全国の読書会情報はコチラ

『レインツリーの国』有川浩【私はただ「普通」の恋がしたいんです。】

こんにちは、ReaJoyライターのしおっちです。

突然ですが。

恋愛って大変ですよね?

最初は他人から始まって、ぶつかったりすれ違ったり…。

でもやっぱり相手のことが好きで、理解したい!という気持ちがお互いあって、だからこそすれ違ったりするもの(と恋愛初心者の私は思います)。

それはお互いの立場や環境が違えばもっと大変になるもので。

これからご紹介するお話はそんな2人の物語です。

きっとどこかにいるであろう2人のごく普通のラブストーリー。

ある1点を除いては、ですが。

あらすじ

会社員の向坂伸行はある日中学生の頃に読んでいたライトノベルの感想を調べていました。

それはラストがとても衝撃的で自分以外の人はどのように受け止めたのだろう?と思ったから。

そしてあるブログにたどり着きます。

そのブログの名前は「レインツリーの国」で管理人は「ひとみ」という女性でした。

ひとみもまたそのラストに衝撃を受けた1人でした。

そのラストの解釈、言葉のチョイスなどなどが伸行の好みに突き刺さり、伸行はこの人と話がしたい!と思います。

最初はメールで、でもいつしか会って話したいと思うようになっていた伸行は2人で会わないかとひとみを誘います。

しかしひとみはそれには消極的でした。それは彼女なりの理由があったから。

その理由とは一体何でしょうか?

注意
以下、ネタバレ注意です!

レインツリーの国の感想(ネタバレ)

「普通」の生活

伸行とひとみの違い、それは耳が聞こえるか聞こえないかでした。

もちろん聞こえないというのは辛くて大変なことです。

でも辛いことも悩みも人それぞれあります。

伸行は脳腫瘍で高校生のとき父親を亡くしており、そのときの手術によって家族で自分だけ忘れてられてしまったという過去を持っていました。

でもこういう話ではこの過去は書かないと思います。

でも有川さんの書く話はすごくリアルです。全然優しくないです(褒めてます)。

例えば伸行のこのセリフ。

「……そうやって世界で自分しか傷ついたことがないみたいな顔すんなや。」

例えばひとみのセリフ。

救急車で病院に担ぎ込まれるような 重病人が近くにいても、自分が指を切ったことが一番痛くて辛い、それが人間だ。

社会的マイノリティな人でなくても社会は時々優しくない。じゃあ普通なんて勝手なカテゴリーなんだろうなと思います。

伸行にとっては聞こえることが当たり前で、ひとみにとっては両親がいて覚えてもらえていることが当たり前。

人によって当たり前なんて変わるということは分かっているけど実感は難しいと思います。

「普通」の恋愛

「聞こえないから」。そう言ってひとみは伸行と会うことに消極的でした。

でも一度だけなら、「普通」の、聞こえる女の子として会えるんじゃないか。そう思い彼女は伸行に会いに行きます。

とても勇気のいることだったと思います。しかし彼女の願いは叶いませんでした。

意思の疎通が難しくすれ違ってばかりで何度もメールのやりとりをした彼らは初めて思ったことをぶつけ合います。

聞こえないという引け目があるひとみは恋愛にも消極的でした。

深入りしない方がいいよ。聴覚障害の人なんて面倒くさいよ。(中略)だって自分自身が面倒くさい。僻みが強いくせにプライドも高くて。

それでも伸行のことは好きで、諦められませんでした。

聞こえなくなったから「普通」の恋なんて出来ない、そう思っていたひとみに伸行は言います。

「髪を切ってみないか」と。

ひとみにとって長い髪は補聴器を隠すカーテンのようなものでした。

もしそれを見せることで周りの「名もなき悪意」から身を守れるなら。そう思い髪を切ることにします。

好きという気持ちはどんな事情を持っていても変わらないのだと思います。

ほんの少しの勇気

例えば髪を切るとか、誰かに会うとか。

健聴者にとっては普通のことでも難聴者にとってはとても勇気がいることだと思います。

すごくリアルな話です。

文庫版のあとがきで有川さんはこう言っています。

聴覚障害は本書の恋人たちにとって歩み寄るべき意識の違いの1つであって、それ以上でも以下でもない。ヒロインは等身大の女の子であってほしい。

社会には他にもたくさんの歩み寄るべき意識の違いがあると思います。

LGBTQや視覚障害、聴覚障害、精神疾患…。

でもそれは誰かを形容する言葉の1つで、何が普通かなんて分からないけれど、でも好きな人と会って一緒にいたいと誰でも思うのではないでしょうか?

そのときに必要なのは少しの勇気だと思います。

それだけで世界はほんのちょっと変わります。

まとめ

これは「障害者」がいろんな人に応援されて恋をする感動的な話ではありません。

ちょっと拗らせている女の子が恋をする話です。

社会は時々誰に対しても優しくないけど、隣に自分を肯定してくれる人と少しだけ勇気を持てれば世界はほんのちょっと変わるのかもしれません。

主題歌:コブクロ/赤い糸

伸行とひとみの恋はまさに「運命の恋」。

この曲の中でも一度糸は切れてしまいます。でもまたつながって2人ですこしずつ進んでいきます。

この2人の恋もこんな風に進んでいくといいなと思いました。

この記事を読んだあなたにおすすめ!

こちらも当事者への取材がちゃんとされているなと思った作品です。世界変わります、間違いなく。やっぱり社会は優しくないけど、「僕らかわいそうじゃないんで!」って言える勇気を持った子たちのお話。

『明日の子供たち』有川浩【施設の子供たち≠かわいそう】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です