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『常設展示室』あらすじと感想【アート小説の第一人者が人生のきらめきを描き出す極上の短編集!】

『常設展示室』あらすじと感想【アート小説の第一人者が人生のきらめきを描き出す極上の短編集!】

今回は2018年末に刊行された原田マハさんの最新短編集『常設展示室』を紹介します。

ここ数年、美術展ブームが来ているとメディアでも取り上げられています。

現在、上野の森美術館で開催している「フェルメール展」は公開2か月弱で来場者30万人を突破したそうです。

私も先日、東京都美術館で開催されている「ムンク展」に行ってきました。

開催から日も経ち、もうじき終了だという展示会にも関わらず前売り券は売り切れで当日券も朝一番で行って20分待ち。

ブームが来ているということを肌で感じました。

私自身は今まで美術展に興味を持っていたわけではありません。

進んで行く気持ちなど今まで全くありませんでした。

実際、今回の「ムンク展」が初めて自分でお金を払って入った美術展です。

そんな私が最近、どうしても美術展というものに触れたくて仕方がない気持ちになってしまっていて……。

この気持ちの変化のきっかけは今回紹介する原田マハさんの『常設展示室』を読んだからです。

あらすじ・内容紹介

絵をこよなく愛する女性の物語が6編綴られている短編小説集です。

それぞれの短編に登場する女性は人生の岐路に立ち、そこで運命的な一枚の絵との出会いがあります。

短編集のタイトルはその短編に登場する人々の運命を変える一枚の絵のタイトルです。

美術を基調として彩られている物語なので全体として落ち着いた雰囲気でしっとりとした味わいがあります。

単なる雰囲気だけの短編集ではなくて、それぞれに登場する人々の人生の物語なので、嬉しさも悲しさもあり、深みがあります。

ちなみに著者の原田マハさんは美術館での勤務経験もある作家さんです。

著書にも『楽園のカンヴァス』(「山本周五郎賞」「R-40本屋さん大賞」受賞)、『暗幕のゲルニカ』(「R‐40本屋さん大賞」受賞)と評価の高いアート小説を多く執筆しています。

アート小説の第一人者という声が上がるのも納得です。

そんな原田マハさんの最新短編集が今回紹介する『常設展示室』です。

注意
ここからネタバレ注意です。

常設展示室の感想(ネタバレ)

運命を変える一枚の絵の描写

一枚の絵画に心を掴まれた人々の描写が迫真です。

冒頭に書きましたが、私は美術に興味がありませんでした。

そんな私が絵画を見た人々の描写を見て、美術に触れたくなるほどに、登場人物に感情移入させられて、物語に引き込まれます。

例えばこれは、

気持ちよく開け放たれた窓である。そこからは、デルフトの街並みが広々と眺められた。

運河と城壁に囲まれた街、デルフトに朝が訪れた。夜のあいだに雨が通り過ぎたのか、少し湿り気を帯びた空気が感じられる。川のほとりの人たちは、きのうと同じ朝の訪れを喜び合いながら、やがて到着する舟を待っているのだろうか。

雲は丸々と太り、空を悠々と行進している。遠くの教会を一条の光が照らし出す。

なづきは、その窓辺に――フェルメールの描いた絵、〈デルフトの眺望〉という名の窓の前に佇んで、飽かず眺めた。画家が作り得た奇跡のような風景を。

短編「デルフトの眺望」からの引用です。〈デルフトの眺望〉はカバー絵の絵画です。

勿論前後の物語があるからこそですが、この描写を読んだ時、「なづき」が〈デルフトの眺望〉を見て、描かれた風景を奇跡と言ってしまうほど、感情が揺れている様子が伝わってきました。

普段の生活の中で、私は絵でなくても誰かが愛して止まないものを熱弁する姿を見るのは好きですし、興奮が伝染するように同じ気持ちになることが多いです。

運命の絵画に出会って作中の人物の想いの高鳴りも、迫真の描写で、同じように興奮しました。

胸が一杯になる物語性

私は特にこの短編集の中で「デルフトの眺望」と「道」が好きです。

読み終わって胸が一杯になってしまいました。

「デルフトの眺望」の時間差で届くポストカードのくだり。

悲しい……。涙腺を刺激されます。

「道」も兄と妹の繋がり方が悲しくて、読みながら「あー」と唸ってしまいました。

でも悲しさで終わりではありません。

悲しさの先にその人が顔を上げていくような予感があるので読後、嫌な気持ちにはなりません。

私は悲しい思い出も、段々と懐かしい思い出に変わっていくであろうことを想像しています。

読み終わった後の余韻

この登場人物達にとっての絵画の存在とは何なのでしょうか。

例えば、私は昔聴いていた音楽がふと耳に入ってきた時、当時の気持ちが鮮やかに蘇る時があります。

他にも、引っ越しの時、本棚から書籍を段ボールに詰めている時、本の表紙を見て読んでいた時の気持ちを思い出す時があります。

大好きなものが記憶のスイッチになっているようです。

小説に登場する女性達はきっと運命を変える一枚の絵画が私にとっての思い出の本や音楽という存在なのだろうと思います。記憶のスイッチというか付箋というか。

読後、そんな風に余韻に浸りながら考えていたら、登場人物の絵画に対する熱が移ってきたかのように美術展への興味が湧いてきました。

この小説も読みながらスマホで絵を検索しながら読んで楽しく読めたので、知っている絵画の実物に触れてみたくなった気持ちもあります。

それで冒頭に書きました「ムンク展」に行って「ムンクの叫び」を観てきました。

詳細は省きますが、本当に楽しめて、それはこの小説を読んだからとも言えます。

原田マハさんの『常設展示会』、出会えてよかったと改めて思い、物語の面白さ、私に与えた影響も含めて、忘れられない一冊になりました。

主題歌:宇多田ヒカル/道

宇多田ヒカル『道』

どんな道を歩んでも、心の中にある大切な存在はいなくなることはないという歌詞で、静かなところから盛り上がっていくような曲調が小説にぴったりに思えて選びました。

黒い波の向こうに朝の気配がする

消えない星が私の胸に輝き出す

悲しい歌もいつか懐かしい歌になる

見えない傷が私の魂彩る

(歌詞:宇多田ヒカル)

上記した曲のはじまりの歌詞、まさに人生の岐路を越えていくこの小説で生きている人々のようです。

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