ジャンルを問わず30年近位活躍を続ける作家・宮部みゆき。
癖の少ない文体と読みやすさから、幅広い読者層に愛読されています。
今回はそんな宮部みゆきのおすすめ小説をランキング形式で22冊ご紹介します!
目次
オーディオブックで
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・理由
・火車
・模倣犯
・ソロモンの偽証
宮部みゆきのプロフィール
1960年、東京生まれ。執筆ジャンルは、ミステリー・時代小説・ファンタジーと多岐にわたる。1987年『我らが隣人の犯罪』で第26回オール読物新人賞を受賞。その他にも受賞歴多数。1991年『本所深川ふしぎ草子』で第13回吉川英治文学新人賞、1992年『龍は眠る』で第45回日本推理作家協会賞、1993年『火車』で第6回山本周五郎賞、1999年『理由』で第20回直木賞、2002年『模倣犯』で第52回芸術選奨文部科学大臣賞。
1位『火車』
第6回山本周五郎賞受賞
あした
刑事の本間は、遠縁の男性から失踪した婚約者を探してほしいと頼まれます。やがて関根祥子と名乗っていたその女性は全くの別人だったことが判明。彼女になりすましたのは誰で、その理由は?本間は憑かれたように調査にのめり込みます。
幸せになりたい、そう願う一方で破産や犯罪を躊躇しない。矛盾しているようで欲望に忠実な女性たちがとてもリアルです。刑事である本間が、幸せに対して貪欲な彼女たちの狂気を理解できないのも仕方ないのでしょう。そして本書を手にする読者には本能が囁きかけてきます。「おまえも同じ狂気をもってるくせに」と。
覗きと金銭目的のアカウント乗っ取りとはまた違った、この時代のなりすまし。作者の未來知におののく鬼作です。
あなたやパートナーが合理性を重んじる理系男子なら、この本で不条理な女性心理に触れてみてはいかがでしょう。
Hitoshi Tomiya
自分が読書好きに、そしてミステリー好きになるきっかけとなった1冊です。
それにしても宮部さん、ミステリーなのに人を書くのがホント上手いです。疾走中の女性の人生や人となり、境遇を根気よく調べていき、徐々に真相が明らかになる過程ではページを捲る手を止められません。
そしてあのラストシーン、ミステリー史上最高のラストではないでしょうか。
yurika
捜査の度に、何重にも重ねられたベールが剥がれていく展開にドキドキしました。
また、自己破産など社会の闇を映すことで、話にリアリティーが感じられます。宮部作品の中でも傑作と言い切れます!
みーにゃ
ミステリーとしてだけでなく、1人の女性として恐怖を感じながら一気に読みました。
彼女がどん底まで堕ち、全てを捨てて逃げ続けながらも求めた幸せは郁美のような人生だったのかもしれないと思うと、本間刑事が彼女を「君」と呼ぶに至る気持ちに共感でき、ラストに震えました。
2位『ソロモンの偽証』
映画化
まさみ
クリスマスイブ、中学校の屋上から男子生徒が転落死。
警察は自殺で処理しますが、後日関係者のもとへ「男子生徒は不良の大出に突き落とされた」と告発する手紙が送り付けられ…。
保身に走る教師や捏造も辞さないマスコミに代表される身勝手な大人たち。そんな彼らに対し、真実を追い求めて行動を起こす中学生たちの正義感と頑張りが印象的でした。
後半では生徒たち主導の疑似裁判が行われ、本物の法廷劇さながら二転三転する展開に翻弄されます。不登校やいじめ問題にも切り込んでおり、ずっとひきこもっていたいじめられっ子が、鬱屈した本音を叫ぶシーンは涙なしには読めません。
中学生が仕切る法廷劇に興味がある方はぜひ読んでください。
3位『レベル7』
まさみ
都内のマンションの一室で目覚めた記憶喪失の男女。腕には「Level-7」の入れ墨が彫られています。
部屋の中からは拳銃と五千万円が見つかり、自分たちが何かの事件に関与しているのではと疑った2人は、隣室のジャーナリスト・三枝に助けを求めます。
「レベル7まで行ったら戻れない」この言葉が鍵になる企みに満ちたミステリー。点と点が結ばれ、記憶喪失の男女の背景が次第に浮かび上がってくる構成に引き込まれました。
2人をアシストする三枝もニヒルで頼もしいです。中盤以降発覚する2人の過去と意外な接点には、読者も驚愕を禁じえません。
巨大な陰謀に翻弄される登場人物たちの行く末をぜひ見届けてほしいです。
4位『模倣犯』
第55回毎日出版文化賞特別賞受賞/映画化
公園で発見された女性の右腕とハンドバッグ。それは3ヵ月前に失踪した古川鞠子のものと判明するものの、「右腕は鞠子じゃない」と犯人が直接テレビ局に密告した上、鞠子の祖父・有馬義男に接触を図ってきて……。
猟奇殺人鬼の残虐な犯行とそれを追い詰める捜査陣の執念、家族を嬲り殺された被害者遺族の慟哭が印象的なミステリー。特に義男の人間臭さが素晴らしく、最愛の孫との思い出を回想するシーンは涙なしに読めません。
殺人鬼ピースの得体の知れなさも抜群で、マスコミすら欺く好青年の仮面の裏に隠された、サイコパスの本性に薄ら寒くなります。極悪非道な殺人鬼と、絶望のどん底から立ち上がる被害者遺族の戦いを目に焼き付けてください。
5位『クロスファイア』
青木淳子は念力放火能力(パイロキネシス)を持った超能力者。
ある時淳子は、不良グループに拉致されてきた青年を自分の力で助けます。しかし青年の恋人はまだ監禁されており、淳子が救出を引き受けることに…。
外道と呼ぶしかない凶悪犯罪者を超能力で懲らしめる、女主人公の生き様に痺れる小説。
パイロキネシスの暴走を恐れ、世間から隠れるように生きてきた淳子が、被害者やその家族に代わり犯人に復讐することに意味を見出していく変化が哀しくも恐ろしいです。
執念深く淳子を追跡する刑事との手に汗握る攻防も見どころで、炎渦巻くクライマックスのカタルシスは圧巻でした。
超能力と悪党退治が結び付いた小説を読みたい方は、ぜひ手にとってください。
6位『理由』
第120回直木賞受賞
高級マンションの一室で起こった殺人事件。
最大の謎は4人の被害者全員が、住んでいるはずの一家と全くの別人だったことです。
物語は事件の数年後、ジャーナリストが関係者にインタビュ-する形式で綴られていきます。
取材音源を文字起こししたような、どこか冷ややかな文章はリアリティがあり、ノンフィクション作品を読んでいるような錯覚を覚えます。
バブル景気が生んだ孤独や虚栄心といった問題を示唆しつつ、取材者と関係者のやりとりで事実が明かされていく過程には、どこで読み止めたら良いのかわからないほど釘付けにされました。
あの狂乱の時代に何があったのか知りたい方、不動産購入をお考えの方、誰もが口を閉ざす闇を覗いてみませんか?
登場人物達のステイタス(欲)や自分の居場所を求める気持ち(家族のもつれた感情)に、自分の気持ちと重なる部分がありとても怖かったです。
この本を読み終えた直後に「それでもあなたは家が欲しいですか?」と問われたら即答できなかったと思います。
7位『ブレイブ・ストーリー』
映画化
両親の離婚に深く傷ついた小学5年生の亘は、運命を変えるために勇者ワタルとなって異世界に旅立ちます。
目指すは、願いを何でも叶えてくれる女神さまのもと。右も左もわからないフィールドで、仲間と出会い、時には戦いながらワタルは成長していきます。
トカゲのキ・キ―マ、ウサギのミーナ。「おためしのどうくつ」から「嘆きの沼」へ。楽しくて怖い世界観が素晴らしく、ワクワクが止まりません!
迷いながら決断し、自分の弱さに立ち向かう11歳の少年から、明日を生きる勇気をもらいました。
ファンタジーはあまり…という人ほど手に取ってほしいです。ゲーム好きで有名な作者が作った世界は、読者を同じ沼に誘う魔力に満ちています。目の下のクマと多少の電気代、家族の早よ寝ろ攻撃を覚悟して読書スタート!
8位『誰か―Somebody』
小泉孝太郎主演ドラマの原作
杉村三郎は、妻子を愛する平凡な社内報記者です。ただ1つ、勤務先の今多コンツェルン会長が義父であることを除けば。
その雲上人から杉村に、事故死した専属運転手の、娘たちの力になってほしいと依頼がありました。犯人を探して父を偲びたい姉妹のため、杉村は運転手の過去を調べていきます。
物語が進むほど姉妹の想いや運転手の過去があらわになるのに、誰も幸せになっていかない。全てを明らかにすることが必ずしも良いとは限らないと、暗闇から警告されているようで心がザワつきます。
知らない方が幸せだとわかっていて、それでも知りたがる人の愚かさを背負う杉村を止めることは、自分にはできませんでした。
自分と恋人や夫婦の間に隠し事はない、と信じている方はご一読を。
9位『おそろし 三島屋変調百物語事始』
宮部みゆきの時代小説、「三島屋」シリーズの記念すべき第1作目。
三島屋の主人・伊兵衛は、居候中の姪・おちかを接待役とし、客を招いて怪談を聞く催しをひらめきます。
伊兵衛がおちかに聞き手を勧めたのは、実家の旅籠で起きた事件で傷を負った、姪の気晴らしになればというのも一因でした。その後三島屋には次々と客が訪れ…。
語られる話はどれも恐ろしく、世間の冷たさや人の醜さが垣間見えて背筋が寒くなります。
一方で、義理人情のぬくもりや語り手の成長を感じさせる話も多く、聞き手を務めるおちかが怪談を通して自らを見詰め直し、過去を乗り越えていく姿が印象的でした。
江戸時代を舞台にした怪談が好きな方、おちかの成長を見守りたい方はぜひ手にとってください。
10位『我らが隣人の犯罪』
オール讀物推理小説新人賞受賞
念願の新居に引っ越した「僕」の一家は、うるさく吠えまくる隣家の飼い犬・ミリーに悩まされていました。
「僕」と妹はご近所トラブルに悩んだ末、信頼する叔父に協力を仰いでミリーを誘拐するのですが…。
収録作は日常の謎をメインに据えた小品ながら、読後にほっこり心が温まる話が多く、人情を重んじる宮部みゆきの美点が発揮されています。
表題作はドタバタホームコメディにミステリーを足した作品で、「僕」とませた妹のコミカルなやりとりや、ユニークな叔父さんの存在感が際立っていました。思いがけない事件の顛末には「なるほど、そういうことだったのか」と唸らされます。
登場人物に親しみを感じられるミステリーを探しているなら、自信をもっておすすめします。
11位『きたきた捕物帖』
江戸は深川、岡っ引きの仙吉親分が亡くなりました。迷い子で親分に育ててもらった北一は、岡っ引きになる夢も叶わずお払い箱に。
親分がもう1つの生業にしていた文庫売りをしながら慎ましく暮らす北一のもとには、何だか不思議な事件が集まってきます。
呪いの福笑いや神隠し、差配さんの誘拐。この謎解きだけでもう楽しいのですが、北一の周りにいる、酸いも甘いもかみ分けた大人たちが粋で素敵で惚れ惚れします!
そして中盤、北一はもう1人のきたさん・喜多次と出会います。無口で愛想なしの喜多次には何か深い事情がありそう…と匂わせたところで物語はお預けに。
そんな作者の焦らしに「っか~!たまんねえな!」と呟いてしまう、にわか江戸っ子仲間を絶賛募集しております。
12位『淋しい狩人』
古本屋「田辺書店」の主人・イワさん。気楽に読める娯楽本だけを棚に置く信条を持ったイワさんはその仕事柄、本が関係する様々なトラブルに巻き込まれがちで…。
人情味あふれる老人を描かせたら天下一の宮部みゆきが、古本屋の主人を探偵役にしたミステリー。
なんといってもイワさんのキャラが魅力的で、一冊一冊本を愛おしむ気持ちや、困っている人を放っておけない世話焼きぶりにほのぼのします。ほろ苦いエピソードも多いのですが、頑固で温かいイワさんの人柄と機転に助けられ、読後感は上々でした。
古本屋が舞台のミステリーを探している方、ジャンル問わず本が好きな方は「田辺書店」を訪れてみませんか?
13位『あやし』
木綿問屋「大黒屋」の跡取り・藤一郎に縁談が持ち上がります。
ところが藤一郎は女中のおはるを孕ませており、彼女は店の意向で暇を出されてしまいました。後日奉公人の銀次がおはるに会いに行くと…。
全9編を収録したホラー短編集。問屋や長屋住まいの町人がメインの話が多く、不思議なしきたりや奇妙な噂がのちの惨劇に繋がる構成にぞっとしました。
幽霊や妖怪はもちろん怖いですが、自己本位な理由であっさり恋人を捨て、身内を虐げて憚らない人間の本性も同じ位おぞましいと痛感させられます。
心の闇と怪異が融合した怪談には、障子の破れ目からあの世を覗きこんだような気味悪さが付き纏いました。宮部みゆきの時代小説と怪談が好きなら必読です!
14位『ICO-霧の城-』
同名ゲームの世界観を豊穣な想像力で補強した小説。
何十年かに一度、角が生えた赤子が生まれる村。この角は霧の城に捧げられる生贄の証であり、そこに行けば「永遠の命」が得られると語り継がれていました。
角が生えた少年・イコは、生贄として向かった霧の城で不思議な少女・ヨルダと出会い…。
謎の少女と手を繋いで霧の城を探索するイコの、少年らしい好奇心と正義感が見所!ボーイミーツガールを主題にした冒険小説でもあり、ヒロイン・ヨルダの悲劇的な生い立ちとイコの運命が交錯する展開は大変ドラマチックでした。
また、霧の城のディティールが細部まで作り込まれ、幻想的な風景が目に浮かんできます。
自分も霧の城を歩いてる気分になれる、廃墟マニアにおすすめの小説です。
15位『今夜は眠れない』
サッカー少年の「僕」こと緒方の母親にある日突然、謎の人物の遺産の5憶円が贈られます。
この幸運を妬んだ周囲は緒方一家をバッシングし、父親は僕が母と謎の人物の間にできた子ではないかと疑い家出。僕は真実を知るため、親友・島崎とともに調査を開始します。
緒方と島崎の中学生コンビの活躍が痛快なミステリー小説。僕の一人称で語られる物語はライトな文章でテンポよく進み、先がどうなるのか気になりました。
クールでクレバーな島崎も実に頼り甲斐があってかっこよく、息ぴったりのかけあいに吹き出すこと請け合い。遺産贈与の意外なからくりと黒幕の正体には仰天しました。
中学生が主人公の後味爽やかなミステリーが読みたい方におすすめです。
16位『夢にも思わない』
中学生の「僕」こと緒方は、同級生の美少女・クドウさんに片想い中。
そんなある日、近所の公園で殺人事件が発生。被害者はクドウさんの従妹で、売春組織に関与した口封じに殺されたのではないかと噂が出回ります。僕は親友・島崎と調査に乗り出し…。
『今夜は眠れない』に続く「緒方&島崎」シリーズ第2弾。前作よりもビターな雰囲気で、思春期の少年少女特有のナイーブな心の揺れや複雑な人間関係を描いています。
僕とクドウさんの初々しい恋愛に反し、何でも話し合えた島崎とすれ違いが増えていくのが切ないです。しかし最後には2人の友情を再確認でき、じんわり目頭が熱くなりました。
緒方や島崎と同年代の中高生にこそ読んでほしい青春ミステリーです。
17位『魔術はささやく』
第2回日本推理サスペンス大賞大賞受賞
犯罪加害者家族の苦悩が克明に描かれたミステリー小説。
高校生の守には、実父が横領を犯して失踪した苦い過去があります。
その後、姉と離れ離れになった守は優しい里親に引き取られますが、今度はタクシー運転手の義父が事故を起こしてしまいます。しかしこの事件には裏があり…。
二重に犯罪者の息子ということでいじめられ、さんざん理不尽な仕打ちを受けながらも屈折せず、ひたむきに真実を追い求める守を応援したくなります。
そんな守に愛情を注ぐ里親家族や、離れた場所から弟を手助けする実の姉も非常に魅力的。催眠術をキーワードにした事件の真相も、意外性にあふれています。
犯罪加害者家族の葛藤を知りたい方はぜひ読んでください。
18位『龍は眠る』
親友同士の超能力少年の対決が山場のミステリー。
記者の高坂は台風の夜に、自転車がパンクして困っていた少年・慎司を拾います。
車で走行中、慎司は超能力者であると告白。信じられない高坂に対し、先ほど目撃した事故の真相を超能力で読みとって教えました。さらに慎司には同じ超能力者の友人・直也がおり…。
超能力を持って生まれてしまったが故の苦悩や孤独を描写し、慎司たちがそこに生きているようなリアリティーを感じさせます。
自分の意志でコントロールできない超能力を、荒ぶる龍にたとえたタイトルも秀逸。残酷な宿命を背負った慎司と直也がすれ違いを経て至る、悲劇的なラストが胸を打ちました。
ミステリーと超能力が融合した小説を読みたい方におすすめです。
19位『蒲生邸事件』
日本SF大賞受賞
上京した高校生・尾崎孝史は、宿泊先のホテルで火災に巻き込まれます。彼を助けたのは、暗いオーラをまとった男。男はタイムトリップの能力を持っており、火災から逃れるため過去へと飛んだのでした。向かったのは1936年2月26日。二・二六事件が起こるその日、2人が訪れた館で起こる、ある人物の自決の謎を巡り、物語は進みます。
歴史と人間の関係性という命題が虚実織り交ぜながら描かれていき、はらはらしながら読むこと間違いなし。「歴史は変えられない。私たちは歴史の一部でしかない」という本作のテーマは、運命論的な響きを含んでいます。しかし、だからこそ、どのように生きるかが問われるのでしょう。戦争へ進む道を生きる人々の生き様に注目して読んでいただきたいです。
20位『荒神』
時は5代将軍綱吉の世。東北地方のある山村から村人全員が消えました。
ただ1人助けられた村の子・箕吉によって、村は正体不明の「何か」に襲われたことが分かり、人々は生き残るために人ならぬものとの戦いを余儀なくされます。
山を神のおわすところと崇め、自然と共に生きる人々の暮らしと、多くのページを費やして描写される凄惨な戦いとの対比は、活字を追っているはずの目にリアルな画を浮かばせます。
凶暴な「何か」だけでなく、人間の欲と業が人を喰らっていく様は、自分が畏怖すべき対象を忘れた愚かな人間だと突きつけられているようで、心がすくみました。
一方で、そんな心に灯をともしてくれるのもまた「人間」でした。箕吉、朱音、やじ、宗栄…たくさんの灯に会いに行ってください。
愛に満ち溢れた優しい話です。
個性的で魅力的なキャラ達、まるで映像を見ているかのような読書体験でした。
植物好きな人はきっと楽しく読めると思います。
21位『この世の春』
主人公・多紀の父の死、多紀の知らされていなかった自分の出自。別荘五香苑に幽閉された北見藩主重興。そして重興に住み着く3人の霊。
上巻は様々な現象が個々に起き、謎が謎を呼んでいて、続きが気になっていました。それが下巻で1つにつながったときは、まるで1本の糸で繋がるかのようであり、壮大な物語でした。
小説史に類を見ない、息を呑む大仕掛け。そこまでやるか、ミヤベ魔術! それは亡者たちの声? それとも心の扉が軋む音? 正体不明の悪意が怪しい囁きと化して、かけがえのない人々を蝕み始めていた。目鼻を持たぬ仮面に怯え続ける青年は、恐怖の果てにひとりの少年をつくった。悪が幾重にも憑依した一族の救世主に、この少年はなりうるのかーー。
22位『地下街の雨』
これを読んだのは中学生か高校生くらいだったと記憶しているのですが、その時の私は「大人になったらこんなに素敵な恋が待っているのか」と思いました。その時の記憶では「地下街の雨」は「晴天の霹靂」と同義でとらえていました。
この文章を書くにあたってもう一度軽く読んでみたのですが、今思うことは「恋愛はタイミング」ということです。この時代、地下にいてもきっと雨に気が付くことができるでしょう。それを使うかどうかは自分次第。
怖くても最後まで読んでみてほしい一作です。
麻子は同じ職場で働いていた男と婚約をした。しかし挙式二週間前に突如破談になった。麻子は会社を辞め、ウエイトレスとして再び勤めはじめた。その店に「あの女」がやって来た…。この表題作「地下街の雨」はじめ「決して見えない」「ムクロバラ」「さよなら、キリハラさん」など七つの短篇。どの作品も都会の片隅で夢を信じて生きる人たちを描く、愛と幻想のストーリー。
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございました。
自分の大好きな一冊、懐かしい一冊、再読してみたくなった一冊、気になってはいたが読めていない一冊など、ランクインしていましたでしょうか?
この記事を読んで新たな作品との出会いのきっかけになればと願っております。
他にもたくさんの作家さんのまとめ記事があるので、ぜひ覗いてみてください!
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