『嫌われる勇気』岸見一郎 古賀史健【発売から6年。Amazonレビューは2119件。今もなお売れ続けていくのは、そこに救いがあるから。】

あらすじ

登場人物は哲人と青年の2人だけ。

アドラー心理学を用いながら、少年の持つしがらみが少しずつ解けていけるストーリー。

対話で展開されていく様はまるで、親しい人と行く居酒屋みたいだ。

居酒屋は不思議な場所で、自宅でもないのに妙な居心地の良さがあり、数時間話すだけで重たかった気持ちが軽くなる。それは単にお酒で判断能力が鈍っているからではない。

一人では見つからなかった解決策が、誰かに話しているうちに見つかったからである。

お酒は心を解放するし、対話は悩みに効く。

哲人と青年のやりとりからそんなことを思った。

注意
以下、ネタバレ注意です。

嫌われる勇気の感想(ネタバレ)

掘り進める

この青年は、かなりしつこい。

自分が納得出来るまで何度も何度も哲人に疑問を投げかける。展開のスピードに少しヤキモキするが、そのしつこさがアドラー心理学をよりポップなものに変える。

専門雑誌を読んでいるときと同じ深掘り感覚だった。

疑問への食い付き方が執念深い。そのおかげで理論に置いてけぼりになることなく、普段本を読まない人でも分かりやすい内容になっている。

アドラー心理学とは

アドラー心理学とは、個人心理学が正式な呼び方で、オーストリア出身のアルフレッド・アドラーが創始し、後継者たちが発展させてきた心理学の体系である。

名称の理由は個人とは分割できない存在である、とアドラーが考えていたことによる。

根本にあるのは”人間はマイナスの状態から、相対的にプラスの状態を目指して行動しているとされている。”という理論。

つまりポジティブになるための心理学なのだ。

大切なのは

“もしも、幸せを実感できずにいるのであれば、「このまま」でいいはずがない。”

この本が説いていることは至極シンプルだ。

シンプルかつ、核心を突いていて、見ている風景が少し角度を変えたように見えてくる。

“大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うか。”

隣の芝生を青く見る必要はない。自分の立っている芝生が見劣りしているわけではない。

角度の問題だ。幸も不幸も考え方次第で姿を変える。不幸から抜け出せないでいる状態に対して、アドラーをこう述べている。

“いまのあなたが不幸なのは、自らの手で不幸であることを選んだからなのです。”

そんなわけない。この言葉に出逢ったとき、私はそう思った。自ら不幸になりたがる人間なんておかしい。

けれど心のどこかで小さく納得もした。

人間失格を読んだときの言葉が、傷のようにずっと残っていたからだ。

“幸福に傷つけられる事もあるんです。”

不幸は居心地が良い。諦めていると生きやすくなるのと同じで、不幸であれば言い訳も出来るし、これ以上痛い思いをすることもない。

不満であったとしても安心感がある。

不幸に留まることを悪だとは思わない。その心理状態が自身を救うことだってあるから。大切なのは自分で選ぶことだ。

変わることで生まれる不安か、変わらないことで付きまとう不満かを。

どちらか1つを選ばなくてはいけないときに、どちらの「不」を自分で選ぶかが大切になってくる。

自立をすること

“他者の幸福を、「わたしの負け」であるかのようにとらえているから、祝福できない。”

SNSは「いつでも一人じゃない」を普及すると同時に、「惨めさを感じる機会」も普及した。

競っているつもりもないのに、結婚、妊娠、昇進の報告になぜか傷付く。

そんな悩みにこの本が説いてくれた答えがあった。

“人生は他者との競争ではない。誰かを蹴落とす、階段のようなイメージではなく、平らな地平だ。前に進んでいる人もいれば、その後ろに進んでいる人もいる。”

負けではないし勝ってもいない。

競争という視点を変えることが、苦悩から脱却するポイントなのだ。

明日には変われるやろか

いい本を読んだ、良い映画を観た、いい出会いをした。明日になったら人生がかわっているような気がする。そんな瞬間は多々ある。

しかしアドラーは思考は今からでも変えられると述べる。確かにそうだ、頭で考えるだけであれば今すぐにだって変えることが出来る。問題はその勇気があるかどうか。

思考が変われば人生も変わる。人生はいまここから変えることができる。年齢は関係ない。いつだって今が、自分史上一番若いのだから。

嫌われる勇気

“嫌われる勇気”というタイトルは力任せすぎて本屋さんで見かけたとき、すぐに買わなかった。タイトルに釣り上げられた自分が、ひどく安っぽく思えたからだ。

読後、”嫌われる勇気”はなんて良いタイトルなんだろうと痛感する。

この本に書かれていることをつらつらと、得意げに述べたら嫌われてしまう可能性もある。

自分と真逆の正論はすぐに飲み込めないのが人間の性。この本は言葉の刺激が強いのと、裏付けにきちんとした正論があるからだ。

スピード感

最初は受け入れ難かったものが次第に柔らかくなって心へ流れていく快感。

パズルと同じ。初めは少しずつしか分からなかったのに、埋まってくるにつれてスピード感は増していく。

後半のページは思想ばかりが前のめりになってしまって、文字を追う目が、脳の処理よりもコンマ1秒早くなってしまう。圧倒的なスピード感で脳が覚醒したような感覚に陥る。

読後の無敵感こそ、この本が今もなお売れ続ける理由のひとつだろう。

人生の意味

この本の終わりには”人生の意味”という問いかけがある。

昔読んだことがある人は思い返してみてほしい。

未読の人は、自分なりに意味を考えてどこかにメモを残してから読み進めて、自分が考えた人生の意味と、アドラーが考えた人生の意味を照らし合わせみてほしい。

自分の賢さを育てるのは、自分の意見と、出逢った思想なのだから。

まとめ 思考は武器へ

どうして私は鳥や猫に生まれてこれなかったのか、本気で思っていた時期がある。

“嫌われる勇気”は難しいけれど、確かに生きる勇気を与えてくれた。

人と人の間に生まれたことを憂うのではなく、人と人の間で、どう生きるのが自分らしさになるか。

私はきっとまたこの本を読むことになると思う。

アドラー心理学との出会いそのものが、ひとつの武器のように感じる。

弱い私が長い人生を渡り歩いていくための見つけた、唯一の武器だ。

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主題歌:SUPER BEAVER/予感

SUPER BEAVERの”予感”だ。

背中を押す曲は沢山あるが、予感は手を引いてくれる曲だ。それも、満面の笑みで。

背中を押すこと、手を引くこと、その違いは誰が前に立っているかだ。手を引く人は先頭に立ち、後ろの人の指針でいなければならない。どうしても踏み出せなかった一歩目を、無理やり押して出させるのではなく、一歩目を出したい気持ちにさせる。

SUPER BEAVERの歌には勇気づけられる。

勇気を出して一歩踏み出せたなら、あとは自分の予感がする方へと歩み出していくだけだ。

“嫌われる勇気”で伝えたいメッセージも、予感のメッセージも、笑ってしまうほどシンプルなものだったなと思い、歌詞の一部を抜粋する。

〈正解なんて あって無いようなものさ 人生は自由〉

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