「こころの処方薬」と聞いて「処方薬だから悩みをかかえている人向けなのかな」という印象を受けるかもしれない。
悩みがある人にはもちろんだが、今悩みがない人にも「なるほど、考えたことがなかった」と「こころ」の発見がたくさん出てくる作品である。
こんな人におすすめ!
- 心理学に興味のある方
- 自分の内面をもっと磨きたい方
- こころのモヤモヤを抱えている方
- 人の気持ちに寄り添いたいと思っている方
あらすじ・内容紹介
日本のユング派心理学の第一人者であり、臨床心理学者の河合隼雄(1928-2007)が「『こころ』の処方薬」というテーマで『新刊ニュース』に連載していた文章をもとに、10章ほど新たに書き加えたものをまとめた1冊。
筆者自身の経験をもとに、こころの悩みを解決するための生きるヒントや普段は気づかないこころの知恵を与えてくれる読みごたえたっぷりの作品。
『こころの処方箋』の感想・特徴
一章ごとのにテーマが簡潔、いつでも読みやすい
この作品は55のテーマがあり、1テーマにつき4ページで書かれている。
最初から読まなくても目次で見て気になった言葉のページを開いて読むのもあり。
隙間時間に気軽に読めるのが特徴だ。
最初は順番に読み進めていたが、全て読み終わえた今では、自分に必要な言葉、目についた言葉を見つけてはページを飛ばしてランダムに読むという読み方をしている。
心理学・人の心について勉強したいけど、仕事・学業・主婦業などで忙しくて学べる機会がない人にも隙間時間で読み進めることができる入門書としてあてはまるであろう。
説得力があり自分の世界が広がる
この作品を読んで今まで気づかなかったことに気づかされることが多かった。
なぜなら、その章のテーマを理解してもらうために例をあげ、分かりやすく説明しているからである。
22 自立は依存によって裏付けられているの章では、自立と依存は正反対であると単純に言えることではなく、十分な依存があってこそ自立することができると説いている。
その事例として、知能が劣っているわけでもないのに、言葉が極端に遅れている幼稚園の子どもの相談を受けたことを挙げていた。
よく話を聞いてみると、その母親は、子どもに「自立」をさせることが大切だと思い、できる限り自分から離すようにして子どもを育てたとのことである。夜寝るときもできるだけ添い寝をしないようにして、一人で寝かせるようにすると、はじめのうちは泣いていたが、だんだん泣かなくなり、一人でさっと寝にゆくようになったので、親戚の人たちからも感心されていた、というのである。
このようなとき、その子の「自立」は見せかけだけのものである。親の強さに押されて、辛抱して一人で行動しているだけで、それは本来的な自立ではなく、そのために言葉の障害が生じてきている。このときは、そのことをよく説明して、母親が子どもの接近を許すと、今までの分を取り返すほど甘えてきて、それを経過するなかで、言葉も急激に進歩して、普通の子たちに追い付いてきたのである。
私もこの章を読むまでは自立と依存は反対のことだと思っていたが、この子どもが母親から離れていたことにより、逆に自立が妨げられていたという事例を読んで、親が子どもと距離を置くことで子どもに無理をさせていたことがよくなかったということがわかり、納得した。
この章を読んで自立と依存は共存して成り立つことを知ることができ考えが広がった。
このようにテーマに合った分かりやすい事例が書かれているので、理解しやすいと思う。
自分の好きな呪文を見つけられる
この作品は1章ごとにタイトルがついていて、そのタイトルが自分にとって好きな言葉になることもある。
私もつい、口に出したくなるような好きなタイトルがいくつか見つかった。
「臨床心理学などの専門家は人の心は分からないものであると確信を持って接している」という話が書かれている章のタイトルは、
人の心などわかるはずがない
どれだけその人のことを考えても、完璧に理解できることはまずない。
むしろ、わかったつもりでいるのは、その人のことをわかっていないことだと気づかされた。だから、どんなに親しい人にもわかった気でいないで、その人の内面をしっかり理解しようとする努力を忘れることがないよう、いつもこの言葉を頭に置いている。
カウンセリングの方による「自分で努力されて自分の力でよくなった方は終わってから感謝の言葉を言われるが、カウンセリングに大変苦労したと思う方には滅多に感謝の言葉を言われない」という事例から始まる以下の章。
強い者だけが感謝することができる
確かに、私の周りにも自分で努力されている人は礼儀正しく、「ありがとう」などの挨拶を省略されている方は見たことがない。
一方何もしないで周りに頼っている人は、助けてもらうのが当たり前で感謝の行動を示すところを見たことがないと気づいた。
私も何か達成したときに周りへの感謝の気持ちを忘れないようにし、今後「助けてもらうのが当たり前」という人に出会ったときはこの言葉を思い出して、無理にこころを消費せず、大人の対応をしこうと考えさせられた。
以上のように、本書から自分の生きる上で必要な「呪文」に出会うことができるだろう。
まとめ
この作品を読んで自分の考えになかった“こころ”についてたくさん学ぶことができた。
今、生きている上で参考にさせていただいてることもたくさんある。
自分の内面(こころ)を磨いたり、豊かにしてくれるヒントが散りばめられているのだ。
自分のこころに響いた言葉たちは、今後、自分はもちろん、大切な人たちへの助けとなる「処方薬」になるに違いない。
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