてしまう筆力が凄い。舞台の筋が広がり過ぎて、主人公の行動を理解するまでに時間がかかりましたが、所々のエピソードが印象的で飽きはこないです。綿谷と主人公で次元の高い悪口の言い合いのシーンがあり、あんな悪口言えたらスッキリするのだろうなあと感心しました。
村上春樹が小説の中でやりたいことである「読み手を現実空間から第3の別空間へ移動させる」が体験できる不思議な小説です。そんなことできるわけないと多くの人が考えると思います。たかが小説で第3の別空間への移動ができるなんて。でもそこは村上春樹です。とにかく読んでもらいたいです。小説にも出てくる深い井戸を通して、まさに読み手の意識を別空間に運んでくれる超不思議な体験ができます。超おすすめです!
ページ数 | 312ページ |
15位『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
主人公の多崎は親友4人に絶交された、学生時代のトラウマを乗り越えられずにいます。36歳になった現在、鉄道の駅を造る仕事に就いた彼は、再び親友たちに会いに行くのですが……。
色が名前に入った元親友たちと多崎の複雑な関係が、思いがけない結末に着地する小説。お互い大人になってから再会したことで先入観が氷解し、過去の見え方が変わってくるのが新鮮です。人間関係のこじれが原因の挫折を経験した読者は、多崎の内省的モノローグが耳に痛いはず。殺人事件を巡るミステリー要素も含まれており、犯人が誰か推理する楽しみもあります。
若き日の過ちを受け入れた多崎が、元親友たちと和解するシーンでは、静かな感動がこみ上げてきました。
多崎つくる以外の人間には「色彩」があって不思議な冒頭でした。村上春樹作品で「色」縛りは珍しいので。仲が良かった友人たちと久しぶりに再会するも、どこか違和感だらけ。多崎つくる君が巡礼の旅で見つけた物に私は泣いてしまいました。春樹作品で泣いたのは初めてかもしれない。大人が清らかな気持ちになれる1冊です。
自分が抱えているトラウマに対して、優しく語りかけてもらえているような気持ちになる小説。この作品が自分を見つめ直すきっかけになりましたし、精神的にしんどい時には特に読み返したくなります。
ページ数 | 421ページ |
16位『アンダーグラウンド』
実際に起きた事件を題材にしたノンフィクション小説ということで、読んでいくとゾワゾワくるものがありました。
事件に遭遇した方たちからインタビューしただけあり、当時の様子が色濃く描かれていたのが凄かったです。
おすすめポイントはテレビでも表立って報道しにくい内容が記載されている点。そういった記述は序文にも記載されていますし、著者の執筆意欲を増すことになったんだと思います。
地下鉄サリン事件に興味のある人にとってはかなり興味深い内容ですし、気になる人は要チェックですね。
暗いテーマながらも、村上春樹さんならではの切り口で様々なインタビューを行うことにより、話し手の心の奥底まできちんとオープンにさせているところが本当に凄いと思いました。
重い気持ちになってしまう可能性もはらんでいますが、世の中の様々な側面を見たい方にとっては必要な1冊です。
過去の歴史を風化させてはならないという思いも込めて、ぜひ読んでいただきたいと思います。
日本を震撼させた地下鉄サリン事件の被害者に話を聞きまとめた一冊。
まとめて括られてしまいがちな被害者の数を、1つ1つ、1人1人の話を聞くことで感じること。読むのがつらいけれど知っておきたいことです。
逆に、オウム信者に聞き取りをした1冊も販売されました。どちらにも、それぞれの人生があることが理解できる本です。
新聞やニュースでは知り得なかった、関係者がどんな人物でどのようなことを考えどのように地下鉄サリン事件を心のなかで処理して今にいたるのか、この本を読んでこそ知り得る一人一人の人間性に迫った情報に満ちています。
1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。同年1月の阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、62人の関係者にインタビューを重ね、村上春樹が真相に迫るノンフィクション書き下ろし。
ページ数 | 780ページ |
17位『女のいない男たち』
いかにも村上春樹らしい情痴的な恋愛小説集。
所々に恋をしたことのある人間ならば胸にグッとくる言葉や情景があったりするので、自分の過去の一瞬がフラッシュバックするような感覚を味わうことができます。
切なくも懐かしいような思い。少しほろ苦い読後感が残ると思いますが、たとえば「ひとりの女性を失うことは自分の過去を永遠に失うということである」というセリフは、さすが村上春樹だなあと思わされ、読んでよかったと納得することでしょう。
妻が生前に浮気していた男と交流する主人公の心境がよくわからない。生きてるうちならともかく、死後、しかも結構時間が経ってから。
ふと思い立ったのか、というのもあるかもしれないが、自分だったらそんな人の顔すら知りたくもない。
ドロドロした暗い気持ちになる。だけど最後はどこか爽やかな印象でした。
「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」他全6篇。最高度に結晶化しためくるめく短篇集。
ページ数 | 300ページ |
18位『騎士団長殺し』
妻と別れ山荘に独りで暮らす36歳の画家。アトリエの屋根裏の整理中に「騎士団長殺し」と題された日本画を発見したのがきっかけで、身辺に異変が相次ぎ……。
絵画と異世界のリンクがテーマの作品で、不可思議な雰囲気に魅了されます。「騎士団長殺し」は本作のタイトルであると同時に、主人公が屋根裏で見つけた日本画のタイトルでもあり、何重にも張り巡らされたメタファーに考察がはかどりました。虚構が現実に浸蝕してくる違和感の表現も上手く、不意打ちのように響き渡る、鈴の音の演出にぞくりとします。
村上春樹の作品には珍しく、家族の再生が描かれているのもポイントで、最終章において主人公と妻が下した決断は感無量でした。
不思議な性行為の末に生まれた娘を見守る男。鈴の鳴る穴。屋根裏の絵。読み進めるほどにドキドキが止まらず、探検している気分でした。涼しさを感じるお話なので、暑い日やリラックスしたい時におすすめの1冊です。
ページ数 | 333ページ |
19位『村上ラヂオ』
日常の些細なことも村上さんらしい独特な視点で切り取られており、小説よりもかなり軽い気持ちで読めるエッセイです。
クスっと笑えるところあり、なんとなく気持ちがほぐれていくほっこり感や新しい発見あり、単なるエッセイ集というだけでなく所々村上節が炸裂しているのが個性的で良いです。
柿ピーのネタやコロッケの話など、日常の些細なことも村上さん視点で見るとこんな発見があるのかというのを追体験できて、誰でも読みやすく興味を惹きつけられます。
元々女性誌に連載されていたエッセイなので、重めの小説はちょっと…という人にぜひ気軽な気持ちで読んでほしいです。
オーバーの中に子犬を抱いているような、ほのぼのとした気持ちで毎日をすごしたいあなたに、ちょっと変わった50のエッセイを贈ります。
ページ数 | 224ページ |
20位『一人称単数』
非常に読みやすい短編集です。
題材は、和歌やジャズ、そしてビートルズにまつわる思い出を描いている「ウィズ・ザ・ビートルズ」など。音楽に関する作品なので、知ってるものも多くて入り込みやすい。
独特の世界観と、淡々とした印象になる時もあれば、どこか死を思わせる暗い印象の空気感も味わえます。不思議な感覚になる1冊。
「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。
ページ数 | 236ページ |
21位『ダンス・ダンス・ダンス』
「ぼく」は文化的雪かきと称してフリーのライターをしている。とにかく登場人物がたくさん出てきて、場所もハワイに行ったり東京に戻ったかと思ったら今度は札幌に行ったり。
舞台がコロコロ変わるので、自分までどこか精神的にトリップしているかのような不思議な気持ちになる。意識を少しずつ混乱させていくような小説。
羊を巡る冒険からシームレスに繋がる物語で、村上作品のヒストリーの中でも重要度が高く、エンタメ性も高い物語だと思います。
私の故郷札幌が舞台となっている事もあり、主人公が立ち寄る場所やホテル、食べ物まで想像を働かせるのが楽しく、フィクションながらリアリティを感じる作品です。
喪失から何かを取り戻そうと奔走する主人公が、四苦八苦の末、到達する過程に懐かしさと共感を強く覚える小説です。
村上春樹の小説は、様々な解釈の仕方があります。私の解釈が正しいのか間違っているのか。また、浅いのか。自信はありません。『ダンス・ダンス・ダンス』は、ユミヨシさんと僕にとって幸せな結末となっています。途中経過は別にして、分かりやすいハッピーエンドに感じます。
『風の歌を聴け』から考えると、多くの人が死に多くの人が去っていきました。しかし、世界との繋がりを取り戻し僕は新しく生まれ変わります。20代を駆け抜け30代になり、ようやく僕は自分の存在を取り戻し居場所を見つけることが出来た。
喪失の物語は、再生の物語でエンディングを迎えました。村上春樹の小説にしてははっきりとした結末でした。
『羊をめぐる冒険』から4年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。
ページ数 | 424ページ |
おわりに
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他にもたくさんの作家さんのまとめ記事があるので、ぜひ覗いてみてください!
それでは、これからも素晴らしい読書ライフを!
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