みをつくし料理帖シリーズ『八朔の雪』高田郁【天涯孤独の少女、一流の女料理人を目指す】

みをつくし料理帖シリーズ『八朔の雪』高田郁【天涯孤独の少女、一流の女料理人を目指す】

江戸が舞台で、女料理人・澪(みお)が主人公の「お仕事小説」。

当時は中々世間から認めてもらえなかった女性料理人の活躍と成長やヨダレが垂れてしまうほどおいしそうな料理が見どころです。

歴史のことがよくわからなくても楽しめます。

デトックス効果があり、読めば読むほど心のトゲをそぎ落とし、穏やかな気持ちを取り戻すことができるのではないでしょうか。

誰かのために献身的に働く主人公を描いた「みおつくし料理帖シリーズ」は、何度も映像化され、多くの人から愛されています。

2012年 北川景子さんが主人公・澪役でドラマ化(テレビ朝日系列)
2017年 黒木華さんが澪を演じてドラマ化(NHK)
2020年秋 松本穂香さんが澪となり、実写映画公開予定

本記事では、「みをつくし料理帖シリーズ」第1作目にあたる『八朔の雪』をご紹介します。

あらすじ

神田明神下御台所町(かんだみょうじんしたおだいどころまち)で、上方(京都や大阪)料理を出す「つる家」の女料理人・澪。

幼少期、両親を水害で亡くし、天外孤独の身となったところを大阪の名店「天満一兆庵」の女将・芳(よし)に引き取られ奉公人の身となる。

奉公先での厳しい修行に耐え、料理人としての腕を磨いていったところ、再び不運に見舞われ、芳と2人で江戸へ渡る。

つる家の店主・種市に腕を見込まれ、料理番を任されるが、澪の育った上方の料理と江戸で好まれる料理の違いに戸惑う。

それでも、天性の味覚と負けん気で日々研鑽を積み、日夜創作料理に励みながら一流の料理人を目指す。

注意
以下、ネタバレ注意です。

みをつくし料理帖シリーズ『八朔の雪』の感想(ネタバレ)

江戸と上方料理の違い

白味噌を使って土手鍋にした深川牡蠣。

大坂で生まれ育った澪にとっては、当たり前の美味しい食べ方。

しかし、澪がいま暮らしている町は江戸である。

「せっかくの深川牡蠣を、こんな酷いことしやがって。食えたもんじゃねえ」

お代を投げつける音が響いて、男は乱暴に引き戸を開けるとそのまま出て行った。
今夜はこれで二人めだった。

洗い場や運び担当だった澪が、「つる家」の料理人となり、初めて振舞った料理は江戸の人には全く受け入れてもらえなかった。自分の作る料理に自信を無くす澪。

生まれ故郷である大坂とあまりに違う食文化に驚き、戸惑いながらも決して諦めず、時には周りの助言を借りながら江戸っ子好みの味を研究していく。

雲外蒼天と旭日昇天

「かわいそうだが、おまはんの人生には、艱難辛苦(かんなんしんく)が降り注ぐ。その苦労に耐えて精進を重ねたら、真っ青な空を拝むことができる」

幼少期、易者(占い師)の水原東西から雲外蒼天(うんがいそうてん)の相だと告げられた澪と、旭日昇天(きょくじつしょうてん)という珍しい相の持ち主であると言われた幼馴染の野江(あさひ太夫)。

旭日昇天は、強運の持ち主である反面、それと同じくらいの不運も呼んでしまうとか。

旭日昇天を羨ましがる澪と、雲外蒼天の方が良いと言う野江。

享和2年(1802年)、2人の暮らす大阪は水害に襲われる。

大洪水で両親を失い、「何があってもずっと一緒や」と約束した大切な親友・野江とも生き別れ、天涯孤独の身となった澪。

澪の作ったとろとろ茶わん蒸しをきっかけに、野江の安否を知ることに。

みをつくし料理帖シリーズを完読するとわかるのだが、雲外蒼天は正に澪を現した相!

シリーズでは本当にたくさんの苦労や試練が澪を待ち構えていて、何度も大きな壁にぶつかる。

苦しみもがきながらも、懸命に前へ進んでいく姿は美しい。

美味しそうな料理の数々

今の時代だからこそ、「男女雇用機会均等法」、「職業選択の自由」などと言われているが、そんな話が通じるわけもなく、男性の料理人しか許されなかった江戸時代。

女だからという理由だけで料理人として認めてもらえず、悔しい思いをすることもある。

それでも、心のこもった料理を振舞い、お客の胃袋を鷲づかみにした澪の腕前は確かだ。

丸顔に、鈴を張ったような双眸。ちょいと上を向いた丸い鼻。下がり気味の両の眉

その顔立ちから芳には叱り甲斐のない子と言われている澪。

作中の雰囲気でも、温和で謙虚な子であることが伺える。

しかし、料理のこととなると夢中になりすぎてしまう。

旬の食材を取り入れ、源斉先生のお墨付きをもらった滋養に良い食事。

失敗を繰り返し、試行錯誤を重ねながらたどり着いたレシピの数々。

手間暇かけて丁寧に作り上げる一品...。

読んでいてお腹が空かないわけがない!

想像しただけで思わずヨダレがたらり、お腹がぐぅ~っと鳴る。

澪の作った料理を食べてみたくなったら、巻末のレシピを参考に再現し、みをつくし料理帖の世界をより一層味わうこともできる。

あまりの美味しさに、つる家の店主同様

「こいつぁいけねぇ・・・・いけねぇよぅ」

と漏らしてしまうだろう。

これが大成功の証だ。

読んで幸せ、作って楽しく、食べて美味しい「みをつくし料理帖」。

心の赴くままにご堪能あれ。

まとめ

『八朔の雪』からはじまり、『天の梯』で終結する「みをつくし料理帖シリーズ」。

全部で10冊の長編ですが、1作目を読んで気に入った方は、そのボリュームを忘れて読み進めてしまうかと思います。

既に完結している作品なので、ハマってしまった場合は、続編を待たずとも一気読みができます。

まずはお試しで1冊!

その先の読む順番も載せておきますので、どうぞお楽しみください!

1.『八朔の雪』

2.『花散らしの雨』

3.『想い雲』

4.『今朝の春』

5.『小夜しぐれ』

6.『心星ひとつ』

7.『夏天の虹』

8.『残月』

9.『美雪晴れ』

10.『天の梯』

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