「読書会をもっと身近に」
8/18までクラウドファンディング実施中!

『宝島』真藤順丈【祝・直木賞受賞!史上最高の沖縄叙事詩】

この本の評価
読みやすさ
(4.0)
面白さ
(5.0)
考えさせられる度
(4.5)
装丁の美しさ
(4.5)
感動度
(5.0)
総合評価
(5.0)

壁一面、無数に空いた穴
それが銃痕であることを教えられたのは、ある年の12月、沖縄を訪れたときのことでした。

平和祈念公園。そこで名前も知らない子供たちが、物言わぬ死体となって重なり合っているのを見ました。

アップで映し出された子供たちの顔写真が、一枚一枚丁寧に壁に貼り付けられているのも。

今回ご紹介するのは、「宝島」。

同タイトルのスティーブンソンの小説で出てくるような、お宝はありません。

沖縄という地で行われた、血と革命の歴史です。

戦果アギヤーたちの壮大な叙事詩をご覧ください。

大人はもちろんのこと、学生さんもぜひ一度手に取って考えていただきたくなるような、メッセージ性の強い、大傑作です。

祝・直木賞受賞

去る1月16日芥川賞・直木賞同賞の発表が決定しました。

厳正な選考の結果、

  • 芥川賞 上田岳弘氏「ニムロッド
  • 同賞 町屋良平氏「1R1分34秒
  • 直木賞 真藤順丈氏「宝島
三作が受賞しました。お三方の受賞を心からお喜び申し上げます

あらすじ

時は戦後。沖縄が、アメリカの統治下に置かれていた1952年です。

島一番の戦果アギヤーであった「オンちゃん」を中心に、グスクレイヤマコの三人は、深い絆で結ばれていました。

しかし、嘉手納基地の強奪未遂事件がきっかけで、オンちゃんは消息不明になってしまいます。

三人は彼の姿を探しながらも、胸に思いを秘めて、それぞれの人生を歩みます。

アメリカ兵日本人に理不尽な暴力を受けながらも、グスクは警官に、レイは兄のオンちゃんと同じく消息不明に、ヤマコは教師になりました。

そこに孤児のウタも加わって、四人は未だ消息のつかないオンちゃんに、思いを馳せます。

沖縄帰還」を求めるデモが行われる中、差出人の分からない「戦果」が届きます。それは大量の物資でした。

同時に麻薬の存在と、この地にVXガスが秘密裏に持ち込まれたということを、人づてに耳にします。

こんなことをするのは一人しかいないと確信したグスクは、再び戦果アギヤーとして、沖縄人に戻って闘うことを決意します。

「戦果アギヤー」とは?

戦果アギヤーとは、アメリカ統治下時代の沖縄県で発生した略奪行為のことです。

当時、アメリカ軍の基地に忍び込んで、物資などを盗んで貧しい人に分け与えたりする人々がいました。沖縄の方言で、戦果をあげる者という意味です。

彼らはあるときは反乱分子であり、あるときは義賊でもありました。のちに組織化し、暴力団となって、沖縄を統治することになります。

注意
以下、ネタバレ注意です。

宝島の感想(ネタバレ)

沖縄の「負の遺産」と島の人々の「死生観」

アメリカ兵に存在を踏みにじられても、本土の人々に行政・立法・司法上の権限をアメリカに明け渡されても、魂は穢されない。

島の人々には、誇り高き精神があります。

生者の魂は、ニライカナイ(楽土)からやってきて母親の胎内へ戻り、命を終えたあとはまたニライカナイへ戻るということ。

楽土には、良いものも悪いものも渡ってくるということを。

だからここでおれたちが全滅したところで、戦果アギヤーは何度でもよみがえる。
魂の中の英雄が転生をくりかえす。アメリカーも日本人もそのことをいずれ思い知るだろう。この島の人たちだけが正真正銘の英雄を知って愛を与えるものになれるのさ。-p513

戦争は「未だ終わっていない」

沖縄に基地がある限り、戦争はまだ終わっていません

戦果アギヤーたちの存在は、長いこと隠され続けてきました。

そして、アメリカ兵をはじめ、日本人たちが犯した罪についても、未だに伏せられている事実があります。

たしかにそう言ったのさ。ふたりのダニー岸

ふたりともダニー岸。善き善人をよそおったこの男も、悪趣味な嗜虐にふける男もどちらもダニー岸。アメリカの利益とみずからの存在意義を同化させて、この沖縄の現実を本土から遠ざけることに、対岸の火事のままに保つことに血道を上げるすべての日本人が、”ダニー岸”だったのさ。-p478

私たちには知る権利があります。

祖先がどんな行いをしてきたのか。そして、平和になるためにどれほどの犠牲が伴ったのか。

新たな時代を刻もうとしている今だからこそ、目を背けずに知るべきなのです。

アメリカーが、日本人が、この島でどんなに愚かなことをしてきたか、ふたつの国が奪っていった故郷の宝が何なのかを叫んだ。ここから返還の日までは、新しい時代を迎えるまでは、どれだけの人を愛せるかの勝負だ。-p513

主題歌:THE BOOM/島唄

THE BOOM(ザ・ブーム)の島唄です。2014年に解散してしまいました。

地元の情報をまとめたサイトに、この曲の構想について気になることが書かれていたので、記事を一部抜粋します。

戦争で先立たれた妻の死体を畑に埋めて、「今も、そして僕の命が土に還ってもずっと一緒だよ」という歌なんですが、なぜそんな歌詞が出てきたのかもわからない。でもとにかく、沖縄を訪れたことで生まれた曲なんです。

それで、「この島には何かあるな」と思って通うことになるんです。

島唄よ 風にのり 鳥と共に 海を渡れ
(島唄よ、風に乗せて、死者の魂と共に海を渡り、遥か遠い東の海の彼方にある神界 “ニライカナイ” に戻って行きなさい。)
島唄よ 風にのり 届けておくれ わたしの涙
(島唄よ、風に乗せて、沖縄の悲しみを本土に届けてほしい。)

たくさんの民間人が犠牲となって倒れていったこと。人々の悲しみが、島中に広がったこと。

初夏になっても、米軍の攻撃が続いたこと。戦争で命を落とした方たちへの鎮魂歌として、この曲を贈ります。

この記事を読んだあなたにおすすめ!

町屋良平「1R1分34秒」新時代の青春小説を多数執筆する著者の、ボクシングの予備知識が全くなくても楽しめる芥川賞受賞作です。

『1R1分34秒』町屋良平【芥川賞受賞作。ハードルを倒しながら進むということ】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です