目次
あらすじ・内容紹介
これだけは知ってほしいラグビー用語
1チーム15人のメンバーが1つのボールをバックパスやキックで保持しながら前進させ、相手陣地のゴールラインを超える(=トライする)ことで得点を重ねていく。
前にパスをしたり、ボールを落としたりすると反則になる。
一人が行うのではなく、チーム 一丸となり、トライを目指すことから、ラグビーの精神といわれる。
海外ではfull timeと呼ばれるため、和製英語である。
試合終了の意味だけでなく、試合終了後は敵味方関係なく健闘をたたえることも含まれる
ノーサイド・ゲームの感想(ネタバレ)
ラグビーのルールが分かる
見事なオフロードパス―タックルされながらのパスである。
ストラクチャーとは、直訳すれば「構造」だ。
これを転じてラグビーでは、スクラムやラインアウトといった、意図的に組み立てたサインプレーが通用する場面のことを指す。
ラグビーを通じて企業スポーツが分かる
トキワ自動車アストロズの名前が指す通り、社会人ラグビーチームは、企業によって運営されています。
アストロズを例にとると、チームを運営するために、16億円-中小企業の年間売り上げに匹敵する額-が充てられています。
その予算の内訳はトキワ自動車の社員である選手の人件費、環境整備費や遠征などの旅費交通費等である。
一方、収入はほとんどありません。
平均観客人数は3500人。
しかし、実態は企業が多くを買い取っており、実際にチケットを買って見に来る人はわずか200人といいます。
この状況に対し、ラグビー界全体を束ねる日本蹴球協会は、何も改善しようとしないのです。
費用だけかけても、実際に見に来る方が少ない、つまり、ラグビーの人気が上がらないのです。
この状況に対し、長年の課題を放置していたラグビー界へ、君嶋は立ち上がるのです。
具体的には、選手の地域ボランティア参加やジュニア・チームの創設で、知名度を上げ、地域の人に観戦してもらう仕組みを作ることに着手します。
元々君嶋は、経営戦略室でM&A案件や事業戦略のシュミレーションを行っていたこともあり、費用やマーケティング分析の面から、アストロズの立て直しを図っていきます。
この理由から、ラグビーという興行を経営面からも、詳しく読むことができます。
ラグビーの精神が分かる
ラグビーは、イングランドの貴族子弟が通うパブリックスクール、ラグビー校と言われています。
これがラグビーが貴族のスポーツと言われるゆえんです。
さらにラグビーの精神は、経営者に大変好まれています。
トキワ自動車社長、島本博の言葉を借りて説明すると、
(One for alll, All for oneは)「ひとりはチームのために、チームはひとりのために――。素晴らしい言葉だろう。ラグビー選手は、チームのためにひたすら献身し、そしてチームも選手を見捨てない。組織とはそうあるべきだ。」
「ボールを奪い合う激しい試合も、一旦終了の笛が吹かれてしまえば、敵も味方もなくなる。つまり、ノーサイドとなるわけだ。そしてお互いの健闘をたたえ合う。崇高な精神だ。これぞ真のスポーツマンシップじゃないか。ここには、とにかくわれらが忘れがちな人間の尊さ、生き様があんじゃないだろうか」
利益を上げて、社会へ還元することを使命とする。
その使命のために、企業は個性豊かな人間をまとめ、1つの目標に向かわないといけません。
よって、ラグビーの精神は企業経営にマッチしているのです。
”ラグビー”と”企業経営”、親和するこの2つを同時に読むことができるのが、この『ノーサイド・ゲーム』なのです。
まとめ
君嶋のかつての敵であり、子会社社長へ左遷された滝川が、アストロズの試合を観戦し、君嶋へ語る場面があります。
最後には道を過たず、理に適ったものだけが残る。
逆にいえば、道理を外れれば、いつしかしっぺ返しを食らう。
自浄作用がなくなったとき、そのシステムは終わる。(中略)
だが大きなところで、どんどん理不尽がまかり通る世界になっている。
だからこそ、ラグビーというスポーツが必要なんだろう。
『ノーサイド』の精神は日本ラグビーの御伽話かも知れないが、いまのこの世界にこそ、それが必要だと思わないか。もし日本が世界と互角に戦える強豪国になれば、きっとその尊い精神を世界に伝えられるだろう。
ルールに始まり、企業スポーツの在り方や、ラグビーの精神を見てきましたが、全てがこのセリフに凝縮されていると感じました。
また、ラグビーW杯が日本で開かれること。
これは大きなスポーツの祭典が開かれるという意味だけでなく、閉塞感が漂う日本社会へのメッセージなのかもしれません。
主題歌:松任谷由実/ノーサイド
『ノーサイド・ゲーム』に曲を合わせるのなら、この曲しか思い浮かびませんでした。
松任谷由美さんの「ノーサイド」です。
ラグビー選手である彼を応援する人の想いが歌われています。
松任谷由美さんが歌っているため、歌詞に出てくる一人称の”私”は、女性のように感じてしまいますが、
決して女性に限定しているとは思いません。
多くの選手を送り出し、応援するゼネラルマネージャー君嶋に、この歌詞が合っていると感じました。
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