『ひと』小野寺史宜【2019本屋大賞ノミネート!今、自分1人きりだと感じているあなたへ】

 

こんにちは!ReaJoyライターのHIMAWARIです。

この作品のタイトルである、『ひと』

“ひと”と言っても、ひと ヒト、人、又は人間。

色々な書き方があると思いますが、読了後、もう一度装丁を見つめて思うのです。

他のどの書き方でもなく、平仮名で”ひと”だ、と。思わず声にも出して”ひと”と言いたくなる…。

今回は、そんな本屋大賞2019ノミネート作品である、小野寺史宜さんの『ひと』を紹介いたします。

主人公 柏木 聖輔のこれまで

柏木 聖輔 20歳。鳥取で生まれ育つ。3年前に、父を車の事故で亡くし、そこから女手1つで育てられた。

大学は自身の志望や母の勧めもあり、地元の大学ではなく法政大学の経営学部に入学することを決め、上京。

南砂町で一人暮らしをしつつ、軽音サークルに入り、アルバイトをし、大学生生活を送っているうちに、少しずつ父のいない日々にも慣れてきていた頃だった。

そんな大学2年の秋、母が突然死してしまう。

20歳、秋。たった一人になった。

この作品では、”一人の秋”、”一人の冬”、”一人の春”、”夏”と4章に分かれており、約1年を通して読者である私たちは、聖輔の成長を見守っていくこととなります。

聖輔の1年間

なんとか母の納骨まで終え、東京へ帰ってきた聖輔。奨学金を返せる自信はなく、大学を中退。

何か仕事を見つけなくてはと思いつつも、途方に暮れていたある日の午後。

惣菜屋の”おかず田野倉”で、残り1つのコロッケをお婆さんに譲ったことをきっかけに、そこでアルバイトをすることになる。

同時に、父も調理師であったことから実務経験を積み、調理師免許をとるという大きな目標が聖輔にできた。

働いていることにより、店主や従業員との信頼関係、おかず田野倉に来る客、同じ商店街で店を構える人々との繋がりを築き、たまたま店に立ち寄った高校時代の同級生との再会、大学の友人たちとの変わらぬ付き合い、父の足跡を辿った先で会った父の元同僚、当時の店のオーナーとの出会い。

この数々の、偶然とも必然とも呼べる巡り合わせにより、聖輔は自分は1人きりではないことに徐々に気付いてゆく。

そして、何もかも他人に迷惑をかけぬよう、1人で全てを抱え込む聖輔に対し

一人で頑張ることも大事。

でも頼っていいと言ってる人に頼るのも大事。

聖輔は人に頼るということを覚えろ。

おれたちには頼れ。

などと言ってくれる身内でもない、周りの人たち…。

親切な人は、あちこちにいるということを身をもって知り、悲しさ以外の涙もあるということも知るのである。

ひと と ひと

本屋大賞にノミネートされた理由、それはこの時代だからこそ必要なこと、忘れかけていた大切にしていかねばならないことが詰まった作品だからではないかと感じました。

例えば、単身者が多く住む場所では、隣に住む人の名前や顔さえ知らなければ、会っても挨拶もしない。

お互いに関与しないというようなことが、ある意味そのような場所では常識のようにもなっています。

そんな見知らぬ土地の1人の部屋で、”自分は1人きりかもしれない”と孤独を感じている人もたくさんいると思います。私自身も思ったことがあります。

しかし、自分以外の家族を亡くし本当の1人きりになってしまった聖輔も、徐々に1人きりではないことに気付いていくことと同じように、今まさに孤独を感じている人へこう伝えたくなりました。

自分のすぐ近くに、まだ気付いていないだけでたくさんのきっかけやチャンス、縁が隠れていることをどうか頭の片隅に置いて日々を過ごしてほしい

と。

また、近年、ゆとり世代、さとり世代などと言われていますが、この作品を読了後、”最近の若い子は~”や、”~世代だから”などと、全ての若い世代を一括りにして言うべきではないな…。と、少し反省する人も出てくると思います。

そのくらい、まだ20歳の聖輔、またその友人もしっかりと自分を持っているのです。

思わず、聖輔の亡くなったご両親に伝えたくなるほど…。

この先、良い意味で”最近の若い子は~”という言葉が使われていくことを、読了した今、願います。

最後に…この作品は、気付くと涙がこぼれていたり、目頭が熱くなる作品です。

ここがクライマックス!!などではなく、きっとそれぞれがそれぞれの箇所で…。

今まさに、聖輔と同じ歳の人、同じ境遇の人、1人暮らしを始めたばかりの人、聖輔の両親世代の人、その他たくさんの人たちにおすすめできる、青春小説です。

そして読了後は、もう1度装丁を見返してみてください。

あなたの ひと とは…

主題歌:ケツメイシ/さらば涙

この作品と曲を合わせるとしたら、ケツメイシの さらば涙 です。

まず、この曲名だけでまさに!!なのですが、歌詞の全てがこの作品に合っていると思います。

この先良い事あるだろうから 流した涙にさようなら
きっと見方を変えれば明るくなれる なりたい自分にまたすぐ会える

まあ生きてりゃ色々あるからさ 上向いていこうか明日からは
今の君こそがとにかく良い

このフレーズを、聖輔に聴かせてあげたい!!

そう思いつつ読み進めました。

著者:小野寺史宜

小野寺 史宜 (おのでら ふみのり)

千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」でオール讀物新人賞、

08年「R O C K E R 」でポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。

著書に「ホケツ!」「家族のシナリオ」(小社刊) 「みつばの郵便屋さん」「東京放浪」

「その愛の程度」「ひりつく夜の音」「近いはずの人」「リカバリー」「本日も教官なり」

「それ自体が奇跡」などがある。

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