「イヤミスの女王」こと、湊かなえさんが描く、ミステリーじゃない本作品。
読んだ後には、心がほっこり癒される、オトナ女子が繰り広げる7つの連作短編集を紹介します。
目次
あらすじ・内容紹介
本作品は、1つずつの山を題材にしながら、その山に登るそれぞれの主人公の物語がリレー形式で描かれる構成となっています。
山に登る主人公は、20~40代のいわゆるオトナ女子と言われる年代の女性たち。
彼女たちは、結婚や仕事、日常生活や過去、また、姉妹や友人や恋人との関係などに悩みを持っていて、それらを抱えながら山に登ります。
山に登るからといって、彼女たちが持つ悩みが全て解決できるわけではありません。
しかし、山に登るという課程を通して、心が癒され、自分の気持ちを確認し、悩みを抱えながらも前に進んでいこうとします。
そんな自分探しの物語です。
湊かなえさんの巧みな心情描写に、「あぁ、こういう気持ちわかる、わかる」と、特にオトナ女子の年代の女性なら頷いてしまうことでしょう。
私の選択は、間違っていたのですか。真面目に、正直に、懸命に生きてきたのに…。誰にも言えない苦い思いを抱いて、女たちは、一歩一歩、頂きを目指す。新しい景色が、小さな答えをくれる。感動の連作長篇。
内容(「BOOK」データベースより)
山女日記の感想(ネタバレ)
雨が降っても一緒にいたいと思える人
私が好きなフレーズ、「利尻山」の章での、姉妹の会話を紹介します。
「あのさ、詳しい事情はよく解んないけど、七花をうちに連れて帰ってくるのもいいんじゃない? みんなで楽しく暮らそうよ」
「最悪でも、そういう選択肢があることを頭に入れとく」
「酷いな。演技の悪い雨降り一家かもしれないけど、それほど悪いようにはならないと思うよ。わたしたちほど虹を見ている家族もそうそうないはずだから」
「晴れた日は誰と一緒でも楽しいんだよね。でも・・・・・・」
言葉を継ぐ必要はない。
雨が降っても一緒にいたいと思える人であることを、誇りに思う。
絶好調じゃないとき、上手くいかないときでも、一緒にいることができる人。
心許せる人。ありのままの自分でいれる人。
湊さんは、そんな人が、気づいていないけど、すごく大事なんだよ、と教えてくれます。
山に登ったような清々しい読後感
私たちの日常生活だって、物語の主人公と同じように山あり谷あり。
そして、周りが見えなくなってしまうことだってあります。
主人公の機微が巧みに表現されていて、人間味に溢れた主人公たちに自分を重ねて、そっと応援したくなりました。
本作品を読むことで、まるで山に登ったかのような、清々しく、心が癒される読後感があります。
また、本書は短編集でありながら、別の章で出てきた主人公が、他の章で脇役として登場していて、それらが一冊の本として和やかに統合されています。
そのようにそれぞれの短編集に繋がりを持たせることで、「一見幸せそうに見えるあの人も、実は心に抱えているものがあるんだよ」、というメッセージを伝えています。
実際に山登りが好きな湊かなえさん、インタビュー記事
いつだったか忘れてしまいましたが、湊さんは山登りが好きで、彼女が実際に山登りをするというテレビ番組を見たことがありました。
そこで、湊さんが、「山で食べるものはなんだって最高のご馳走!」とお話されながら、彼女が良く好んで食べる山登りおやつが紹介されていました。
本書の中でも、主人公たちが、湊さんが好きな山登りおやつを食べている場面があります。
また、湊かなえさんが、好きな山登りと本書について語ったインタビュー記事があるので、ぜひ、ご覧になってください。
工藤夕貴主演でドラマ化された『山女日記』
NHK BSプレミアムの「プレミアムドラマ」枠にて2016年には7回にわたり、『山女日記〜女たちは頂を目指して〜』と題して、また、2017年には続編として2回にわたり、『山女日記〜山フェスに行こう/アルプスの女王〜』が放送されました。
『実践!にっぽん百名山』でナビゲーターを務め、実際に登山経験が豊富な工藤夕貴が主演を務めました。
残念ながら、DVD等は発売されていないようです。
主題歌:Mr.Children/ラララ
このエッセイ本に、主題歌を与えるとすれば、私は、Mr.Childrenのラララを贈りたいなと思いました。
選曲でしばらく考えましたが、ポイントとしては、①山登りの爽やかなイメージに繋がるように曲調が明るいこと、②普段の何気ない幸せに気づくというメッセージがあることの2つを基準に選び、この選曲としました。
野外フェスap bank fesで歌われた、爽やかさいっぱいのラララをどうぞお聴きください。
無くてはならぬものなど
あんまり見当たらないけど
愛する人も同じように
今日も元気で暮らしてる1人じゃない喜び
なにはなくとも それで良しとしようか
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