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住野よる「音楽」を語る【THE BACK HORN・志磨遼平・sumika・BiSH】

読書好きには音楽の、音楽好きには読書の魅力を伝えるクロスカルチャー・インタビュー企画第6弾。

今回のゲストは、原作小説・映画共に大ヒットを記録した『君の膵臓をたべたい』の著者住野よる。

実は「大の邦ロック好き」という一面も持つ彼に、好きな音楽について存分に語ってもらった。

住野よる
小説家。2015年『君の膵臓をたべたい』でデビュー。主な作品に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』や『青くて痛くて脆い』などがあり、今年3月に新作『麦本三歩の好きなもの』が発売。作中で実在するバンドも登場。7月まで週刊新潮にて『この気持ちもいつか忘れる』を連載。

THE BACK HORNは作風に明らかな影響を受けたバンド

ーー普段どんな音楽を聴いていますか?

日本のバンドをよく聴きます。

ーーよく聴くアーティストはどなたでしょうか?

今年は、一番聴いているのも一番ライブに行っているのもTHE BACK HORNですね。

ーーTHE BACK HORNのおすすめの曲があれば教えてください。

『戦う君よ』『コバルトブルー』『ハナレバナレ』は、まだTHE BACK HORNを聴いたことない人たちにも聴いてほしいです。

『戦う君よ』はTHE BACK HORNのカッコいい部分が全て詰まっている曲です。MVも意味深な感じで好きですね。


『コバルトブルー』は歌詞の意味について考えながら聴くとまた違う楽しみ方ができる。

『ハナレバナレ』は、THE BACK HORNの曲に関われた喜びが大きすぎてフェアに見れないですが、めちゃくちゃかっこいい曲ですね。

ーー『ハナレバナレ』は、THE BACK HORNが住野さんの小説の世界観を表現して作った曲ですよね。

そうなんです。今、THE BACK HORNとのコラボ企画をさせてもらっていて。

僕はTHE BACK HORNに影響を受けながら小説『この気持ちもいつか忘れる』を週刊新潮で連載し、THE BACK HORNには僕の作品を読んでもらって『ハナレバナレ』を作ってもらいました。

音楽と小説という2つの異なるジャンルで互いにインスパイアし合う創作プロジェクトです。

ーー企画が決まってどのような気持ちでしたか?

THE BACK HORNは僕が作風に明らかな影響を受けたバンドなので、めちゃくちゃ嬉しかったですね。

以前、ライブで『ハナレバナレ』をやられたんですけど、その際に「小説家住野よるさんとのコラボ曲」とMCで言ってくださったんです。

ライブハウスで好きなバンドマンに名前を呼ばれるって、「今後の小説家生活でこれを超えることってあるのかな」と思うほど嬉しかった。

ーー住野さんが音楽を好きになるポイントってなんでしょう?

歌詞ですね。ちゃんと言いたいことがある歌詞が好きです。

あとは唯一無二なバンドが好きで、MOROHAとか凄く良いですね。

ーーMOROHAの好きな曲は何でしょうか?

『五文銭』はたまらないですね。

音源収録される前にライブで聴いたんですけど、

めちゃくちゃに売れたら俺は変われるか? 寂しさの死神はどっか消えるか?

という歌詞を聴いた時は崩れ落ちるかと思いました。

揺れ動くサイリウム 舞い踊るアイドル どっからどう見たって俺が挑戦者

というフレーズも最高ですね。これを実際にアイドルと対バンしながら歌えるところがすごいカッコいいと思いました。

僕もデビュー当時、担当の編集者さんから「どの本が良い悪いだなんて言ってる場合じゃない。僕たちが相手にしないといけないのはスマホだ」と言われたので。

メッセージを歌詞に乗せて伝えている曲はとても好きです。

ーーライブにもよく行かれるとのことですが、好きなライブハウスはありますか?

大阪にある十三ファンダンゴの雰囲気が好きでしたね。今はクローズしてしまいましたが。

いつか行ってみたいと思っているのは「浜松窓枠」というライブハウスです。

志磨遼平さんが自分の宗教だった

ーー今後お会いしてみたい方はいますか?

志磨遼平さんに会ってみたいです。紙面では関わったことがあるんですけど実際にはお会いしたことがなくて。

志磨さんについては、「影響を受けている」というのともちょっと違う感じがしてて、宗教なんですよね(笑) 一時期は「志磨さんに顔向けできるか」ということを行動の基準にしていたことがありました。志磨さんに胸をはれる人生なのかと。

ーー神様みたいな存在ですね(笑)

志磨さんにアニメ版『君の膵臓をたべたい』の感想を聴くというニュースサイト・ナタリーの企画があったんですが、志磨さんが「恋愛というより”価値観”がこの作品のテーマなのかな」とおっしゃってくれて。

僕はこの作品を恋愛小説として書いたつもりはなかったのですが、アニメ関係者ですらそう見てる節があって落ちこんでた。でも、「志磨さんが分かってくれるなら」とすごく満たされた気持ちになりました。

ーー志磨遼平さんのどういったところが好きなんでしょうか?

ずっと「志磨遼平」っていうスターのままなんですよ。憧れますね。自分には出来ないので。

志磨さんがボーカルを務めていた「毛皮のマリーズ」の音楽に何度も助けられています。『シスターマン』という曲の

もしもこのまま 君が年をとって 笑われながら死んでも

僕はきっと そう、僕だけはきっと 君を笑いはしないさ

と言ってくれることが10代の人間にどれだけ心強いか。

アイドルも好き

ーー邦ロック以外の音楽も聴きますか?

作家デビューをきっかけにアイドルの曲も聴くようになりました。

アイドルのファンの方々から「〇〇ちゃんが住野よるさんの作品を読んでいるみたいなので曲を聴いてあげてください」という報告をいただくようになって、そこからBiSH、ベイビーレイズJAPAN、PassCodeあたりを聴き始めましたね。

ーーBiSHのモモコグミカンパニーさんは、住野先生の新作『麦本三歩の好きなもの』の表紙を担当されていますよね。

彼女がライブの曲中にビンタをされるふりつけがあって、その時のムッとした表情が主人公の麦本三歩っぽかったんです。

三歩の可愛さって笑っているところではなくて、ムッとしたり困ったりしているところだと思っていたので、その瞬間ピンときてライブの後すぐに担当さんに連絡しました。

モモコグミカンパニーさんがご自身の体験を綴られた著書『目を合わせるということ』を読みましたが、彼女は元々映画館でアルバイトをしていた普通の人なんです。

そんな人が「BiSHのモモコグミカンパニー」というアイドルを演じて世を席巻しているストーリーが凄く好きで応援してしまいますね。

本が本だけの世界にあったり、CDCDショップだけにあったりするのってもったいない

ーー住野さんは著書の登場人物たちにすごく愛着を持っていらっしゃるように感じます。

僕が書いた登場人物たちは全員実在していると思っているんです。

会ったことがないだけで、この世界のどこか、いつかには絶対いる。本人が僕の作品を見て「こんなの私じゃない」と思わないように書いています。

ーー『麦本三歩の好きなもの』は三歩のキャラクターとしての魅力もありますが、文章のリズムがとても良いですよね。

ストーリー性よりは、読んでくれた人が心地よくて面白いものになるよう意識して書きました。ラップを聴きながら書いたんです。

ーーラップといえば「麦本三歩はライムが好き」という章がありましたね。

あれは韻を踏みまくってますね。他社の担当さんには「どこを踏んでいるのか分からない」と言われてしまいましたが(笑)

『麦本三歩の好きなもの』という小説は、Creepy Nutsの『トレンチコートマフィア』という曲の一節に価値観が似ているんですよね。

美化されまくったヤンキー漫画じゃ描かれなかった 「迷惑かけられた側」

というフレーズがまさにそうで。三歩も普通のストーリーでは書かれる必要のない女の子です。完全に脇役。だからこそ書いてあげようと思いました。

ーー本と音楽には何か共通点があると思いますか?

文章力があるとはどういうことなのかをよく考えるんですが、語彙力とかではなくて文章のリズム感だと思うんですね。

文章力のある人が書いた文章は、歌詞を聴くような感覚で読めるんです。彩瀬まるさんの小説なんかは特にすごくて。読んでいて詰まるところが一切ない。

ーー私たちは本と音楽を組み合わせる「Book Ground Music」というWebサービスを運営しているのですが、どう思われますか?

実はTHE BACK HORNとのコラボ企画も近いものがあります。

本が本だけの世界にあったり、CDがCDショップだけにあったりするのってもったいないと思っていて。

「本がもっと大きいエンタメになって、小説がタワレコに置かれて、THE BACK HORNのCDが紀伊國屋に置かれれば良いのに」と思って始めたので、こういうアクションがもっと大きくなればいいなと感じます。

普段本を読まない人にも「面白い」と思われたいですね。

ーー住野さんが思いつく本と音楽の組み合わせがあれば教えてください。

自分の作品であれば『また、同じ夢をみていた』のタイトルは実は10‐FEETの『蜃気楼』の歌詞からいただいているんです。

あえてそれ以外を選ぶとしたら、日食なつこさんの『廊下を走るな』。どちらも子供のころに教わったはずなのに、大人になって忘れてしまったことについて表現しています。

『君の膵臓をたべたい』は、アニメ版はsumika、実写版はMr.Childrenに主題歌を担当していただいているんですけど、GOOD ON THE REELの『素晴らしき今日の始まり』も合うと思います。

これは桜良を失った主人公に聴かせてあげたい曲です。彼がいつか街角でこの曲を聴いてふと立ち止まる瞬間があるんじゃないか、なんて想像しています。


『か「」く「」し「」ご「」と「』は、NUBOの『ナイモノバカリ』が合うと思います。「足りないものばかりだけど、それと向きあおう」という曲です。まさにですね。


他の方の作品であれば、彩瀬まるさんの『朝が来るまでそばにいる』にはillionの『MAHOROBA』ですかね。怪しさと優しさのバランスがピッタリ合います。


渡辺優さんの『地下にうごめく星』は地下アイドルのお話なんですが、第2期BiSHの『アゲンストザペイン』を思い出します。歌詞というよりは、宿っているエネルギーですね。

sumikaはやりきっているのがカッコいい

ーー住野さんにとって読書とはどういうものですか?

娯楽だと思います。生きる上で必要ないのにそれでも欲する人がいるのが美しい。

筋トレみたいな良さもありますね。無意識では動かせない心の筋肉を無理やり動かすために読む。

また、受け取る人それぞれの答えがあるのも読書の魅力だと思います。例えば部屋の情景ひとつとっても、カーテンの色や部屋の形は人それぞれ違う。

豊かな遊びだなと思います。

だから、僕の小説のキャラクターを嫌いな人もいるし、いてもいいと思うんです。

ーーどのようなキャラクターが嫌われているのでしょうか?

主人公ならぶっちぎりに嫌われているのは『痛くて青くて脆い』の楓ですね。

担当さんたちですら「楓が好き」っていう人はほぼいない(笑)

「ちゃんと嫌われなきゃ」と思って書いたので、そこは良かったなと思いますね。

ーー『痛くて青くて脆い』では、BLUE ENCOUNTの『もっと光を』が使われていましたよね。

担当さんから「本のMVを作ろう」という提案があって、『もっと光を』を選ばさせてもらいました。

ギタリストの江口さんがずっと応援してくれていたというのと、ある種の狂気的な真っ直ぐさが欲しかったんです。BLUE ENCOUNTにはそれを感じて。

ーー狂気的な真っ直ぐさ、という点ではSUPER BEAVERにも近いものを感じます。

SUPER BEAVERも大好きです。

『361°』が一番好きですね。この曲は「1周回った場所からの1歩目」という曲で。

僕がTwitterで「SUPER BEAVERが好きだ」と言っていたら、読者さんから「同じレーベルのsumikaというバンド知ってます?」と教えてもらいました。聴いてみたらすごくカッコよくて、それがsumikaとの出会いです。

ーーsumikaは、アニメ『君の膵臓をたべたい』の主題歌に採用されていますよね。

それがあって、より大ファンになりました。横浜アリーナのライブに行ったんですが、「今日sumika初めて見た人?」という質問に半分くらいのお客さんが手を挙げていて、びっくりしました。

これだけ新規のファンが増えていて、更にきっとまだ売れる。だから原作者である僕もなかなかチケットが取れません(笑)

ーーsumikaは何の楽曲がお好きですか?

タイミングによって違いますが、今は『雨天決行』が好きです。初期の曲なんですけど、全ての創作者に共通することを歌っていると思っています。

生まれ落ちた排泄物

汚くて恥ずかしい筈が

極稀にこう言われるんだよ

「綺麗だね、素敵なものだね」

sumikaの片岡さんの作詞能力って本当にすごいんだと思うんです。音へのはめ方も絶妙に気持ちいいし、良い意味で頭の中の容量がおかしい。

sumikaみたいなオープンな音楽とか、SUPER BEAVERの真っ直ぐな感じとかって、中途半端だとまたちょっと違うかもと思うんですけど、そこをやりきってるところがカッコいいですね。

小説でも中途半端なのが一番カッコ悪い。僕も振り切らなきゃいけないと思いますね。

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