【自分軸で生きる】現代の私たちに求められる生き方とは?漫画版『君たちはどう生きるか?』吉野源三郎・羽賀翔一

空前の大ヒットとなった、漫画版『君たちはどう生きるか?』
本漫画は、1937年に出版された吉野源一郎氏の歴史的名著『君たちはどう生きるか?』をもっと多くの人に読んでもらおうとして作られた。
ぎゅっとエッセンスが詰まった読みやすい漫画は、200万部を超えるベストセラー本となった。時代を超えた名著として、NHKの『クローズアップ現代+』でとりあげられたり、池上彰氏が『100分de名著』の別冊でこの本を紹介している。

あらすじ

本の主人公は、15歳の中学二年生のコペル君こと、本田潤一。父は3年前に他界し、母と二人暮らしをしている。そこに、親戚のおじさんが引っ越ししてきたところから物語は始まる。
物語の舞台は、コペル君の中学校。学校では、友人関係を中心として、いじめや貧困、友情など多くの問題が展開される場所となっている。
コペル君は、15歳にしては思慮深く、日々の出来事を自分の頭であれこれ考えて生きている。本作品は、コペル君の等身大での日々の葛藤を描いた心の成長の物語である。

生み出してゆく人

本書の中で、私に一番響いたメッセージを紹介したい。

(叔父さんのコペル君へのノートより)
君の生活というものは、消費専門家の生活といっていいね。
(中略)
自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出している人と、何も生産しないで、ただ消費ばかりしている人間と、どっちが立派な人間か、どっちが大切な人間か、―――こう尋ねてみたら、それは問題にならないじゃあないか。
生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することはできやしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。
これは、何も、食物とか衣服とかいう品物ばかりのことではない。学問の世界だって、芸術の世界だって、生み出してゆく人は、それを受け取る人々より、はるかに肝心な人なんだ。
だから、君は、生産する人と消費する人という、この区別の一点を、今後、決して見落とさないようにしてゆきたまえ。

私はこの言葉にハッとした。私は、現在大学院生なのだが、私の大学院生としての生活は、言うならば、消費専門家の生活かもしれないと思ったからだ。日々、先行研究(学術論文の執筆において、同じ研究領域で、自分の研究よりも先んじて発表された研究)にあたって、何が明らかになっていて、何が解明されていないかを調べている。そして、そこから新たな知見を積み上げるのが、研究者の為すべきことだが、現段階で自分はそこに至っておらず、言ってみれば、生産性がゼロなのだ。

しかし、叔父さんは別の箇所でコペル君に語る。
コペル君は、「自分は新しい発見をした!」と叔父さんにその発見について話すが、叔父さんは、その発見はすでになされていることであって、「新しい価値を生み出すには、今までの先人たちからの知見を学ぶことが大事なんだよ」と説く。

研究をしている身からすると、この言葉は今の自分を肯定してくれているようで嬉しい。先人が命をかけて築き上げてきてくれた世界(知見)を知るということ自体は、膨大な時間がかかる一方、とても意義のあることなのだ。
しかし、そこで満足してしまってはいけない。それは、繰り返しになるが、他人が作ったものを楽しんでいるだけの消費者で完結してしまっているからだ。そこから、新しいモノ、コトを生み出すことこそが、人間らしい生き方であり、「自分」が生まれてきた価値を残すことになる

「自分軸で生きる」ということ

本書は、タイトルにもなっている『君たちはどう生きるか』という問いに具体的には答えず、読者に問いかける形で終わっている。おそらく、「〇〇という生き方」がベスト!という正解なんてないのだ。
ただ一つ言えることは、「自分で自分を決定する力を持っている。だから、誤りから立ち直ることもできる」という叔父さんからのコペル君への手紙からも読み取れるように、自分の人生を自分軸で生きていくこと、つまり、自らの体験を通し、自ら感じ考えることで生きていくべきだ、ということを伝えているのではないだろうか。

なぜ、本書が多くの人の心を捉えるのか?

先が見えないこの時代、求められる生き方は何か。
私たちは、何かわからないことがあると、ネットで調べたり、人の意見を聞いたり、自分軸で考えるということがなくなってしまっているように思う。答えが溢れるこの世の中で、他人目線での正解で生きることが、なぜか当たり前になってしまっているのだ。

一見、簡単に「答え」が手に入る世の中だからこそ、自分軸で考え体験することが大事というメッセージが多くの人の心を捉えるのかもしれない。現在の私たちは便利な世界に生きている。しかし、自分が体験したことを「考え」「感じる」ことに、一番の学びがある。経験を1つひとつ積み上げ、よく考え学んでいくことが、より良い生き方に繋がるのだろう。

最後に

この本には、現代の私たちの生き方に疑問を投げかけるいくつかのメッセージがある。読む人にとって、響くところは異なるものの、何かしら腑に落ちるメッセージがあるだろう。1~2時間ほどでさらっと読める本なので、気になった人は、ぜひ手に取ってみてほしい。

著者情報

原作者:吉野源三郎(よしのげんざぶろう)
[1899~1981]ジャーナリスト。東京の生まれ。岩波書店に勤務し、岩波新書や雑誌「世界」を創刊。護憲・平和運動に尽力したことでも知られる。著作に「君たちはどう生きるか」など。

漫画家:羽賀翔一(はが しょういち)
1986年生まれ茨城県つくば市出身。学習院大学卒。2010年『インチキ君』で第27回MANGA OPEN奨励賞受賞。2011年に『ケシゴムライフ』をモーニングで短期集中連載し、2014年には単行本発売。
大ヒットを記録した『嫌われる勇気』の挿絵をはじめ、沖縄出身バンド7!!(セブンウップス)のアルバムジャケットなど多方面でも活躍。近刊に『昼間のパパは光ってる』(徳間書店)。

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