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『墨攻』あらすじと感想【2万の敵軍に立ち向かう1人の男】

『墨攻』あらすじと感想【2万の敵軍に立ち向かう1人の男】

今より2,500年前の中国。

後に「春秋戦国」といわれるこの頃の中国は、強国が弱小国を滅ぼす弱肉強食の時代だった。

誰もが「己が生き残るため、いかに他者から奪うか」に考えを巡らせる中、人類史上、類をみない思想集団が現れた。

彼らの名を墨家(ぼっか)という。

始祖墨子(ぼくし)の教え「兼愛非攻」は、孔子の儒教すら否定し「人を平等に愛すること」を主張。

そしてこの教団最大の特徴は、ありとあらゆる侵略戦争を否定したことであった。

墨子は墨家という教団を設立し、多くの弟子たちを育成。

侵略される国があれば弟子を派遣し、戦闘訓練・武器作成・城壁修理・組織運営と、ありとあらゆる技を施し、その国を守り抜いたのであった。

彼らは無事に国を守り抜いた後も一切の報酬を求めず、むしろ報酬を求めることを「卑しい」とし忌み嫌った。

墨家は時に命すら捧げ、「無償の奉仕」を最大の美徳とする超人的な集団であったのだ。

こんな人におすすめ!

  • 歴史好き
  • 中国好き
  • 組織のしがらみ系のストーリーが好き
  • ポンコツ上司が消えて超優秀なリーダーが会社を変えてくれることを望むサラリーマン

あらすじ・内容紹介

墨子には有名な話がある。

大国・楚が、発明家・公輸盤(こうしゅはん)の開発した攻城兵器を携え、小国・宋の侵略準備をしていた時、戦争を止めようと楚王の前に現れたのが墨子であった。

墨子の再三の説得にも関わらず、首を縦に振らない楚王。

そこで墨子は、楚王の前で模型を使い公輸盤と「模擬戦争」を開始した。

ありとあらゆる手で模型の城を攻める公輸盤だったが、墨子は難なく撃退。

打つ手の無くなった公輸盤に対し墨子は城を守り切っただけでなく、まだまだ数多くの手を残していた。

墨子は楚王に「戦争をやっても死者が出るだけ無駄。今ならまだ止められる」と説得。

楚王は侵略を諦め、宋は無事に守られたのであった。

その墨子が世を去って100年以上が過ぎた頃。

の大軍に攻められた弱小国・は、墨家に救いを求めたものの、この頃になると墨家も腐敗し始めていた。

梁を救っても利益にならないと考えたリーダー・田襄子(でんばん)は救援を拒否。

そんな中、墨者の一人・革離(かくり)は、「小国を見捨てて何が墨家か!」と憤慨し、梁へただ一人救援に向かう。

一方の梁は墨家から強大な援軍を期待していたものの、現れたのはボロボロの服を身にまとったみすぼらしい小男・革離一人だけ。

しかも、梁には解決せねばならない課題がいくつもあったのだ。

『墨攻』の感想・特徴(ネタバレなし)

「守り」の準備

革離が見た所、梁の問題点は次の5つであった。

  • の人口は4,500人程でそのほとんどが非戦闘員
  • 君主・梁渓女と酒に溺れる愚鈍な人物。危機そっちのけで酒色にふけっている。
  • 君主の側近も無能。文句ばかりで何もしない。
  • 梁渓の息子梁適(りょうてき)は、父よりは国を思っているがその分革離への反感が強い
  • 城壁がボロボロ。2万の軍隊が押し寄せればあと言う間に破壊されてしまう。

このころの中国の「城」とは中世ヨーロッパ都市国家と同じで、城壁に守られた内部のことを指す。

「城」の中は人々が暮らし、行政機能(君主)や商業機能(街)等が備わっていた。

漫画『進撃の巨人』「城塞都市」をイメージすると分かりやすい。

梁を守るため、第一に革離がしなければならないこと。

それは全権を革離にゆだねてもらうことであった。

こうしなければ、指示系統が成立せず戦いどころか組織運営すら成り立たないからだ。

自分たちの特権を奪われることを恐れ、全権委任に反対する梁適や家臣たちであったが、文句ばかりで他に打つ手はない。

「城が陥落することは死を意味する」を理解した君主・梁渓は革離への全権委任をしぶしぶ承諾。

こうして、食料、油、家畜、薪材、建築材、陶器、鉄、瓦、石ころ、そして住民といった梁のすべてを管理することになった革離は決意を新たにする。

すべては防衛に使われるべきであって、すべてに無駄は許されない。

それは4,500人の住民も例外ではなかった。

革離は、梁渓、梁適、家臣、住民を広場に集めると演説をはじめた。

趙兵に敗れれば、食料、家畜はすべて奪われ、男は奴隷、老人子どもは皆殺し、女は犯され奴隷にされる

怯える住民達の前で、革離は短刀を取り出し自らの腕に傷をつけると、滴る血を大地にしみこませ大声で叫んだ。

だが私が来たからには安心しろ。我が血を吸った地を私は必ず守る。そのために皆は命を懸けて私の命令に従え!

そう叫ぶと革離は具体的な準備に取り掛かった。

見事な組織運営

◎組織化

革離は、4,500人の住民すべてを5人1組とし、その1組を「伍」と命名した。

行動はすべて「伍」の単位ですること。

そして5人の内、誰か1人でも罪を犯した場合、残りの4人も連座とし規律を引き締めた。

また「伍」が2つで「什」

「什」が10集まり「伯」とした。

それぞれのリーダーを「伍長」「什長」「伯長」とし、「伍」「什」「伯」の単位で、城壁の修理、塹壕掘削、燃料集め、武器の作成、食料調達、戦闘訓練等の業務を行わせ、組織の能率化と管理化を徹底させた。

これら「伍」「什」「伯」が「五」「十」「百」からきているのは言うまでもない。

 

また風紀の乱れを起こさせないため、男女の交流を禁止。

手始めに君主梁渓から妾を離させた。

「君主といえど例外は認めない」という決意表明でもあった。

 

◎「アメとムチ」「信賞必罰」の徹底

敵前逃亡、投降者死罪

内通者、謀反人一族皆殺しとし、ムチである「罰」を明らかにさせた。

一方で革離は人間の行動の源がアメ、つまり「賞」である事も見抜いている。

恩賞はこれを惜しまない。手柄を立てた者には位と賞金、戦傷者は手当を受けさせ酒を与える。戦死者にも戦後、相応の金を与える。謀反者の情報を知らせた者にも金2千金

と、住民達のやる気を出させた。

 

◎率先して働くリーダー

厳しいルールに基づいた過酷な重労働がはじまった。

やるべきことは城壁修理から山ほどある。

普通なら文句が出るレベルのものであったが、それは一切無かった。

なぜなら革離自身、ほとんど眠らず、超人的な働きで城に尽くしていたからである。そんな革離を見て家臣の牛子張(うしこちょう)や住民の中でも革離に心服する者が出てくる。

趙軍来襲

趙軍来たる!

名将・巷淹中(こうえんちゅう)に率いられた2万の趙軍が、ついに梁城近くに布陣。

手はじめに巷淹中の部下・高賀用(こうがよう)が3千の兵で梁に攻めてきた。

小城梁を舐め切っていた高賀用だったが、すぐにそれが大きな誤りだったことに気づく。

鍵縄で城壁を上りはじめた趙兵達であったが、訓練された住民達の投石、矢で攪乱された上、城壁を登り切った趙兵も住民の槍攻撃に倒れた。

巷淹中は次の手である「高臨の法」「穴攻の法」の準備を開始。

「高臨」とは城の周りに土で高台を作り、そこから矢を射たり城壁を乗り越えたりする戦法。

「穴攻」とは文字通り、城の外から地下深くトンネルを掘り進め城内まで進む戦法。

しかし、革離はたくみな用兵術で住民達を手足のように使い高臨も穴攻も撃退した。

ここにきて趙軍は恐ろしい敵と戦っている事に気づく。

逆に梁の住民達は革離の下で戦えば趙軍を撃退できると大いに自信を深めるのであった。

しかし、革離は梁の内部にほころびがでている事に気付かなかった……

まとめ

この作品の面白さは、何といっても「古代の戦争」も「現代の組織運営」も、何ら変わりはない事に気づかせてくれることだ。

組織が優れたリーダーにより、あっというまに改革されたという話は洋の東西関わらず、今のビジネス界でもよく聞く話である。

また、危機に際し何もしない指導者への苛立ちは、サラリーマンや国民が、組織のリーダーへ抱く感情であり、これまた現代でもよく聞く話。

だからこそ自ら率先して動く無私で有能な理想のリーダー・革離に読む者は喝采を送るのであろう。

本書は、小説が出版された後、漫画化もされ成功を収めている。

さらに、中国では実写映画化もされ人気を博した。

史実では、墨家の思想はあまりにも厳しすぎたため、秦の始皇帝の登場を待たずに消滅してしまった。

一方で漢代以降活躍した侠客の精神こそが、墨家の精神を継承しているとする説もある。

古代中国にこのような「平等の愛」「平和主義」「奉仕」の思想が存在した事は驚異であり、またこれらの精神は、現在も存続するキリスト教をはじめとしたあらゆる世界的宗教の先駆けでもあったといっても過言ではあるまい。

「損得」を中心とした世界潮流の中で、今こそ墨家の思想を見つめなおす機会ではなかろうか。

21世紀の墨家、是非、現れて欲しい。

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