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『満願』原作小説あらすじと感想【ミステリー3冠受賞!西島秀俊出演でドラマ化された本格ミステリ小説】

『満願』原作小説 あらすじと感想【ミステリー3冠受賞!西島秀俊出演でドラマ化された本格ミステリ小説】

山本周五郎賞受賞、そして史上初のミステリーランキング3冠に輝いた短編小説集『満願』

2018年には西島秀俊らを主演に迎え、NHKのミステリースペシャルで3夜連続のドラマ放送がされた。

著者は、学園ミステリー『氷菓』(古典部シリーズ)『春期限定いちごタルト事件』(小市民シリーズ)などのシリーズものや『儚い羊たちの祝宴』『インシテミル』などの本格ミステリーで知られる小説家・米澤穂信。

この記事ではネタバレを避けつつ、作品のおすすめポイントを紹介していく。

こんな人におすすめ!

  • ミステリ小説で面白い本を探している人
  • ドラマを見て原作の『満願』が気になった人
  • 「古典部シリーズ」や「小市民シリーズ」で米澤穂信さんを知った人

あらすじ・内容紹介

『満願』は6作品からなる短編集だ。

ドラマ化されたのは「夜警」(主演:安田顕)、「万灯」(西島秀俊)、「満願」(高良健吾)

各短編のあらすじを簡単にご紹介する。

「夜警」

部下が殉職した日の回想。

かつて刑事として出世レースに身を投じた男は町の交番長になっていた。

部下の死因に疑問を抱いた主人公が推理の果てにたどり着く意外な真実とは? 

「死人宿」

突然姿を消した恋人の消息を追って、自殺志願者たちの間で有名な古い温泉宿に辿り着いた私。

そこで彼女はある「遺書」を私に見せ、持ち主を探してほしいと依頼するが……。

「柘榴」

絶世の美女は愛する男を手に入れた。

やがて娘は美しく成長する。

しかし娘と父には母親も知らない秘密があった……

ギリシア神話と鬼子母神を下地にした、禍々しくも耽美な物語。

「万灯」

大手商事会社に就職し、コネとカネを巧みに使い資源開発に生涯を捧げてきた「私」。

だが新たな赴任地で究極の選択を迫られる。

裁きとは?使命とは?

本作最も読み応えのある作品。

「関守」

貧乏ライターの「俺」は次回の特集で都市伝説系の記事を任される。

ネタに困った俺は先輩に「死を呼ぶ峠」の話を聞き、峠に向かうが……

表題の意味が分かった瞬間、背筋が震える。

「満願」

学生時代、献身的に尽くしてくれた下宿先のおかみが「私」の初めての弁護人だった。

彼女の無実を証明するため私は奔走するが……

彼女の出所当日に私が明かす過去の真実とは?

『満願』の感想・特徴(ネタバレなし)

「夜警」「万灯」:物語性のある作風とエンタメ要素の融合

はじめに「夜警」と「万灯」のおすすめポイントをご紹介する。

この2つの短編は、とにかくグイグイと読ませる話づくりの上手さドラマ化にふさわしい映像的なシーン切り替えの巧みさが面白い。

さらに、そうしたエンタメ要素の中にただ「ああ、面白かった」で終わらせない、山本周五郎賞受賞にふさわしい、人生について考えさせられる物語性がふんだんに詰まっている点も魅力だ。

両作品とも出世に命を賭けた男たちの物語で、その結果、自分の選択が人の生死を変える経験を通じて、彼らは自らの人生を自問自答することになる。

「夜警」では、主人公の柳岡巡査長が部下の殉職をめぐり、出世コースに熱を上げていた自分の人生を問い直す。

「万灯」では、大手の商事会社に就職し、結果のためなら手段を選ばなかった「私」がついに犯罪にまで手を染め、己の選択の是非を見つめ直す。

両作品に共通しているのは、「本当の罪」とは何かを問うていることではないだろうか。

私たちは何が正しくて、何が間違いなのか、そもそもの根拠が不安定な社会で生きている。

それは、大量殺人者が戦争では肯定されて英雄となり、日常生活では、精神異常とみなされ絞首刑になる世界だ。

「夜警」や「万灯」の主人公は、どちらも決して私利私欲のために動いていたわけではない。

彼らは本気でそれが最善の選択だと信じていたのだ。

それにも関わらず、運命の歯車は少しずつ彼らの首を絞め、罪人として断罪されることになる。

私は裁かれている。これまで、どれほど困難な情勢の中でも最善を尽くしてきた(中略)
私は大きな成果を上げた。その成果は会社の利益となるだけでなく、多くの人々の生活を豊かにするはずだ
(「万灯」)

自らの信念に従い選択した結果、生まれた「罪」。

それを裁くのはいったい誰なのだろうと考えさせられた。

「死人宿」「柘榴」「関守」:これぞ米澤穂信!ミステリーがおもしろい

「いまの話を聞いても、泊まる気はある?あるなら、お会計は安くしておくわ」

次に「死人宿」「柘榴」「関守」のおすすめポイントをご紹介する。

これらの3作品に共通することは、短編という限られたページ数の中でトリックからオチまでが鮮やかな米澤穂信らしい作風のミステリー要素がふんだんに詰め込まれていることだ。

たとえば「死人宿」では、急に行方の分からなくなった元恋人の消息を追って、主人公が「死人宿」と呼ばれる自殺の名所へたどり着く。

そこで主人公は落ちていた「遺書」の持ち主探しを手伝うよう元恋人に頼まれる。

宿に泊まる客人は「躑躅(つつじ)の間」「木蓮の間」「胡桃の間」の3名。

その中の1人が今日自殺しようとしている。

それは一体誰なのか?

主人公が、人の感情の機微に疎い面がある一方、証券会社に勤めるエリートらしく頭のキレと洞察力を持つ人物だからこそ成立する推理モノだが、結末の意外性と背筋の震えるオチに、一体何を読み落としたのだろう、と読後もう1度読みたくなること間違いなしだ。

また、「死人宿」が「冥界」を連想させる言葉であり、古事記やギリシア神話にもあるような「亡き人を探して主人公が生者と黄泉の国の境界を通って冥界に下る」という構造が、この「死人宿」と次の「柘榴」、「関守」とを繋げているように感じた。

「満願」:表題の意味が謎かけとなっている

最後に「満願」のおすすめポイントは、意味深なタイトルからくる謎かけだ。

この物語はあらすじでも簡単にご紹介した通り、学生時代に世話になった下宿先のおかみ、妙子の裁判を、数年後に弁護士になった「私」が担当するという話で、彼女の出所当日に、語り手である現在の私がそれらの「過去」を回想する物語となっている

私は妙子を放蕩の旦那を甲斐甲斐しく支える献身的な妻と回想するが、同時に妙子が旦那の留守中、私に西瓜を勧める下の場面のように、勉学に励む下宿生の私にも心配りを忘れない優しさと心の強さを併せ持つ女性として描かれている。

「この世はままならぬものです。泥の中でもがくような苦しい日々に遭うこともあります。ですが藤井さん、矜持を見失ってはいけません」

縁側の戸を開け放ち、簾を下して、部屋に風を通してある。折良くその風が吹き、軒端の風鈴が軽やかに鳴った。妙子さんは浴衣姿で、手には団扇を持っていた

しかし、そんな妙子が罪を犯し、彼女の裁判の謎が明かされるにつれ、事件の真相は思わぬ方向へ向かう。

一般的に言葉としての「満願」には以下の2つの意味がある。

  1. 願望が満たされること
  2. 期限を定めた神仏への祈願の日数が満ちること

この作品における「満願」の意味は、最後まで読めばどちらの意味も込められていることに気づく。

しかし、不可解な点は、妙子が達磨を購入したのは事件が起きる以前のことで、「片目の入った達磨」にはそもそも何の願いがかかっていたのか、それが最後まで読んでも正確にはわからないということだ。

さらに私は最後に妙子の旦那の言葉を思い出し、共感を示すが、その解釈は読んだ人の数だけあり、男性と女性では受け取り方も異なるだろう

しかし、少なくとも私にとっては、法律を生業とする身でありながら、「過去」を「過去」として伏せたままにしようと考える「私」は、ある意味では背を向けた達磨と同じなのではないかと感じた。

「夜警」や「万灯」の感想と同様、人の罪を裁く権利のある人間などいるのだろうか、と考えさせられる。

また、タイトルに込められた「満願」の意味とは、妙子の願いだけではなく、私の願いの成就をも意味するものではないかとも感じるラストだった。

まとめ

面白いTVドラマを見る感覚で、夢中でページをめくる読書時間だった。

ちなみに「関守」の「桂谷峠」は静岡県の伊豆市に実在する場所で、そのうねり曲がった山道では実際にお地蔵様が小さな祠にまつられている。

また、埼玉県の秩父市にある「満願の湯」という温泉宿も、もしかしたら米澤先生にインスピレーションを与えたのかもしれない。

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