『PSYCHO-PASS サイコパス(上)』あらすじと感想【人の魂と正義のあり方を問う戦い】

『PSYCHO-PASS サイコパス(上)』あらすじと感想【人の魂と正義のあり方を問う戦い】

正義とは何か。

人の、魂の価値とはなにか?

人生の全てがシステムに委ねられる社会で、常守朱(つねもり あかね)は犯罪者を追う。

「正義」の在処を探しながら。

こんな人におすすめ!

  • 哲学に興味がある人
  • SFに興味がある人
  • とにかくカッコいい作品が読みたい人

あらすじ・内容紹介

西暦2112年、新自由主義経済の歪みから起こった貧富の差の拡大は倫理道徳感の崩壊を招き、世界中が紛争の渦に巻き込まれる中で、日本は唯一の「安全な社会」を維持する国家となった。

厚生省が管轄する「包括的生涯福祉支援システム」、通称「シビュラシステム」によって、人は自らの適性に合った健やかな人生を送れるようになった。

更に、心理状態の悪化から罪を犯す可能性、「犯罪係数」が上昇すれば、罪を犯す以前に「潜在犯」として隔離される。

シビュラは、社会の凡ゆる指標となったのだ。

潜在犯を追うのは、犯罪者に近いが故に犯罪者を追うのに適していると判断された潜在犯「執行官」と、執行官の手綱を握る厚生省のキャリア「監視官」。

新人監視官・常守朱は、先輩監視官・宜野座伸元(ぎのざ のぶちか)や執行官・狡噛慎也(こうがみ しんや)、政陸智己(まさおか ともみ)、縢秀星(かがり しゅうせい)、六合塚弥生(くにづか やよい)、唐之森志恩(からのもり しおん)と共に、特殊拳銃「ドミネーター」を手に捜査にあたる。

行く手に待ち受けるのは、数々の残酷な事件。

そして、事件を追う内に見えてくる、「完璧な社会」の矛盾と綻び。

過去に囚われた執行官、狡噛慎也と事件を追う中で、朱音はどのような答えを見つけるのだろうか。

更に、殺意と手段を結びつけ犯罪をプロデュースする謎の男、槙島聖護(まきしま しょうご)。

彼の目的は一体なんなのか。

人の魂と正義の在り方を問う戦いが始まる。

『PSYCHO-PASS サイコパス (上)』の感想・特徴(ネタバレなし)

魅力的なキャラが織りなす、手に汗握る群像劇

僕は人の魂の輝きが見たい。それが本当に尊いものだと確かめたい

本書の主人公は、かつて監視官でありながら「とある事件」を機に執行官堕ちしてしまった元エリート、狡噛慎也。

昔ながらの刑事の勘と、鋭い推理で犯人の動機、手段を見抜いていく。

更に身体能力も高く、ドミネーターなしの生身の格闘でも抜群の強さを誇り、古今東西の様々な書籍を読み耽るインテリ。

主人公として抜群に魅力的なキャラだが、この作品には更に魅力的なキャラが多数登場する。

狡噛慎也と行動を共にすることが多く、彼から「刑事とは何か」を学びながら急激な成長を遂げていく本作のヒロイン、常守朱。

朱の先輩であり神経質なエリート、宜野座伸元。

シビュラ成立前から刑事をしているベテランにして、宜野座と「とある関係」にあるナイスミドル、政陸智己。

寡黙ながら内には優しさを秘めたクールビューティー、六合塚弥生。

お調子者だが、その実5歳から潜在犯認定を受け、隔離施設で育ってきた若者、縢秀星。

潜在犯にして分析の女神様、艶やかな魅力を纏った美女、唐之杜志恩。

そして、公安局刑事課1係の前に立ち塞がる謎の男、槙島聖護。

それぞれが胸に信念を秘め、ときに協力し、ときに対立しながらも事件を追っていく。

互いに軽口を叩き合う姿も、信念をぶつけ合う姿も、目まぐるしく変わる状況に翻弄されながら、それでも抗う姿も、全てが愛おしく見えるのは、偏にキャラクターの魅力によるものだろう。

襲いくる事件たち

殺意と手段を結びつけている奴がいる

不気味で不可解な事件の数々も、本書を更に魅力的に盛り上げていく。

厳重に管理されていたはずのドローンによる死傷事故をはじめ、死人のアバターはネット上で活動を続け、死体を加工したアートが街を彩り、その地下は壮大な「狩り場」が存在する。

そして、かつて狡噛慎也が「特別な存在」を失い、執行官に堕ちるきっかけとなった「とある事件」。

そして、全ての事件の背後に見え隠れする謎の存在「マキシマ」。

彼らを待ち受ける事件は悍しく、人間の悪意がこれでもかと言うほどに凝縮されている。

だからこそ、そんな事件に挑む刑事たちの姿は勇ましく、輝いて見えるのだろう。

槙島聖護の書籍紹介

紙の本を読みなよ

本筋に大きく関わることはないが、本書の大きな魅力の1つとして挙げられるのが、槙島聖護による「書籍紹介」だろう。

彼もまた狡噛と同様、様々な本を読み、引用しながら会話を行う。

フィリップ・K・ディックやジョージ・オーウェル、ウィリアム・ギブソンなどの海外作家から、寺山修司などの日本人作家まで幅広くフォローし、要所要所で的確に引用し語る姿は、悪魔的な魅力を持つ。

(余談だが、公式の設定によれば藤子・F・不二雄や手塚治虫といった漫画家までフォローしているとのこと)。

アニメ放映中、彼が引用した書籍が飛ぶように売れたことからも、彼が書籍の引用をする姿が魅力的だったことがよく分かる。

まとめ

大人気アニメのノベライズとして刊行された本書は、加筆シーンやオリジナルシーン、心理描写なども多分に盛り込むことで「小説」としての完成度も非常に高いものとなっている。

小説として純粋に物語に浸るも良し、アニメと見比べて違いを探しても良しの、多様な楽しみ方ができる小説だ。

そして、この世界の現行法で裁けない謎の存在、槙島聖護。

常守朱を始めとする公安局1係の面々が、彼にどのように向かい合っていくのか。

そしてこの世界の根幹を成す「シビュラシステム」の正体とは?

それは、『PSYCHO-PASS(下)』で明かされる。

『PSYCHO-PASS サイコパス(下)』あらすじと感想【法で裁けぬ悪にどう向き合う?】『PSYCHO-PASS サイコパス(下)』あらすじと感想【法で裁けぬ悪にどう向き合う?】

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