原田マハおすすめ作品15選【アートと旅に魅せられた作家が描く情景】

『旅屋おかえり』

崖っぷちアイドルが旅代行します!

アラサーの崖っぷちアイドル・おかえり、こと、丘えりかは、唯一のレギュラー番組だった旅番組「ちょびっ旅」で、スポンサー名を間違えて連呼してしまう。

番組は打ち切られ、次の仕事も全く見つからないおかえりに、「ちょびっ旅」視聴者から依頼がくる。

それは、ALSで動くことが難しい娘の代わりに、旅をしてほしいというものだった。

旅行好きの人にとっては、旅代行なんて美味しいと思うかもしれない。

しかし、おかえりはただ旅行をするのではない。

旅ができない依頼人の思いをくみ取り、まるで依頼人が行ってきたかのように、旅行するのだ。

おかえりが根っからの旅好きだというのが分かるので、読んでいるだけで幸せになれる。

また、彼女の打算のないストレートな思いは、依頼者そして周りの人間が心に秘めていたわだかまりをも、雪解けさせてくれる魅力がある。

心が温かくなるハートフルストーリーだ。

『旅屋おかえり』の基本情報
出版社 集英社
出版日 2014/09/19
ページ数 352ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『生きるぼくら』

引きこもり青年が挑戦する特殊なお米づくり

この小説には、大きな主題が2つある。

「主人公が外の世界へと踏み出すこと」、そして「特殊なお米作り」だ。

母が出ていき、引きこもりの24歳の青年・麻生人生(あそう じんせい)は、途方に暮れていた。

母が残した手紙から、別れた父方の祖母・マーサばあちゃんが余命数ヶ月だという手紙を見つけ、彼女が住む蓼科へ1人向かう。

蓼科に着くと、そこにいたのは、認知症で人生を忘れたマーサばあちゃんと別れた父の再婚相手の娘・つぼみだった。

家に帰っても誰もいないため、人生は仕方なくそのままマーサばあちゃんの家で暮らすことにする。

仕事も始め、蓼科での暮らしに慣れてきたころ、マーサばあちゃんから「特殊なお米作り」を聞き、つぼみと挑戦する。

蓼科で近所の人を巻き込みながら、お米作りに挑戦する様子は、 引きこもっていたとは思えないほど、人生の成長を感じた。

また、「特殊なお米作り」は読んでいるだけで、ご先祖様への感謝の念が募ってくる。

『生きるぼくら』の基本情報
出版社 徳間書店
出版日 2015/09/04
ページ数 423ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『さいはての彼女』

硬くなった心を溶かす物語たち

全4編の短編集。

「さいはての彼女」と「冬空のクレーン」は、順風満帆だった仕事につまずいたキャリアウーマンが、旅先の北の大地での思いがけない温かい出会いによって、硬くなった心が溶けていく物語。

「旅をあきらめた友と、その母への手紙」は、親友ナガラと来るはずだった伊豆旅行に、1人で来ることになったハグこと、波口喜美(はぐち よしみ)の話。

「風を止めないで」は、「さいはての彼女」に登場するハーレーのカスタムビルダー・ナギの母・佐々木道代(ささき みちよ)が応対したナギ宛の不思議な来客の話。

どの物語も主人公は35歳以上の女性で、多少つまずきはあれど、仕事やプライベートをそれなりに充実させている。

そんな彼女たちにもたらされた思いがけない出会いや非日常の世界が、知らないうちに硬く武装してしまった心を溶かしていく感じが読んでいて心地良い。

『さいはての彼女』の基本情報
出版社 文藝春秋
出版日 2013/01/25
ページ数 236ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『ジヴェルニーの食卓』

傍らにいた女性たちが見た巨匠たちの素顔

第149回直木賞の候補になった作品。

晩年のマチスを家政婦が回想する「うつくしい墓」、亡きエドガー・ドガが残した彫刻を見たメアリー・カサットが回想する「エトワール」、タンギー爺さんの娘がセザンヌに宛てた手紙「タンギー爺さん」、そして元首相クレマンソー来訪のため、モネの義理の娘・ブランシュが迎える準備をする「ジヴェルニーの食卓」の4編が収録。

マチス、ドガ、セザンヌ、モネ。

この小説では、印象派を代表する巨匠の側にいた女性達の視点で、彼らの苦悩や葛藤、溢れ出すアートへの情熱と繊細な心などが描かれている。

原田マハ氏が本気で巨匠たちと向き合ったという本書。

その魅力はなんといっても、気難しいと思われる芸術家たちも実は、市井の人と変わらない日常の営みを送っていると感じられることだと思う。

『ジヴェルニーの食卓』の基本情報
出版社 集英社
出版日 2015/06/25
ページ数 288ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『総理の夫』

もし日本で女性総理が誕生したら?

中谷美紀、田中圭主演で2021年に映画公開が決まっている作品。

20☓☓年の日本で初めて女性の総理大臣が誕生したところから物語は始まる。

新しい総理大臣の名前は相馬凛子(そうま りんこ)。

本書は、凛子の夫で徳田野鳥研究所に勤める相馬日和(そうま ひより)が後世の読者のためにと思い、書きだした日記形式で綴られている。

野鳥研究家らしく、人間の行動を野鳥になぞらえて日記の書き出しをしたかと思えば、総理の夫となったことによって起きた日常生活の変化、マスコミに追われる日和の苦悩、夫婦の時間が取れずにすれ違う苦難が赤裸々につづられている。

もし日本で女性総理大臣が誕生したら、起きるだろうと思われる展開が読んでいて面白い。

また、総理の夫となっても、日和が一般人の目線を忘れていないので、読者も感情移入がしやすいと思う。

『総理の夫』の基本情報
出版社 実業之日本社
出版日 2020/11/02
ページ数 464ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

『異邦人(いりびと)』

芸術に魅入られた女の執念

篁菜穂(たかむら なほ)は、銀座の一等地に画廊を構える、たかむら画廊の御曹司で専務の一樹(かずき)の妻であり、自身は不動産会社を営む実家が運営する美術館で学芸員をしていたが、東日本大震災発生を機に、放射能の影響が胎児に及ぶことを恐れて、東京から京都へと避難した。

知り合いがほとんどいない京都の画廊で、菜穂は無名作家の絵を見つける。

元々美術品の選定眼に定評があった菜穂は、無名作家から才能を感じ取り、この画家へ執着していく。

『楽園のカンヴァス』や『ジヴェルニーの食卓』では、アンリ・ルソーやモネとった芸術家個人に焦点を当てて書かれていたが、本書は芸術そのものに魅入られた人を描いており、他のアート小説とはテイストが異なる。

特に、菜穂の芸術家の才能を見極める目と、芸術品を愛するがゆえに見せる執着心には恐ろしさを感じるほどだ。

第6回京都本大賞受賞作である本書は、アート小説の新しい切り口を見せられたように思う。

『異邦人』の基本情報
出版社 PHP研究所
出版日 2018/03/08
ページ数 421ページ
発行形態 単行本、文庫、電子書籍

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