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『麦本三歩の好きなもの』あらすじと感想【なんでもない日常の贅沢をあなたに】

『麦本三歩の好きなもの』あらすじと感想【なんでもない日常の贅沢をあなたに】

朝起きて、カーテンから太陽の光が差し込んで、また1日が始まる。

ご飯を食べて、決まった服を着て、玄関を開けて、さあ、出発。

そんな当たり前の日々が、愛おしくなる物語。

こんな人におすすめ!

  • 日常小説が好きな人
  • 毎日が退屈だと思っている人
  • ドラマチックなことなんていらないと思っている人

あらすじ・内容紹介

麦本三歩(むぎもと さんぽ)、20代、図書館勤務。

好きなものは朝寝坊とチーズ蒸しパンと、本と、漫画と。

三歩の日常にドラマチックなことなんて起こらない。

布団を出るのが苦手な冬の朝、布団にくるまり紅茶を淹れ、テレビを点けて、出勤までの時間を過ごす。

図書館には、怖い先輩と優しい先輩とおかしな先輩がいて、怖い先輩には日々仕事のミスで叱られ、優しい先輩には感心させられ、おかしな先輩には翻弄される。

ラーメンを食べたのに、いつものたい焼き屋に吸い寄せられ、自分好みのキムチ鍋の素を求めてちょっと遠くのスーパーに行ってみれば怖い先輩にご飯をごちそうしてもらう。

なんてことはないよくみる光景。

運命の出会いとか、一大スペクタクルと、そんなものよりもずっとありふれていて、それでいて愛おしくなる。

麦本三歩の毎日は「当たり前」にあふれている、けれども香ばしい日常たちの短編集。

ちょっと覗いてみませんか?

『麦本三歩の好きなもの』の感想・特徴(ネタバレなし)

奇をてらわない三歩の魅力

図書館勤務で、20代で、一人暮らしで、それでいて性別は女の子で。

そんな描写を読んだら、あなたはどんな風に三歩について想像するだろうか。

眼鏡の大人しめで、ちょっと古めかしいお下げの少女風の女の子だろうか。

それとも、ちょっとオシャレに磨きがかかってきた、都会風の女の子だろうか。

残念ながら、この本には主人公である三歩の容姿の描写がほとんどない。

赤いルージュを引いた、とかいう化粧をする描写はあるのだけど、基本的に作者は読者に三歩の容姿に関する描写は任せている。

「ご想像にお任せします」ということだろうか?

 

けれど、彼女の性格を表す描写によって、なんとなく容姿も想像がついてしまう。

例えば、怖い先輩に手作りの夕飯をごちそうになり、アフターコーヒーをもらったときの三歩の反応。

ありがとうごぜーますぅ

あぁ、三歩って若いなって思ってしまう。

目上の人に淹れてもらったコーヒーに対するお礼がこれとは。

ここで私はちょっと、横着気味な20代前半の女の子を想像した。

 

かと思えば、急な同級生の男子からの深刻な悩みの告白を聞いた三歩は。

「君の辛さは、私には分からない。だから、もし、本当にもう何もかも耐えられないと思ったら、死んでもいい。止められない。死んじゃ駄目なんて、君の辛さが分からない私には決められない。君の人生だから」

なんて、良いことをサラッと言ってしまう。

このセリフだけを読んでしまうと、そうそうふざけた人間だとも思えない。

 

でも。

三歩は部屋着のスウェットに着替え、ベッドに転がり、スマホを眺めた。午後の紅茶はちゃんと手に届く床に置く。完成、三歩のだらだらタイム休日スタイル

これには、やっぱりちょっと横着で、でも友達思いで、けれどやっぱり若さゆえの「仕事が休みの日はこする!」という決心が強いところを見ると、イマドキの女の子だよね、と思う。

三歩の生活スタイルは、特に目立つことをしているわけではない。

休日は上記の通りだらだらしているし、仕事は叱られつつもちゃんとやっている。

趣味に関することが読書と漫画が好きということぐらいしか分からないけれど、奇をてらったことをしているわけではまったくないから、読んでいてとても好感が持てる。

 

自分のために1合のご飯を炊くことも、自分のためにスーパーへ行って好みのキムチ鍋の素を買うことも、ラーメンが好きだけどいつものたい焼き屋さんにも吸い寄せられてしまうことも、どれもみんな「あるある」で、共感というよりかは同じ目線で読めるから、三歩の息遣いまで聞こえてくる。

すぐそこで、三歩が生活しているんじゃないかと錯覚してしまうほどに。

名前の出てこない人たち

三歩は大学内の図書館に勤めており、仕事場で登場するのは、指導係の怖い先輩、口調が穏やかな可愛い先輩、何かと変わった言動で三歩を翻弄するおかしな先輩の3人である。

この本の大きな特徴として、三歩以外の三歩に関わる登場人物は名前が出てこない。

大学で出会った親友とか、大学の同級生とか、とにかく三歩が直接に会話を交わす人間には名前が出てこず、ちょこっとだけ容姿の描写があるくらいだ。

まるで作者が「麦本三歩」という変わった主人公の名前を付けるだけで力尽きてしまったように。

そこが、この本のミソである。

名前が出て来るのは三歩だけなので、自ずと読む重心や共感の針が三歩だけに向きやすく、読者は三歩に寄り添いやすいし、呼吸がそろいやすい。

おかげで私は読んでいる間中、ずっと三歩と生活している気分だった。

ほかの登場人物に名前がはっきりと出てしまうと、どうしても主人公よりも共感を得る人物が出てきてしまう。

それを敢えてばっさりと、三歩以外の登場人物に名前を与えないことで、読者が三歩だけに目線をかっちりと合わせることができるのだ。

 

だからと言って、名前のない三歩以外の登場人物たちが薄っぺらなわけではなく。

可愛い先輩が本を失くしてしまった学生に、穏やかだけどズバッと言うセリフ。

「長い時間をかけてきたものには、それを大切に扱ってきたたくさんの人と、それらを守ってきた人がいます。新品のものよりも、たくさんの人の愛情が、仕事がそこにかけられているんですよ。世の中には、それをあんな程度と呼び、粗末にし、そのことを反省する気もない大人達がたくさんいます。そんなことをしていると、いつか、年を取った時に、今度は自分が同じ目に遭うような気がするんです」

と、本好きを泣かせる言葉を言ってくれます。

 

名前はないけれど、どの登場人物も主人公の三歩と同様のポジションを得ている稀有な小説なのです。

この本の真髄は「私だから許される」にあり!

私が「この本の真髄だ!」と思うのは、「麦本三歩はモントレーが好き」である。

要約してしまえば、風邪をひいたと言って三歩が仕事をサボる、というだけの話。

そこにとある要素が絡まって、三歩は精神的にピンチに陥る。

学生だって、社会人だって、だれだって、何かをしていればサボりたくなるときは絶対にある。

食べることや、トイレに行くこと、生きることのためにすることすら面倒で、いやになっちゃうときだってあるもの。

「サボりたい」というのは自然な気持ちだと思う。

問題はその後なのだ。

例えば宿題をサボったら、先生に怒られる。

会社をサボってそれがバレれば、上司には咎められるし、社会的信用も失う。

三歩はふとしたことで仕事をサボったことがバレ、何食わぬ顔をしてみるけれど、やはりそこは三歩もまともな人間だ。

罪悪感がだんだんと募ってくる。

その罪悪感に追い打ちをかけたのが、おかしな先輩である。

さんざん悩んだ三歩は、自分に追い打ちをかけたおかしな先輩に相談することにする(相談する相手が自分に追い打ちをかけた人って……)。

この相談で、この本の真髄が発揮される。

あなたは、あなただから許してもらえたことってあるだろうか?

例えば私の場合、大雑把な性格だからちょっとやることが雑でも「まあ、はるうのやることだからね~」と許してもらえたりする。

 

あなたの性格や、あなたの個性を鑑みて、何かをやらかしても許されることってあると思うのだ。

それを、おかしな先輩はこう言う。

「ずるいことをしたり、人に嘘をついたり、でも生きていかなくちゃいけなくて、自分をそんな嫌な奴だと思いたくなくて、だから他人をたっぷり甘やかして、その代わり甘やかしてもらって、必ずちょっとだけ反省して、生きていくしかないんだと思うよ。少なくとも私はそれを自覚して生きていけたらいいなと思ってるし、自覚して生きている人が好き」

おかしな先輩は「自覚なしで許されるのは嫌い」だと言っているのだ。

「三歩だから許されること」があってもいいのだけれど、それを自覚しないまま生きているのが許せないのだ。

そのことを自覚しているからこそ、「私だからここは許される」という部分を自覚してこそ、他人の「あなただから許してあげる」にも寛容にもなれる。

自分も許されているから。

おかしな先輩のこのセリフに、私は三歩のようにハッとし、この本の本当に伝えたかったことを読んだような気がした。

まとめ

要所要所で痛いところを突かれたり、人生論や人生哲学が盛り込まれている本書は、読書初心者にも読みやすく、三歩のキャラクター造形も親しみやすい。

物語もテンポがよく、文章も難解ではないので、気軽に、寝る前に1つずつ読むのもオススメ。

麦本三歩の日常は続く

三歩の日常が続いていくように、私たちの日常も続いていく。

自分の毎日に「なんでもない」というスパイスが加わる魔法の本である。

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