あらすじ・内容紹介
江國香織による、大人も楽しめる童話のような作品で、山本容子の銅版画が挿絵として入っています。
主人公は、「野生」の雪だるまである雪子ちゃん。
人間が作った雪だるまとは違い、豪雪の日に空から降ってきた雪だるまです。
手足もあり、人間と言葉を交わしもします。
雪深い村に住み、隣人の百合子さんや近所の子供たちと交流しながら暮らす好奇心に満ちた日々。
そして冬が終わり、夏の「休眠」を越えて目覚めるまでが描かれています。
冬を楽しむヒントに満ちた本です!
雪だるまの雪子ちゃんの感想(ネタバレ)
雪子ちゃんの可愛さに魅了されます!
挿絵のつぶらな瞳を目にする前から、はじめの方の文章を読んだだけでも魅力的なのです。
その無邪気さは、読み手を童心に帰らせてくれます。
ただ可愛いだけではありません。野生の生き物としての誇りを持ち、毅然としているのです。
好奇心の旺盛さや行動力、寒さや曇天・吹雪を好む雪だるま独特の感性が光る物語だと思いました。
なんと雪子ちゃんは学校へも行きます(気が向いた時だけ)。
小学校の先生も子供たちも雪子ちゃんを受け入れ、一緒に勉強したり雪合戦をしたりするのでした。
ひらがなを読めるようになった雪子ちゃんは本を読みます。
画集などが好きで、本を閉じたときの「ぱたん」という音が好きという感性が素敵です。
物語の舞台となる雪深い山村は静かなようでいて、耳をすませばいろいろな音が聞こえます。
雪を踏む足音、鳥の鳴き声、木の枝から雪が落ちる音、ラジオから流れる人の声や音楽。
この物語には冬の景色がたくさん出てくるわけですが、中でも心に残ったのは、凍りついた滝の描写です。
闇の中に白く浮かび上がって見えるそれは、滝というより切り立った崖のようです。雪と氷でできたお城のようでもありますし、広がったすそのほうは、まっしろなドレスのようでもありました。しぶきが凍っているのでした。
そこで雪子ちゃんは「深遠な気持ち」を体感します。
いろいろな経験をしながら無邪気に暮らす場面の合間にドキッとすることも……。
わたしは雪だるまだから、いつかはとけるわけだけど、でもそれはきょうじゃないのね。
雪子ちゃんは人間と同じ限りある命を生きているのです。
それは物語半ばで明かされ、この物語は永遠に幸福なおとぎ話ではなく、雪子ちゃんの物語は人生の比喩なのだと思いました。
素朴な日々のことを面白がり、無邪気に感動する心を大切にしたいです。
そのヒントが、この物語には満ちていると思いました。
主題歌:Enya/Wild Child
Enya「Wild Child」
よく響く歌声が神秘的で、広い雪原を想起させます。
歌詞も、自然に寄り添い感じるままに生きる大切さを伝えていて、それはまさに雪子ちゃんの愉しい毎日のようなのです。
ちなみに、江國香織と辻仁成の合作小説『冷静と情熱のあいだ』の映画版でEnyaの楽曲が使われています。
江國香織の作品はEnyaの音楽と相性が良い気がするので、私はよく読書のBGMに聴いています????
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雪子ちゃん、記事読むだけでもかわいさ伝わってきてすでに胸キュンです。しかもかわいいだけじゃないっていうのがまた。。
エンヤの曲も雪が降ってくるみたいで冬にぴったりですね~。めちゃくちゃ読みたくなりました!!!読みます!!!
つ さん、コメントありがとうございます。
可愛さが伝わって嬉しいです!
ぜひ読んで、さらに胸キュンしてください!!
雪子ちゃん、本を閉じたときの「ぱたん」という音が好きなんですね。
misakiさんの書評を読んだ段階ですでに愛おしいです。
多分この気持ちを「萌え」というのでしょう笑
ひかるさん、コメントありがとうございます。
「ぱたん」、良いですよね…!
私もいろんな本で「ぱたん」やってみました!
萌え、ですね笑