大好きな作家さんである角田光代さんのおすすめ作品を独断で選んでみました。
私は元々読書が好きでしたが、のめり込むほどの「読書マニア」になったのは角田光代さんの作品がきっかけです。
角田さんの作品は「何故こんなにも人の心境を描き出すのが上手いんだろう?」と思うほど心理描写が細やかで的確。
そんな鮮やかな「角田ワールド」に浸れるお手伝いを少しでもできたら、という思いでこの記事を書かせていただきました。
私にとってはどれも1番の作品なので、ランキングはつけずに全て個別に紹介したいと思います。
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・八日目の蝉
・愛がなんだ
・対岸の彼女
・だれかのいとしいひと
・今日も一日きみを見てた
角田光代とは?
神奈川県横浜市出身。1967年3月8日生まれ。
代表作…『八日目の蝉』『対岸の彼女』『キッドナップ・ツアー』『紙の月』
デビュー作…『幸福な遊戯』
海燕新人文学賞(1990年)、野間文芸新人賞(1996年)、坪田譲治文学賞(1997年)、路傍の石文学賞(2000年)、婦人公論文芸賞(2003年)、直木三十五賞(2005年)、川端康成文学賞(2006年)、中央公論文芸賞(2007年)、伊藤整文学賞(2011年)、柴田錬三郎賞(2012年)、泉鏡花文学賞(2012年)
『八日目の蝉』
#井上真央×永作博美主演映画の原作 #第2回中央公論文芸賞受賞
角田光代さん、と言ったら実写映画化されたこの作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
主人公の希和子は、想いを寄せていた男と別の女との間に出来た赤ちゃんをほんの出来心から誘拐してしまいます。宗教施設や、海の見える町、希和子は「薫」と名付けた女の子を連れて、警察の目をかいくぐり逃げ続けます。そして行きつく先は…。
最初から最後までハラハラとドキドキが止まらない、スリリングで、また角田さん独特の毒を含む世界観が魅力的。
角田光代さんの本をまだ読んだことがない方は、角田さん入門書としてすごくおすすめです!
『さがしもの』
単行本での旧題は「この本が、世界に存在することに」となっていましたが、文庫化で「さがしもの」と改題されました。
本にまつわる9つの短編が収録されていて、本好きにはたまらない一冊となっています。
ひとり暮らしすることをきっかけに、一冊の本を売り、その本が“旅”をしていく「旅する本」、あまりにも本が魅力的に見えて初めて万引きをしてしまった書店にまつわるお話「ミツザワ書店」など、紹介したのは一部ですが、他にも魅力的な短編がたくさん詰まっています。
ページをめくるごとに本に対する愛情を再確認するような、そんな一冊です。
『くまちゃん』
タイトルはとっても可愛いですが、毒だらけで読むごとに刺さってくる、とっても鋭利な本です。
と言うのもこの短編集は全部「振られる」ことをテーマにして書かれている失恋小説だからです。
くまのプリントがされたTシャツを着ているバンドマンに恋してしまい、その恋はとてもつらく苦しいものとなっていく表題作の「くまちゃん」や、交際した男性の数と振られた男性の数がぴったり一緒の主人公の失恋を描く「乙女相談室」など。
例えば失恋したときは、思いっきり失恋ソングを聴く派と全然関係ない事をして気を紛らわす人がいると思いますが、この作品は前者の人におすすめです。
すごく真正面から“失恋”を描いているので、爽快感すらあるこの本を読んであなたも泣いてみませんか?
『対岸の彼女』
女同士の友情を描いた第132回直木賞受賞作品。
小夜子という一人の主婦が、面接で女社長の葵と出会いベンチャー企業に勤める所から物語は始まります。そして、物語は葵の過去と交錯していきます。葵とナナコという少女の間に生まれた、異様とも呼べる友情関係…そして家出、心中未遂。
壮絶な過去を持つ葵と友情のようなものを芽生えさせていく小夜子。女同士の絆をここまで鮮烈に描ききった作品を、私は他に見たことがありません。読了後しばらくこの本の世界観にぼんやりとしてしまう程、私は打ちひしがれました。
個人的に角田さんの作品をこれから読みたいと思う方には必読な一冊だと思います!
『愛がなんだ』
決定的に「ダメ」な男マモちゃんに恋をしてしまったテルコという女性が主人公のお話。
何をするにもマモちゃん最優先、仕事さえもおろそかにする、言われれば何でも言う通りにする――テルコもテルコでどこか欠けてしまっているのです。しかし、そんなに愛してもマモちゃんはテルコの事が好きではなく、辛い恋にテルコは苦しみ続けます。
毒を含むどころか、毒が全面に出ていて「角田ワールド全開」といった感じのこの作品は、読んでいて苦しいのにページをめくる手が止まらない、共感度がかなり高い本です。
ついつい男性に振り回されてしまう…そんな女性がこの本を読むと「わかるわかる!」と思ってしまうのではないでしょうか。
『エコノミカル・パレス』
後に「フリーター文学」と呼ばれるようになったこの作品の主人公は、34歳フリーターの「私」。
同棲相手の男性は「タマシイのない仕事はしたくない」などと言いまともに働かず、生活費のほとんどを「私」が工面していました。そんなとき携帯に突然かかってきた「テキ電」――適当に番号を打って電話すること――で「私」は一人の男に恋をします。
何もかもが行き詰まって行くような感覚に襲われながらも、「ラストはどうなるんだろう…」と苦しいながらも読ませてしまう角田光代さん独自の世界観が魅力。
私は角田さんの小説に含まれる毒を「癖になる毒」と呼んでいます。この作品はまさにその「癖になる毒」がたっぷり含まれていて、最高のエンタテインメントです。
『紙の月』
最も美しい横領犯。――実写映画にはそんなキャッチコピーが掲げられていました。
2014年に映画化されたこの作品は、読んだ当時そのあまりの壮絶な世界観に衝撃を受けました。
主人公の梅澤梨花が化粧品欲しさに勤め先である銀行のお金に手をつけてしまう所から物語は始まります。真面目な仕事ぶりを評価されていた梨花でしたが、ある日顧客の孫である年下の男の子・光太に恋をしてしまい、彼にお金を貢ぎ始めます。総額1億にものぼる横領を繰り返す梨花はもう戻れない所まできていて…。
どんどん主人公の梨花が堕ちていくので不安になりながらも、ドキドキしながら読んでしまいます。これもきっと「癖になる毒」だと私は思います。
ハラハラドキドキのサスペンスを読みたいのならば、ぜひこの一冊を読んでみてください。
『森に眠る魚』
東京・文京区――そこで出会った5人の母親。いわゆる「ママ友」とも呼べるその関係性は、どんどん歪んだ形へと変容していく。
都会の華々しい生活にコンプレックスを抱く容子、消費者金融に手を出してしまう繭子、社長夫人で何不自由ない暮らしをしているがデザイナーの妹にコンプレックスを持っている千花、教育熱心な親が原因で新興宗教に入っていた瞳、好きだった男の妻に対抗して自分の子供を無理矢理受験させようとしているかおり。
角田さんは本当に女性同士の関係を書くのが上手で、誰も彼も癖のあるこの5人が複雑に絡み合っていく様を鮮やかに描ききっています。
まさに渾身の「ママ友」小説と言えるでしょう。
『それもまたちいさな光』
主人公の仁絵は、仕事中にかけている「モーニングサンシャイン」というラジオの竜胆美帆子の喋りを、「それにしても、毎朝よくこんなどうでもいいことをぺらぺらとしゃべれるものだなあ」と思いながらもそのどうでもよさが心地よくて、毎日ラジオを聴き続けています。
35歳独身、結婚もせず働き続ける中、このまま一人で歳をとっていくのかと悩んでるところ、幼なじみの雄大から「35歳になってどちらも独り身だったら結婚しようって約束したのを覚えているか」と持ちかけられます。しかし、仁絵にはその雄大の誘いには乗れない理由があって…。
30代と言えばこれからの人生を考えてしまう年齢。人生の岐路にもなりうる年頃でしょう。そんなときに幼なじみから結婚を持ちかけられたら自分ならどうするのだろう、とついつい感情移入してしまうのが角田さん作品の魅力の1つです。また、「モーニングサンシャイン」の竜胆美保子が意外な形でこの物語に絡んでいくのもこの作品の面白い所。
大人のラブストーリーとして極上の一冊です!
『おまえじゃなきゃだめなんだ』
ジュエリーに関する作品が多く目立つので、私はこの本が宝石箱のような本だと思っています。
一つ一つの作品は小さかったり大きかったりするけど、どれもキラキラと輝いていてロマンチックな気分にさせてくれる最高の恋愛短編集です。
結婚をテーマにした作品も多いので、きっとこの小説は大人向けの恋愛小説だと思います。全ての「恋する大人」に読んでほしい一冊。
おわりに
角田光代さんの作品はどれも本当に魅力的で、読み始めたらのめり込んでしまい離れられなくなる不思議な引力があります。
毒のある作品が多いですが、この記事でも何度も取り上げてるとおり「癖になる毒」で、つらい話だとわかっていても読むのがやめられない、いわば人間の怖い物見たさ、の心理を刺激する作品が多いです。
角田光代さんの作品をまだ読んだことがない人は、ぜひこの記事で取り上げた作品、また他にもたくさん刊行されているので、そちらも併せて読んでみてください。
そして一人でも多くこの「角田ワールド」の虜になる人が増えてくれたら、嬉しく思います。
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