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『独立記念日』原田マハ【現代が抱える呪縛から自由になった女性たちの物語】

1776年7月4日。

アメリカ、正確には北米13州がイギリスから独立した日。

これを記念してアメリカでは、7月4日を独立記念日(インディペンデンス・デー)として、祝われています。クリスマス、感謝祭(サンクス・ギヴィング・デー)と並ぶ盛大な祝日になっています。

植民地からの支配となると、時には生命をも脅かしかねない状況に追い込まれます。その状況からの独立となると莫大なエネルギーが必要になります。

しかし、普通の日常生活を送っている私たちも、植民地支配からの独立とまではいかなくても、様々な状況や感情に囚われていませんでしょうか。

恋、仕事、友情、家族など、各々が抱えている悩みは異なっていると思いますが、悩みがない人はいないでしょう。

今回紹介する原田マハさんの『独立記念日』は、悩みに囚われている女性たちが自由になる(=独立する)、そんな24の物語になります。

あらすじ

「ひと言で言うと、会社とか家族とか恋愛とか、現代社会のさまざまな呪縛から逃れて自由になる人々が主人公の短編集です。」

「独立記念日」(p.311)

一人娘真子を育てるシングルマザーの百合子。

飼っていたオカメインコのトコちゃんが脱走し、預かられていました。

その家とは、百合子が好きな作家真嶋博史の自宅でした。

トコちゃんをお迎えに行ったとき、百合子は親戚から疎遠になり、娘と二人で暮らしていく生活が辛く、その身の上を真嶋に思わず話していました。

思わず泣いてしまった百合子に真嶋が渡した書籍が、本のタイトルにもなっている「独立記念日」だったのです。

真嶋が説明は、正にこの本全体のあらすじです。

そして1話あたり20ページほどの短編になります。

注意
以下、ネタバレ注意です。

独立記念日の感想(ネタバレ)

隣の芝は青く見えるだけ

すべての話に共通するのは、次の話の主人公がさりげなく登場するところです。

次の話の主人公は、読んでいる話の主人公からは、明るかったり、前向きだったり、悩みがなさそうに見えます。

しかし、次の話に目を向けると、前の話の主人公とは異なる悩みに囚われていることが分かります。

”隣の芝は青く見えるだけ”と、多くの人が一度は言われたことがあると思います。この記事を書いている私にも身に覚えがあります。

このお話を読むと、”人から見たら幸せそうに見える人も悩みを抱えている”、とより実感が沸くと感じます。

そして、自分も少しは前向きになろうと思えるのです。

小さな”独立”で前を向く

独立記念日の主人公たちが抱える悩みは、完全に解決していませんが、”何か”をきっかけにして前を向き始めます。

家を出る。恋に終止符を打つ。思い出を噛みしめながら独自の道を進む。人の頑張りから自分も頑張ろうと誓うなど、

きっかけはささやかなこと。言葉にすると全くドラマチックではないのかもしれません。

しかし、ドラマチックでないからこそ、リアリティが感じられます。

一話一話を読むにつれて、主人公たちが決断した小さな”独立”が、読者である私たちも、頑張ろうかなと思えるのです。

もう一つの魅力:瀧井朝世さんの解説

独立記念日を読んだ後、全編を通じて、何か共通点があるようで掴み切れない”もの”がありました。

さらにありふれた言葉でいうと、前向きになろう、もう少し頑張ってみようといった感情も渦巻いていました。

”もの”や”感情”といった表現は曖昧でごまかしがきく言葉です。それほど、全編の魅力を余すことなく伝えるのは難しいと感じました。

その難しい感情を曖昧な言葉なく解説されたのは、瀧井朝世さんです。

わずか6ページの解説。それでも24編の魅力をはっきりと伝えてくれます。

人生は長い。立ち止まることはたくさんある。それでも、小さな”独立”を繰りかえしていくことで、目に映る世界は少しづつ輝きを増していく。なによりも”独立”を果たした時、きっと今までよりも少しだけ、自分のことが好きになっているはずだ。悩み、それでも頑張っている人たちに、自分を好きになってあげていいんだよ、と言ってくれるような短編集。すべての女性たちに、いや、もちろん、悩める男性たちにも、プレゼントとなる一冊である。

普段解説は読まない方でも、一度読んでみてはいかがですか。

まとめ

どんな人でも”悩み”を抱えています。

”悩み”がない、そんな人はいないのではないでしょうか。

時には落ち込んだり、周りが見えなくなることもあると思います。

そんな時にこそ、原田マハさんの『独立記念日』を読んでほしいと思います。

読んで自分の”悩み”は解決していないかもしれません。

でも、心持ちは違います。もう少し頑張ろうと思えます。

もう少し、もう少しが積み重なれば、”悩み”は解決できる日が近いかもしれません。

主題歌:AKB48「365日の紙飛行機」

『独立記念日』を読んで、ふと思い出したのが、この曲。

連続テレビ小説「朝が来た」の主題歌でもお馴染みのこの曲は、主人公を応援する歌詞と優しいメロディーが特徴的で、ドラマの雰囲気に合っていると思いましたが、

独立する女性たちを応援する歌にもあっていると思いました。

人生は紙飛行機 願い乗せて飛んで行くよ

風の中の力の限り ただ進むだけ

その距離を競うより どう飛んだか どこを飛んだのか

それが一番 大切なんだ

さあ 心のままに 365日

競争するのではなく、自分の意志で自由に道を進むこと。

それが、『独立記念日』の女性たちなのかもしれません。

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