今回は僕の大好きな伊坂幸太郎さんの待ちに待った一年ぶりの最新作。
『フーガはユーガ』を紹介します!
この作品は11月8日に発売されたのですが、発売当日の朝なんかはもう居ても立っても居られない状態でした笑
神保町三省堂書店の開店と同時に購入したかった僕でしたが、あいにくその日は木曜日で、大学のゼミを朝9時から受講しなければなりませんでしたので開店同時購入の夢は諦めました涙
授業前に5回もお手洗いに行くほどお腹の体調がすぐれなかった僕は、授業中にも幾度となく◯意に襲われながらもなんとか100分間の授業を戦い抜きました。
そして三省堂へ直行。
書店に並んでるのを発見した時のあの感動たるや!
あのなんとも言えない幸せな瞬間を迎えるためだけに本屋に行くようなものだと僕は思っています。
前置きが大変長くなりましたが、以下、フーガはユーガのあらすじ、感想です!
目次
あらすじ 虐待のベテラン経験者
舞台はいつも通り仙台。
主人公は双子の常盤風我と優我。
物語は兄の優我視点で進行していく。
彼らの家はオンボロアパートで、家庭環境は最悪。
父親は頻繁に彼らに暴力を振るい怒鳴り散らすDV男。
母親は父親に言いなりで、痛めつけられている2人を庇うこともせず、ただ溜息をつくだけ。
だが、彼らにとってはそんな環境が当たり前で、テレビなどで出てくる優しい親なんかはファンタジーの世界だと思っている。
そんな彼らの感覚を表す印象的なセリフがあった。
親に手を振り上げられることもなく、怯えることなく、生活してきた人がいることは、ぴんと来ない。
「親に殴られたことはもちろん、軽く叩かれたこともない」とごく普通に話す同級生に、
何をつまらない嘘を吐くのだと聞き返しそうになったこともあった。
さらに、自分たちのことを”虐待のベテラン経験者“とも言っていて切ない状況であるのに強く生きる二人にエールを送りたくなった。
彼らがそんな風に振る舞えるのは二人だったから。
父親からの暴力の恐怖理不尽を一人ではなく二人で共有できているからこそ悲観することなく生きていられたのだと思った。
本作はそんな2人が織りなす不思議な物語。
フーガはユーガの感想(ネタバレ)
僕の弟は、僕よりも結構、元気です
ここで、双子の紹介。
弟の風我は口が悪く、運動が得意。
兄の優我は穏やかで、勉強が得意。
15歳までは、二人一組で一足の靴のような関係だった。
15歳からは、風我は高校に行かず働き始め、優我が高校進学したことでコインの裏表のような関係になった。
ある少年が公園で父親に叱られている時に、双子がその間に割って入ったシーンが二人の関係性をよく表していて印象的だった。
風我は挑発的な態度でその父親に当たり、優我はバランスを取るように穏やかな口調で言葉をかけた。
すると、少年が双子の顔を交互に見て、ふっと笑って一言。
何だか、天使と悪魔みたいだから。
よく言うでしょ。心の中の天使と悪魔。
少々喧嘩っ早い風我とその背中を追いかける優我の関係性をうまく表現しているなと思った。
優我が弟の紹介をする時に言う決まり文句も好きだ。
僕の弟は、僕よりも結構、元気です。
英語の例文で出てくるような日本語でくすっと笑ってしまった。
そんな双子の暇な時間の過ごし方が素敵だ。
暇な僕たちにとって一番、楽しい時間の過ごし方は、誰かを手伝うことだった
気性が荒そうに見えて、実はすごく優しい、このギャップに惹かれた。
彼らは休みを持て余すと、仙台駅の周辺をうろついて困っている人がいれば助けたり、悪さをする者がいたら警察を呼んだり。
暇つぶしでこういうことをしているのがとてもかっこいいと思った。
瞬間移動 × 誕生日
彼らは誕生日になると瞬間移動ができるようになる特異体質で小学生になってからその事実に気がつく。
瞬間移動といっても、2人の位置が2時間置きに入れ替わるだけ。
でも、父親のDVに晒される日々の中で瞬間移動の時にどんなことを試すのかを2人で計画する楽しみが彼ら双子の唯一の救いだった。
そもそも、なぜ2時間置きかと言うと、双子が2時間ずれて生まれてきたからだそうだ。
二時間ずれて生まれてきた双子が、二時間置きに、瞬間移動
とてもユニークな設定で伊坂ワールド全開で気持ちがいい。
双子はその能力をフル活用して様々な問題を解決し、人助けをする。
ヒーローっぽいかっちょいいこともする。
その詳細をここで書いてしまうわけにはいかないので、気なる方はぜひ書店に足を運んでもらいたい。
「リンス使ってるぜ」の広尾
伊坂作品の登場人物たちは皆だいたいがユニークで個が強い。
伊坂作品を読む醍醐味の一つはユニークな登場人物を楽しむことと言っても過言ではないだろう。
今作もいつも通りそういったキャラクターたちが読書体験を楽しませてくれた。
岩窟おばさん、ケーキ夫人、ワタボコリくん、「リンス使ってるぜ」の広尾智也などなど。
ちなみに、ワタボコリはもちろん本名ではない。
双子の小学時代の同級生で、いじめられっ子で”綿埃を食ったから”ワタボコリと呼ばれるようになったのだ。
「リンス使ってるぜ」の広尾は小学時代のカーストトップに君臨する坊ちゃんで、ワタボコリくんが一生懸命貯めたお金で買ったパソコンをふざけて壊してしまうような分かりやすいいじめっ子だ。
彼らがどんな風に双子に関わってくるのかは読んでからのお楽しみ(ワタボコリくんの活躍に期待)。
フーガ、後は頼んだ。
物語のクライマックスは双子の誕生日だ。
最期の瞬間移動のシーン、鳥肌が止まらなかった。
ワタボコリ、いいか、跳んでくるぞ
このラストシーンを読んだ人と今作について語り合いたい。
特に、双子の方と語り合いたい。
「金欠だから、、」と迷っているそこのあなた。
まずは、重い腰をあげて本屋へ出かけてみませんか?
フーガとユーガの人生を疑似体験する旅に出かけましょう。
主題歌:UVERworld/23ワード
UVERworldの『23ワード』
この小説に主題歌をつけるならと考えた時に、一番最初にこのメロディーが流れてきた。
Just going
負けんな同士
流れる闘志
本気だと認める男同士
お前が終わりゃ俺も半分死んだ気になる
無理より無謀 We are
自ら険しき冒す We are
終わりなき道 traveler We are
共に戦う Who we are
2人揃って1人前の風我優我にぴったりの歌詞だ。
この小説を読み終わったらぜひ聴いてみてほしい。
主題歌2:MISIA/君のそばにいるよ
こちらはおまけ。
MISIAの『君のそばにいるよ』
Anytime you need 君のそばにいるよ たとえこの手が離れても
Anytime I’m here そんな風に願った 君を信じてる 繋がってる
大人気漫画『鋼の錬金術師』の実写版映画の主題歌だった曲だ。
エドワード兄弟が今作の常盤兄弟に重なって見えたので選曲してみた。
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