【痛くて哀しくてそれでも目が逸らせない青春の物語】『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹(🎵奥田美和子『ぼくが生きていたこと』)

新聞記事より抜粋

十月四日早朝、鳥取県堺港市、蜷山の中腹で少女のバラバラ遺体が発見された。身元は市内に住む中学二年生、海野藻屑さん(十三)と判明した。藻屑さんは前日の夜から行方がわからなくなっていた。発見したのは同じ中学に通う友人、A子さん(十三)で、警察では犯人、犯行動機を調べるとともに、A子さんが遺体発見現場である蜷山に行った理由についても詳しく聞いている……。

物語は、一ページ目から衝撃の文章と共に始まる。

これから始まるのは一人の少女の死を巡る物語。痛くて、哀しくて、どこか不思議な物語。

砂糖菓子の弾丸を撃ち続ける少女の物語。

あらすじ

山田なぎさは山を登っている。兄と共に「見つけたくないもの」を探すために山を登っている――。

中学生の山田なぎさは、お金と言う“実弾”にしか興味がないどこか冷めた少女。そして、彼女は兄への歪んだ愛のようなものを抱いてしまっていた。

引きこもりの兄を生涯養うために中学を卒業したら自衛官になって“実弾”を撃つのだ、と決めていた。

そんなとき、都会から転校生がやってくる。海野藻屑と言う少女だ。

海野藻屑は転校早々「ぼくは人魚なんだ」など、不思議な言動を繰り返し、なぎさに何かと絡み始めて――?

“実弾”至上主義、クールな少女、山田なぎさ

物語は、あたし――山田なぎさの一人称で語られる。

クールな反面引きこもりの兄を激しく愛している彼女は、「おにいちゃんのことは、あたしが一生、面倒見るから」と本気で口にする。それしか頭にないように思える。

そんな彼女は、都会からやってきた海野藻屑によって少しずつ変わり始めていく。

お金という“実弾”以外に少しずつ目を向けていく。

自称人魚、おかしな挙動を繰り返す浮世離れした美少女、海野藻屑

「ぼくはですね」

藻屑が断固とした口調で言った。

「ぼくはですね、人魚なんです。」

転校初日、檀上でこう言い放った美しい少女・海野藻屑は初日からクラスメイトの注目の的だった。

しかしなぎさは見てしまうのだった。藻屑が転んだ拍子にスカートの内側にある無数の痣を。

藻屑は父親から日夜、暴力を受けていた。

しかし藻屑はこう言っているのだ。

「ぼく、おとうさんのこと、すごく好きなんだ」

「好きって絶望だよね」

彼女は哀しい程に父親の愛に飢えていて、しかし愛は与えられないと言う事に気付いていないのか、見ない振りをしているのか。

不思議な言動の数々に散りばめられた哀しみや優しさが彼女の魅力でもある。

例えば、父親を十年前の嵐の夜に亡くしたなぎさに、藻屑は不思議な言葉で励ます。

「その人、海の底で会ったよ。幸せそうだった。金銀財宝に、美女の人魚。地上のことなんて忘れて楽しくやってたよ。海で死んだ漁師さんはみんなそう、幸せだよ。よかったね」

なんて不器用で優しい言葉なんだろう。

不思議な優しさをたたえた少女は、なぎさと触れあい、絆を深めていく。

惹かれあう二人の少女

物語は最初から最後まで不思議な気配に満ち満ちている。

なぎさは、藻屑の嘘に苛つきながらも、彼女を何度も「友達だ」と感じている。

藻屑は何度もなぎさの背中にミネラルウォーターのペットボトルを投げつけて呼び止める。

そして、物語は後半に進むにつれて、彼女が常に足を引きずってる理由、ペットボトルを投げる理由、その嘘に隠された哀しみが少しずつ少しずつ紐解かれていく。

砂糖菓子の弾丸とはなんなのだろう?海野藻屑が撃ち続ける、甘さにまみれたその弾丸とはどんな意味がこめられているのだろう?

ぼんやりとしていた輪郭がくっきりしていくにつれて、なぎさはもう引き返せない程、藻屑に惹かれているのだった。

この曲はぜひ読み終わってから聴いて欲しい

彼女達の結末がどうなったのかは、ぜひ実際に読んでみてほしい。

そして海野藻屑が歌っているかのようなこの曲をぜひ聴いてほしい。

奥田美和子『ぼくが生きていたこと』

最後まで読んでいただき大変嬉しく思います。こちらもよろしくお願いいたします。

◯この他の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の主題歌はこちら

◯本の主題歌を決める読書会「BGMeeting」

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