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『i(アイ)』西加奈子【この世界で君は「何」を残せるんだろう?】

『i(アイ)』西加奈子【この世界で君は「何」を残せるんだろう?】

この本の評価
読みやすさ
(3.5)
面白さ
(4.0)
存在意義を問われる度
(5.0)
装丁の美しさ
(4.0)
心を揺さぶられる度
(4.5)
総合評価
(4.5)

皆さんは、自分自身のルーツを知っていますか。

自分が体験した苦しみと、どこか遠くで起こった事件や事故の被害者が受ける悲しみは、「違う」と言い切れますか。

今回ご紹介するのは「i(アイ)」。

純粋な恋愛小説として読むのはもちろんのこと、一種の青春物語としても読める、非常に珍しい小説です。

予想だにしない大きな衝撃に押しつぶされて、生きるのが嫌になっていませんか。

この本は、そんなあなたにおすすめです。

あらすじ・内容紹介

主人公は、ワイルド曽田アイという女性です。

アメリカ人の父と日本人の母を持つ彼女は、自分の生い立ちが「養子」であることをひどく気にかけ、恥じていました。

彼女は1988年にシリアで生まれ、本来ならば日本に住むことはなかったからです。

そのせいか、自分だけが恵まれた家庭に引き取られたことに罪悪感を感じるようになってしまいました。

この物語は、血の繋がりを求め続けた一人の少女が、希望を見出そうともがいた半生の記録です。

注意
以下、ネタバレ注意です

「i(アイ)」の感想(ネタバレ)

アイの人物像

「この世界にアイは存在しません」

幾度となく登場する、印象的な台詞です。

教師の口から告げられたこの言葉に彼女は傷つき、格闘することになります。

アイの人柄を簡潔にまとめると、「優し過ぎる」「考え過ぎる」ことが挙げられます。

傍から見れば取り越し苦労であったり、自意識過剰に見えることでしょう。

(※何かに思いつめ、考えすぎて暴走する女性像は西さんの他の作品にも当てはまります。「白いしるし」の夏目など。)

悩み続けた結果、アイは次第に「黒いノート」を持ち歩くようになります。

今まで死んでいった人たちのことを忘れないようにするために、死者の数がびっしりと書き込まれたノートです。

アイの味方、ミナ

優し過ぎるアイにとって、心強い味方となったのが、権田美菜(ミナ)でした。

彼女はレズビアンという、セクシャルマイノリティの性質を持っています。

セクシャルマイノリティとは

身体的性(肉体が男性か女性か、どちらともつかないか)
性自認(自分のことを男性と思っているか・女性と思っているか)
性的指向(自分が好きなのは男性か・女性か。性的嗜好とは別の事柄)
性的表現(自分がありたい性別は男性か・女性か)

 

多義的には

レズビアン(自らを女性と認識しており、女性が好き)

ゲイ(自らを男性と認識しており、男性が好き)

バイセクシュアル(男性、女性、どちらも好き)

トランスジェンダー(性転換手術などで自らの性自認(心)と身体的性(体)を合わせた方を指す)のこと」であり、LGBTとは、それらの頭文字を取った「セクシャル・マイノリティ(性的少数派)の総称」である。ーJobRainbowより

彼女はアイに自分の気持ちを隠すことなくさらけ出しました。

そのあっけらかんとした性格が、アイにとって心地よかったのです。

彼女はアイの「考えすぎてしまう」特性を頭ごなしに否定しませんでした。

それどころか、「気が済むまでとことん考え抜けばいい」とまで言い切ったのです。

「渦中の人しか苦しみを語ってはいけないなんてことはないと思う。

もちろん、興味本位や冷やかしで彼らの気持ちを踏みにじるべきではない絶対に

でも、渦中にいなくても、その人たちのことを想って苦しんでもいいと思う。」-p270

彼女がどうしてそこまでしてアイに寄り添うのかは、終盤、アイに向けて送った手紙の文面に明かされています。(※ミナの行動には賛否両論ありますので、その点についてはお任せします。)

また、彼女から贈られた『テヘランでロリータを読む』という本が、その後のアイの人生に、大きな影響を与えます。

 

ユウとの出会い

アイは、カメラマンの佐伯裕(ユウ)と出会います。

きっかけは、原発反対のデモでした。

そこにたまたま参加したアイの姿を、カメラに残したいとユウが申し出たのです。

年齢の差も超えてお互いを分かち合う存在に出会えたアイは、次第にユウと共に生き、新しい命を残したいと考えるようになります。

しかし運命は、彼女に残酷すぎる現実を与えます。

知らないことを罪悪だと思ってきた。

自分の悲劇、世界中で起こっている悲劇に目をつむること、耳をふさぐことは幸福な人間の怠慢で、おぞましい罪悪だと思ってきた。でも知りたくなかった。

自分に起こったことがこんなにも苦しかった

ずっと「免れた」と思っていた自分に起きたことが、こんなにも。

かつて、アイは被害者ではなく、傍観者でした。

皮肉にも、身を引きちぎられるような痛ましい経験をすることによって、はじめて当事者の立場に立つことができたのです。

死者と生者を繋ぐ「想像力」

アイが幼いうちから身に着けてきたのは、想像力でした。

もっとも、必要に迫られて身に着けたので、呪いのようなものと化していましたが。

しかし、それこそが人を動かすエネルギーであり、人を人たらしめるものなのではないのでしょうか。

血の繋がりや養子だといった彼女の「ステータス」ではなくて、彼女本来の優しい性格が、ミナやユウと引き合わせたのでしょう。

アイは、戦争で亡くなったアイラン・クルディという少年と彼のお兄さんへ、このような言葉を残しています。

でも、もし、水中を漂い、苦しみながら死んでいったアイランに、その兄に、死んでいったすべての人にもう一度会うことが出来たのなら、私はこう叫ぶだろう。

生まれてきてくれてありがとう。

彼女の祈りは、死んでいった全ての人への鎮魂歌として、この先も鳴り響いてゆくことでしょう。

まとめ

ここで取り上げられる「アイ」には、無数の意味が込められています。

自己愛のアイ、虚数のアイ(i)。

愛情のアイ。

英語で「自分」という意味でのアイ。

そして、アイデンティティのアイです。

それらの「アイ」が重なり合い、多義的な意味でのアイを体現しています。

彼女が自分の感情に囚われ、内面的に傷ついてゆくシーンは苦しい描写が続きます。

それでも最後の一行まで、目を離さずに読んでもらいたいです。

主題歌:雨のパレード/stage

次世代のクリエイターバンド、雨のパレードの「stage」です。この曲が表現しているもののうちのひとつに、「流れる水」があります。

深緑色や漆黒に染まった大量の水に息を塞がれ、悶えながらもなんとか呼吸をして、深い深い井戸の底のような世界から這い上がるようなイメージです。

『例えばこの声が 今日消えてしまって この世界に僕は なにを残せているだろう』(作詞:福永浩平)

「声」を使って仕事をするアーティストにとって、それを失うということは生命が絶たれることと半ば同義です。

彼らの命を懸けた覚悟と、アイの気持ちがシンクロしたのでこの選曲としました。

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