三津田信三おすすめ小説10選【ミステリー×ホラーの名手】

物理波矢多シリーズ

戦後を舞台にした、新シリーズの開幕!

『刀城言耶シリーズ』と同様、戦後間もない昭和の世を舞台としたミステリー・ホラー小説。

現状では、常に死と隣り合わせの過酷な炭鉱の中で、不気味な連続殺人事件を描いた『黒面の狐』と、同じく危険が常に付き纏う職である灯台守が体験した、奇妙で悍ましい体験を描いた『白魔の塔』の2作品が刊行されている。

新たなシリーズの主人公を務めるのは、戦争によって志を折られてしまった青年、物理波矢多。

彼の抱える想いや葛藤は、これまでのシリーズとはまた違った魅力を持って描かれている。

元は『刀城言耶シリーズ』の最新作として構想されていたことも影響してか、『黒面の狐』で描かれる事件は『刀城言耶シリーズ』に近い味わいがある。

しかし続編の『白魔の塔』では、淡々と描かれる恐怖譚や悍ましさ溢れる真相、そしてダイナミックなオチなどが見事に盛り込まれており、これまでとは異なる新シリーズとしての迫力を見せつけてくれる。

今後は何色の怪異が現れるのか、物理波矢多の行き先が気になる作品だ。

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『のぞきめ』

ミステリとホラー、融合の極地へ

ミステリーの文脈でホラーに挑む、三津田信三氏の単独ホラー作品。

謎の廃村に足を踏み入れたことで異様な存在と遭遇した若者グループが、村から脱した後も不可解な現象によって次々と犠牲になっていく恐怖を描いた〈覗き屋敷の怪〉が第一章。

民俗学を学ぶ学生が憑物信仰の残る村を訪れ、そこで悍しい事件に遭遇する様子を描いた〈終い屋敷の凶〉が第二章の、2部構成となっている。

其々の章に三津田信三氏の膨大な民俗学的知識が要所に盛り込まれており、それが恐怖に説得力を与えている。

圧倒的な描写力も相まって、いわゆる因習モノの中でも、真に迫った恐ろしさを持った作品だろう。

ミステリー要素も含まれており、著者に並ぶ知識量が有れば真相に辿り着くことも不可能では無いという、フェアな構造。

また、メタホラー作品としても非常に完成度の高い作品だ。

本作の冒頭で2つの恐怖体験が書かれた原稿を手にしている小説家は、明言はされていないものの明らかに三津田氏本人と思われる。

そして、原稿を読んだ小説家が怪現象に襲われる様子を描くことで、のぞきめなる怪異が読者にも迫る可能性を示唆しており、著者と読者が一体となって楽しめる作品となっている。

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『のぞきめ』原作小説あらすじと感想【ホラーとミステリ、融合の極地】『のぞきめ』原作小説あらすじと感想【ホラーとミステリ、融合の極地】
『のぞきめ』の基本情報
出版社 KADOKAWA
出版日 2015/03/25
ジャンル ホラー
ページ数 412ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『誰かの家』

日常に侵食する、非日常の恐怖

6つの怪奇小説が収められた、短編集。

平凡な日常が非日常の恐怖に飲み込まれていくまでの過程が、丁寧かつロジカルに描写されている。

空想上の存在であったはずの何者かが、徐々に実態を持って迫ってくる恐怖を描いた短編『あとあとさん』や、遊泳禁止となった海の浜辺で汐漓(しおり)と名乗る美しい女性に出会い、最初は惹かれるものの徐々に恐ろしく感じていく『つれていくもの』など、そのバリエーションは非常に豊富。

実話怪談を知り尽くした三津田信三氏だからこそ描ける、見事な怪談集となっている。

また、それぞれの作品を語る前に挟まれる著者の雑学も、大きな魅力。

過去の因習や風俗などの紹介・解説などは非常に勉強になるし、例えば因習に囚われた村系統の物語を読む際などには、その舞台背景を理解する上での大きな助けとなるだろう。

加えて、三津田氏がこれまでに触れてこられた作家や作品を紹介する際などは、ネタバレ厳禁な要素を巧みに隠しつつも作品の魅力は簡潔に伝えてくれる。

新たな作家・作品との出会いの場にもなってくれる、素晴らしい作品だ。

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『誰かの家』あらすじと感想【日常と非日常の境目に顔を覗かせる、恐怖の体験の数々】『誰かの家』あらすじと感想【日常と非日常の境目に顔を覗かせる、恐怖の体験の数々】
『誰かの家』の基本情報
出版社 講談社
出版日 2018/03/15
ジャンル ホラー
ページ数 384ページ
発行形態 文庫、電子書籍

『怪談のテープ起こし』

〈音〉が迫りくる、湿り気に満ちた怪奇

6つの録音された怪談を文字に起こした、という、文字通りテープ起こしをメインテーマに据えた短編作品集。

自殺者の末期の声を収めたテープを軸に物語が進んでいく『死人のテープ起こし』や、女性がアルバイトとして留守番を引き受けた薄気味悪い屋敷で、恐怖の一夜を過ごすという如何にもホラー色の強い『留守番の夜』など、1つのテーマに沿った作品でありながら収録されている恐怖の中身は、非常にバラエティ豊かだ。

また各話の最初には、テープを入手した経緯や作品の執筆に至ったきっかけなどが、三津田氏の十八番であるホラー知識を伴って語られる。

各話の冒頭に挟まれたものとは別に、三津田氏の豊富な知識が盛り込まれた雑談も展開されており、それだけでも一読の価値があるだろう。

加えて、そもそもの話にはなってくるのだが、まずもって〈怪談〉を〈テープ起こし〉する、という行動そのものが、リアリティを持った恐怖を味わえる要素だ。

彼の傑作実話怪談集『新耳袋』を例に挙げるとするならば、一夜で同書を読み切った読者にも怪異が降りかかったこともあるそうだ。

当然、今作でも同じことが起きないとは限らず、読者にすら恐怖が迫ってくる恐ろしさを満喫できる作品に仕上がっている。

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『怪談のテープ起こし』あらすじと感想【死人のメッセージに纏わる恐怖の物語】『怪談のテープ起こし』あらすじと感想【死人のメッセージに纏わる恐怖の物語】
『怪談のテープ起こし』の基本情報
出版社 集英社
出版日 2019/01/18
ジャンル ホラー
ページ数 336ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『忌物堂鬼談』

〈忌物〉を巡る、恐怖と謎解き

〈忌物堂〉なる曰く付きの品、即ち〈忌物〉を集めた寺院で、それらの来歴の恐怖を語ると言う異色の作品。

新シリーズとされているが、現状ではこの一冊しか発刊されていないため、ノンシリーズの項目で紹介させて頂く。

所持するだけで祟られるという〈忌物〉に纏わる物語たちは、何も異様なまでの悍ましさに満ちており、読む者に不安と恐怖をこれでもかと言う程に堪能させてくれる。

また、得体の知れない怪異に襲われ、〈忌物堂〉の主人に助けを求めた主人公、由羽希が、〈忌物〉の正体を探るという、推理パートのような部分もあり、一緒なって推理に参加することでミステリー的な楽しみ方が出来る。

〈忌物堂〉の主人、天山天雲のキャラクター性も、軽妙でありながら凄みや得体の知れなさを感じさせ、非常に魅力的。

是非とも、〈忌物〉に関する魅力的な数々を堪能して欲しい。

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『忌物堂鬼談』の基本情報
出版社 講談社
出版日 2017/09/07
ジャンル ホラー
ページ数 224ページ
発行形態 文庫、電子書籍

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『赫眼』

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