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『さがしもの』角田光代 【世界へ通じる扉を、見つけに行こう。】

この本の評価
読みやすさ
(5.0)
面白さ
(4.0)
本を読みたくなる度
(5.0)
装丁の美しさ
(3.0)
切なさに胸を締め付けられる度
(4.5)
総合評価
(4.5)

みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
今回ご紹介するのは、さがしもの
この短編集の主役は、そのままズバリ、です。

あなたは、今まで一体何冊の本と出会いましたか?
その中で、心を揺さぶられた本は、いくつありましたか?

この本はそんなとの出会いを愛する人への、贈り物のような一冊となっています。

あらすじ

主人公の「私」と恋人の「ハナケン」が、一つの本棚を共有していたことから話が広がる、「彼と私の本棚」。

作家になった僕が、小さい頃にお世話になった小さな町の本屋のことを回想する、「ミツザワ書店」。

主人公の女の子が、残りそう長くないおばあちゃんのために、最後のわがままとして本を探す「さがしもの」などを含む9編が収録された、本を巡る優しい短編集です。

注意
以下、ネタバレ注意です

『さがしもの』の感想(ネタバレ)

「彼と私の本棚」

主人公の女性とハナケンは恋人同士です。
5年前に、短期のアルバイトで出会ったのがきっかけで、二人は親密になっていきました。

2か月後のある日、主人公はハナケンを自分のアパートに呼びます。
そこで、彼女は驚愕することになるのですね。

自分の本棚のラインナップと、ハナケンの本棚のラインナップがとてもよく似ている
そんな縁もあって、彼女とハナケンは一緒に住むことになります。

二人は、互いに知らない本を貸しあう仲になります。
ブコウスキー、高村薫、山田風太郎…。
本棚はいつしかいっぱいになり、新しい本棚を買い、そして部屋が狭くなったら引っ越す。そんな生活が続くと思っていたんですね。

フィッツジェラルドの短編に本の中に出てくる女の子の服の色を二人して探し出したり、本の中に存在する、記憶に残る風景を思い出したり、幾度も出てくる思い出話に、読んでいるこちらの胸も苦しくなってきます。
しかし、不思議と悲しくはありません。後に残されるのは、幸せの名残です。

「ミツザワ書店」

二つ目は、「ミツザワ書店」。
作家になった僕が、小さい頃お世話になった小さな本屋さん、「ミツザワ書店」のことを回想する話です。

シャッター街の、スーパーもデパートもない、古びた美容室や洋服店が立ち並ぶ一角に、ぽつんと佇んだ書店。
店内に入るとおびただしい数の本たちが、地層のように積まれています。

本の壁の隙間から、ちろりと覗く視線。店主のおばあちゃんです。

とても雑多なミツザワ書店で、主人公の「僕」は夏の終わりに、本を万引きしてしまいます。それが、彼の人生を大きく変えるきっかけの本となるのです。

(万引きはしてはいけないことですが、彼のこの行為の動機として、

  • 「なんとしてでもこの本を手に入れたい」という強い独占欲が彼にあったこと
  • 彼と同じように気になっている人物がほかにもいたこと
  • 価格が約一万円と、なかなか手に届く範囲の値段ではなかったこと

が挙げられます。)
そんな彼が心を奪われて、ひたすら読みふけるシーンがこちらです。

「気がついたら、空が白んでいた。

すげえ。静まり返った部屋で、ぼくはそれだけつぶやいた。

(略)自分はほんものの阿呆だなと、すげえと繰り返しながら知った。

この本にはこれだけの言葉があふれているのに、それをぼくはすげえ、すげえという一言でしか言い表せないのだから。-p154」

いかがでしたでしょうか。

「さがしもの」にはこの他にも、さまざまな話が収録されています。
たとえば、最初の「旅する本」。卒業旅行でネパールへ旅立った「わたし」が、十八歳の時に売った本と再会する話です。

わたしは道中、訳あって何度も本を手放しますが、どういうわけか、本は彼女のもとを犬のように、古書店や市場を周りながら、流れ着いてくるのです。

最後に、この本は単行本と文庫本とで、タイトルが違います。

単行本はこの本が、世界に存在することに、文庫本は「さがしものです。

岡崎武志さんの名解説が収録されているのは文庫本だけですが、単行本の方もタイトルが素敵なので、一度手に取ってみてください。

あなたの、世界への扉が開きますように。

主題歌:Mr.Children/終わりなき旅

さて、今回選曲したのは、Mr,Children終わりなき旅。
ドラマ「殴る女」の主題歌でした。
辛く悲しい出来事と向き合いながら、新たな出会いを求めて突き進む名曲です。

「閉ざされたドアの向こうに 新しい何かが待っていて きっときっとって 僕を動かしてる-(作詞:桜井和寿)」

「憂鬱な恋に 胸が痛んで 愛されたいと泣いていたんだろう」-(作詞:桜井和寿)

少しほろ苦くて、胸が温まる本の旅へ、今一度出かけてみませんか。

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