『カラフル』森絵都【 奇妙な天使にそそのかされた、「僕」のチャレンジ】

この本の評価
読みやすさ
(4.5)
面白さ
(4.0)
考えさせられる度
(3.5)
装丁の美しさ
(4.5)
色彩度
(5.0)
総合評価
(5.0)

あなたは、過去をやり直したいと思いますか?

過去の自分を、許すことができますか?

今回は、生まれ変わり」「人生のやり直し」にスポットライトを当てた作品をご紹介します。

森絵都の「カラフル」は、そんな人生をリスタートしたいあなたへ贈る、不朽の名作ファンタジーです。実写版とアニメ版で、それぞれ映画化もされています。

大人になって読み返すと、また印象が大きく違ってくるのもこの作品の特徴です。

共感が湧かなかったあの人に興味が湧いたり、あの人の心の中と自分の気持ちがシンクロしたりすることもあるかもしれません。

大人も子供も楽しめる、王道の一冊となっています。

「青空のむこう」「流星ワゴン」「椿山課長の七日間」との共通点

死者が何らかの方法でよみがえり、生者と接点を持つというテーマは、この小説以外にもたくさん取り上げられています。

特に同じ児童文学として有名な作品で、アレックス・シアラーさんの青空のむこう(長らく単行本の状態でしたが、2018年に文庫本になりました)があげられますね。

交通事故で亡くなってしまった男の子が、幽霊の友達とともに友達や家族を訪ねるという、ファンタジー小説です。

ほかにも、脳の病気で急死してしまった主人公が、それまでの自分とは正反対の美女に変身して下界に降り立ち、不名誉な疑惑を払拭するために奔走する、浅田次郎さんの椿山課長の七日間

家庭も、父親との関係もうまくいかずに追いつめられていた主人公が、終電に飛び込んだ瞬間に、親子が運転する見知らぬワゴンに乗り込み、そこで若かりし父親と再会し、親子共に時間を遡って今までの人生を振り返る、重松清さんの流星ワゴンがあげられます。

どれも素晴らしい小説ですので、未読の方はぜひ手に取ってみてください。(私は全部好きです。)

あらすじ

「僕」は、普通なら消えてしまう魂のうちの、ひとつでした。

プラプラと名乗る天使が、抽選に当たりました!と叫ぶまでは。

「僕」は小林真として、前世の記憶を取り戻すまでのホームステイを行うことになります。

そこで出会った家族友達の早乙女くん、片思いをしていた女の子、ひろか。地味で目立たないクラスメイトの唱子。

彼らと関わり合い、少しずつ明かされる衝撃的な事実を知ることによって、「僕」は傷つき、戸惑い、成長してゆきます。

そして、ホームステイの期限が迫ったある日。最後の最後に調べに行ったある場所で、彼は全ての事実を知ることになります。

彼が辿りついた「事実」とは、一体何なのでしょうか?

不器用だけど優しい「家族」

真の母は、非凡な真の才能見抜き期待をかけ、誇りに思っていました。

内に秘めた情熱が暴走することが多く、そのせいで真をかき乱してしまいました。

ここに引用したのは、そんな彼女の悔恨ともいえる手紙の一部です。

絵の才があるあなたという息子を持てたことは、私に少しばかりの自信を与えてくれました息子のあなたが特別なのだから、母親の自分も何かがあるにちがいないと思えてきたのです。-p129
真の父親は、傍から見れば、どこにでもいる普通のサラリーマンにしか見えません。

彼もまた、自身の「出世をきっかけに、彼の人生を狂わせる加担をします。

「おまえの目にはただのつまらんサラリーマンに映るかもしれない。毎日毎日、満員電車に揺られているだけの退屈な人間に見えるかもしれない。しかし父さんの人生は父さんなりに、波乱万丈だ。それでひとつだけ言えるのは、悪い事ってのはいつかは終わるってことだな。-p168」
真の兄の満(みつる)は、非常に口が悪くすぐに喧嘩になりますが、根っこは弟思いで、優しい兄です。

「物心ついたときならそばにいた、ぐずで、ぶさいくで、頭悪くていくじなしで、病的な内弁慶で、友達もできない、だから年中おれのあとばっかついてまわってた、世話の焼ける目の離せない十四年間まったく目が離せなかった弟が、ある朝、なんてことのないふつうの朝に突然、ベッドの上で死にかけてた。しかも自殺だ。自分で死んだんだ。どんな気分になるか考えてみろ!-p177」

「生き直す」ってどういうこと?

人の人生は一度きりです。

ただし、生まれ変わる」ことは、生きていてもできます。

若いころに、未熟な行動や発言をしていた人が、大人になって別人になることがあるでしょう。家族を持つこともあるかもしれません。

過去が惨めであったとしても、未来は変えられる未来を変えるのは、自分次第ということです。

生き直しとは、自分のことを見つめ直し、新たな自分として生まれ変わることなのでしょう。

ぼくのなかにあった小林家のイメージが少しづつ色合いを変えていく

それは、黒だと思っていたものが白だった、なんて単純なことではなく、たった一色だと思っていたものがよく見るとじつにいろんな色を秘めていたという感じに近いかもしれない。

黒もあれば白もある赤も青も黄色もある明るい色も暗い色もきれいな色もみにくい色も。角度次第ではどんな色だって見えてくる。-p179

主題歌:ストレイテナー/原色

ストレイテナー原色です。「を象徴する楽曲をと思い、選曲しました。

柔らかな光を照らしながら光源が回転するような、アルバムの最初を飾るのにふさわしい楽曲となっています。この本を読み終えてから聴いていただけるとありがたいです。

この曲はCOLD DISC一曲目として収録されています。全ての曲がシングルカットされてもおかしくないと思えるほどの、傑作アルバムです

孤独はいつも味方だった 傷つけるよりはマシだった」
「もうその名前で僕を呼ぶのは君だけ 生まれ変わることなどできないけれど」

全曲再生できるトレイラーがありますので、こちらもぜひどうぞ。おすすめ原色」「シーグラス」「The Place Has No Name」「Curtain Falls」「覚星です。

そして、最後にVo.ホリエさんからの、この印象的な台詞をもって締めくくらせていただきます。

「最後に、このアルバムはあなたの聴覚に触れるまではただのCOLD(冷たい)DISC。だけど一度触れたなら、身体は熱を帯び、感情は動き出し、すべての色に光が宿るでしょう。そしてきっと、あなただけのGOLD DISCになると思います。」ーサイトより抜粋

おわりに

この小説は、私が中学生だった頃に、お守り代わりに読んでいたものです。

鮮やかな光と色の塊のような小説で、真っ白いキャンパスに色を塗ったように、今まで見たことがなかった世界を見せてくれました。

生きるのに嫌気がさしていたあの日の自分から、今の自分に向けてタイムカプセル贈られてきたようで、嬉しくなったのです。

もし願いが叶うならば、ぜひ、この小説を原作にして、絵を描いてほしいです。

読書感想画でも、個人的なイラストでも構いません。

あなただけの「カラフルを、あなただけの方法で、描いてみてください。

学生時代の自分が、何度挑戦してもできなかった」です。

それを、この記事を読んでいる皆さんに託します。

著者紹介

森絵都(もり・えと)

1968年東京生まれ。早稲田大学卒。90年、「リズム」で講談社児童文学新人賞でデビュー。同作品で椋鳩十指導文学賞を受賞。

宇宙のみなしご」で野間児童文芸新人賞産経児童文芸新人賞産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞。「アーモンド入りチョコレート入りのワルツ」で路傍の石文学賞を、「つきのふね」で野間児童文学賞を、「カラフル」で産経児童出版文化賞を受賞。「DIVE!」で小学館児童出版文化賞を受賞。2006年、「風に舞いあがるビニールシート」で直木賞を受賞。

ドラマ化映画化アニメ化も多数。

他著に「ラン」、「架空の球を追う」「みかづき」などがある。

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