佐野洋子による名作絵本『100万回生きたねこ』(講談社)。『100万分の1回のねこ』(講談社)は、同作のトリビュート短篇集です。大物小説家たちが描く“100万回生きたねこ”は、一体どんな物語なのでしょうか?
地球上の動物ちゃんとUMAたちをこよなく愛する私。もちろん物語の中の動物ちゃんたちも例外ではありません。
中でも私のお気に入りは、佐野洋子の絵本『100万回生きたねこ』です。
100万回もしんで、100万回も生きた、りっぱなとらねこの物語。
とらねこは最終的に美しい白いねこと出会い、100万回の人生に幕を閉じます。
同作が大好きな私はある日『100万分の1回のねこ』という本を見つけ、さっそく読んでみることに。
トリビュート短篇集『100万分の1回のねこ』は、13人の作家や挿絵画家が作家・佐野洋子と絵本『100万回生きたねこ』へ敬意を込めて書き上げた作品です。
まず私がいいなと思ったのは、江國香織の「生きる気まんまんだった女の子の話」という物語でした。
この話の主人公は、“とらねこ”のように100万回生きたいと願う女の子。
彼女は優しい叔父や叔母、可愛い猫と一緒に育ちますが、何度も生きようと「誰も好きにならない」と決めてしまいます。
そのために気にくわない男とまで結婚するのですが、結局彼女はとらねこと同じ結末を辿ることに。
ねこちゃんがお話のメインとして登場するわけではありませんが、私が大好きな“とらねこ”の面影を強く感じてとても心に残った作品です。
また「これぞ・ねこ」感に心がトキメクのは、児童文学作家である岩瀬成子の「竹」。
この物語では竹(たけ)と名付けられたとらねこが、家を出ていってしまいます。
「わたし」は竹を探して、やたらとねこが集まったおばあさんのお家へ。
子どもの頃、近所に“ねこ屋敷”と呼ばれる家ってありませんでした? おばあさんの家はまさにそんな感じ。
「わたし」はそこで竹を見つけるのですが、しかしおばあさんは竹に“八兵衛ちゃん”と語りかけます。
絶対に竹なのに、一生懸命話しかけても何の反応もしてくれない竹。
この摩訶不思議な感じ、いかにもねこちゃん!!
しかも後日帰ってきた竹は、家で「ずっとここにいましたけど」と素知らぬ顔。
「わたし」は
あの八兵衛は、八兵衛になっている竹じゃないのかなと考える。そして、うちにいるのは竹になっている八兵衛だったりして。そういうこと、あるかなあ。あるかもしれないと思う。
とも感じます。
そうそう、あるある。ねこちゃんってそういう不思議なところある。
飄々とした顔で人間ごときを振り回す姿は、最高としか言いようがありません。
人間に振り回されるのはごめんですが、ねこちゃんにならいくらでも振り回されていたいものです…。
同作には他にも、素晴らしい作品がたくさん。
あなたにとっての“白いねこ”に想いを馳せながら、ぜひお気に入りの物語を探してみては?
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