string(10) "is_single "
bool(true)
string(7) "is__mc "
string(149) "a:4:{s:3:"top";s:4:"7500";s:4:"path";s:21:"2022/12/magazine3.jpg";s:4:"href";s:23:"https://amzn.to/3FO5GqE";s:10:"categories";s:14:"1909|1911|1910";}"
string(15) "is__categories "
array(3) {
  [0]=>
  string(4) "1909"
  [1]=>
  string(4) "1911"
  [2]=>
  string(4) "1910"
}
string(17) "is__has_category "
bool(false)
string(13) "get_category "
object(WP_Term)#7109 (17) {
  ["term_id"]=>
  int(430)
  ["name"]=>
  string(18) "インタビュー"
  ["slug"]=>
  string(9) "interview"
  ["term_group"]=>
  int(0)
  ["term_taxonomy_id"]=>
  int(430)
  ["taxonomy"]=>
  string(8) "category"
  ["description"]=>
  string(164) ""
  ["parent"]=>
  int(0)
  ["count"]=>
  int(16)
  ["filter"]=>
  string(3) "raw"
  ["term_order"]=>
  string(1) "6"
  ["cat_ID"]=>
  int(430)
  ["category_count"]=>
  int(16)
  ["category_description"]=>
  string(164) ""
  ["cat_name"]=>
  string(18) "インタビュー"
  ["category_nicename"]=>
  string(9) "interview"
  ["category_parent"]=>
  int(0)
}
string(7) "is__mc "
string(0) ""
string(7) "is__mc "
string(0) ""
string(12) "is__mcbride "
NULL
string(13) "is__url_path "
bool(false)
bool(false)
bool(false)
string(13) "is__url_path "
bool(true)
bool(true)
bool(true)
string(12) "is__toppage "
NULL
bool(false)

人気音楽プロデューサー/ソロアーティスト、浅田信一が村上春樹を語る

読書と音楽のクロスカルチャーを実現する「本×音楽インタビュー企画」第4弾。

今回は、村上春樹を敬愛する音楽プロデューサーの浅田信一さんにインタビューを行った。

アーティストが産み出した楽曲を託され、預かった子供を大人へと導いていくプレッシャーや責任感は相当なものだろう。

読書の魅力やそこから得られるもの、音楽プロデューサーのお仕事などについて語っていただいた。

浅田信一
シンガーソングライター、音楽プロデューサー。
1995 年にメジャーデビューしたバンド、Smileの元フロントマン。
現在はソロアーティスト活動をメインにおきながら、クリープハイプや高橋優をはじめ、新人バンドから大御所まで様々なアーティストのサウンドプロデューサーとして活躍中。作詞家としてもKinKi Kidsや関ジャニ∞等、ジャンルレスに作品を提供している。8 月 21 日には 3 年半ぶりのソロアルバム「DREAMS」をリリースする。また 8 月 25 日には渋谷クラブクアトロにて生誕 50 周年のアニバーサリーライブ「浅田信一クロニクル」を行う予定。

文体が音楽的かつポエム的だったのが衝撃的でしたね

ーー村上春樹さんの小説が好きだと伺いました。

村上春樹さんの小説は全部読んでます。僕が20代のときに『ノルウェイの森』がベストセラーになって。その頃って多感な時期だし、流行り物として手に取ったけど、そこからドップリとハマって初版を発売日に手に取るようになりました。

ーーどのような衝撃を受けましたか?

僕はミュージシャンでソングライターだから歌詞も書くんです。だから国語的なものはすごく好きで谷川俊太郎の詩とかも興味があって10代のときから触れていたんですけど。

僕の読んでいた詩と、共通するものを村上春樹さんの文体から感じたんですよ。ストーリーも衝撃的でした。『ノルウェイの森』の主人公は大学生で、当時年齢が近いからストーリーに対してシンパシーもあって。それでもやっぱり、文体が音楽的かつポエム的だったのが衝撃的でしたね。

ーー読んでいて気持ち良いリズム感がありますよね。

そうですね。当時、村上春樹さんと同じように村上龍さんも人気があって。村上龍さんの作品もすごくリズムがあります。

でも、村上龍さんのリズムと村上春樹さんのリズムは全然違う。

ーー村上龍さんの文章はロックな印象、村上春樹はジャズ的なニュアンスを感じます。

いろいろ調べていくうちに村上春樹さんが過去にジャズ喫茶をやってたりと、ジャズ愛好家ってことを知って。そういうものに影響を受けてるんだなと思いましたね。

当時はまだ若くてジャズを聴いてなかったから”村上春樹さんの文体=ジャズ”とは感じてはいなかったです。今はジャズのレコードも聴くようになったから、改めて考えてみると確かにジャズっぽいところがあるなと。

ーーしかしロックとジャズは具体的にどう違うのでしょう?

僕はジャズっていうのはアドリブだと思っていて。主に60年代以降のジャズなんですけど。ロックというのはもっとコンパクト。決まったリフをつくっていく感じです。

ーー村上龍さんも読まれるんですね。

村上龍さんは『コインロッカー・ベイビーズ』から読みました。村上龍さんの小説は映画的というかビジュアルが浮かんでくる感じがします。村上春樹さんは映画というよりは、霧がかかったようなぼんやりとしたビジュアルが浮かんでくる感じ。

ーー村上春樹さんの小説はなかなか理解しきれないのですが、浅田さんはいかがですか?

あらすじは難解ですね。ストーリーを追うよりもこの作品を通じて伝えたいことってなんだろうっていう楽しみ方をしていますね。難しいからこそ、何十回も読める。

ーー村上春樹さんとRadioheadには共通する部分がある気がしていて。

村上春樹さんはRadioheadが好きなようですし、トム・ヨークも村上春樹さんの作品に影響を受けているようなので、共通するものがあるのかもしれませんね。

ジャズピアニストのビル・エヴァンスは一聴すると耳当たりの良い綺麗でロマンティックな音楽なんですけど、実は彼はドラック中毒者で、精神的にも肉体的にもボロボロになって短命で亡くなりました。

表面的にはかっこよかったり、取っ付きやすいんだけど、心の闇のような内面性が滲み出てる。分かりやすくてポップなんだけど、根底に流れているものはすごくドロドロとしてるというか。村上春樹さんも、彼らの音楽も、本当に表現したいことはもっと深いところにあるような感じがします。

ーーやはり、そういう人が売れていくんですか?

そうとは言い切れないですね。根底に流れているものが深い人と浅い人、どちらが良い悪いではないです。そういうのが深すぎるために売れない人もいますしね。

例えば、村上春樹さんの文体が昭和初期の作家みたいな文体だったらここまで売れていないと思うんです。

根底に流れるテーマは重いものなんだけど、表面的にはなんだかお洒落じゃないですか。ジョン・レノンを例に挙げるとすれば、良い意味での軽薄さを持っていて、心の奥のネガティブな部分とアメリカのポップミュージックの華やかさに憧れたジョンならではのバランス感覚を持ってると思うんです。そういうところに人々は惹かれるんじゃないかな。そういうバランスを取れる人が音楽の世界でも評価されている気がしますね。

浅田信一さんおすすめの4冊

ーー今日は好きな本を持ってきて頂いたんですよね。

村上春樹さんの短編小説集です。

アメリカ人が選んだベスト版みたいなものですね。村上春樹さんは短い小説の中での表現が良いなと思っていて。切り取った一場面をパッと小説にしてしまうというか。短編から長編になるってパターンもあります。『ねじまき鳥と火曜日の女たち』って話も、ねじまき鳥って言葉が出てきてますしね。スパゲティ茹でてるシーンはこの話から出てきてます。『納屋を焼く』とかも好きです。主人公がストレス発散のために物置小屋を焼く、放火魔の話。日常と狂気の境目の曖昧さを表現したいのかなとは思うですけどね。タイトルの付け方も上手いですよね。

あとはポール・オースターの『ムーン・パレス』。

これは翻訳が、村上春樹さんとも所縁の深い柴田元幸さん。柴田元幸さんの訳す言葉の使い方が、村上春樹さんにリンクするものがあって村上春樹好きの人には更にオススメです。

ポール・オースターが書く小説も、なんとなく村上春樹さんの作品と通ずるものがあると思います。

当時、大学生だった主人公が過去を振り返りながら小説を書いていて。NYで暮らしている主人公が自分探しの旅をするためにアメリカを東から西に横断し、旅をしながら出会い別れを経て少年から大人になっていく物語です。20代の半ばくらいに読んだけど、年齢も主人公に近かったっていうのもあって、主人公に共感することが多かったですね。

ーー過去を振り返ってる物語は、何十年後とかにもう一度読んでも違う楽しみ方が出来そうですね。

ノスタルジーに浸れるような気がしますね。若かった頃を思い出しながら。お酒飲みながらも良いかもしれないです。

ーーこちらの辞書のような分厚さの本はなんですか?

これは沢木耕太郎さんの『深夜特急』。

これも20代の頃に読んですごい影響を受けて、僕も実際にバックパックを持ってインドに行きました。

ーーインドは価値観が壊れるって言われますよね。

価値観とか生死感とか崩壊しますね。河原で死体を火葬してるし、旅行者を騙そうとする人も多い。お店でお釣りをもらうのにも一苦労します。もちろん悪い人ばかりではありませんが。インドに行けば生きていく上でのタフさが身につけられますよ。

ーーこちらの本はなんでしょうか?

佐藤正午さんの『月の満ち欠け』です。

佐藤正午さんの作品はとても綿密に作り込まれていて、これぞ小説というのが僕の印象です。

ストーリーがしっかりあるし、ファンタジーの要素も入ってる。それでいて文体も美しい。

ストーリーの組み立てがしっかりしてるから、どういうお話なのって聞かれたらちゃんと説明できるというか。逆に村上春樹さんの作品は熟読しているはずなのにあらすじを教えてくれと言われても難しい。

あらすじとしては好きな人に会うために何回も生まれ変わる女の子の話。霊魂的な側面もあるからファンタジーなんだけど、好きな人に対する恋心の書き方は、恋愛小説的でロマンチックなんです。輪廻転生していくロジックの書き方が緻密だから、すごく小説っぽいんですね。佐藤正午さんの小説は結構そうなんだけど、この作品は特に話の作り方が上手いです。だから佐藤正午さんの小説は一気読みしたくなりますね。

若い人は本を沢山読んだ方が良い。とくに20代の頃に吸収したことって、その先の人生ですごく糧になっていきます

ーープロデュースや演奏の他に作詞もされていますが、浅田さんが影響を受けた本はありますか?

村上春樹さんから影響を受けてます。言葉のチョイスもそうだし、僕の歌のなかに出てくる主人公の一人称を”俺”ではなく”僕”にするのも、もしかしたら村上春樹さんの影響かもしれない。

ーー村上春樹さん以外にもインスピレーションは受けてますか?

文学に限らず、映画や音楽や街で見た景色や、様々なものから影響を受けていますよ。歌詞は小説と違ってメロディありきの言葉なので、作詞をするときは語り過ぎないように心がけています。その方が受け手の想像力をかきたてる作品になると思うんです。

ーーKinKi Kidsや関ジャニ∞にも作詞をされていますが、提供するアーティストによって詩のニュアンスや言い方を使い分けたりしているのでしょうか?

作家として作詞をするときは、自分で歌うのと全く違うものになります。

提供した方が歌うことを想定して書いているので、相手にこう言うことを歌ってほしいなって思うものを書いてます。

そのアーティストのイメージに沿ったものを書く場合もあるし、こちらから新しいイメージを提案させてもらう場合もあります。

ーー音楽を作る上では閃きが大事だと伺いましたが、そういう閃きの瞬発力ってどう鍛えたら良いと思いますか?

先入観をなくすのが大事なポイントかもしれません。

でも閃き型と熟考型、どちらが良い悪いってことじゃないと思いますよ。例えば飲み会の席で閃きでわぁーと喋る人と、ボソッと喋る一言がすごく重い人っているじゃないですか。それってどっちも人それぞれの個性だから。

ーー深みを出すため、想像力を養うためにも、ミュージシャンは読書をした方が良いとギタリストとしてご活躍の坂本夏樹さんがおっしゃっていました。

夏樹の言いたかったことを噛み砕いて言うと、「人生経験を積め」ってことだと思います。

小説を読むことって擬似的に人生経験をするってことでもあるから、深みが出てくる。

『深夜特急』も読むだけじゃなくて、実際にインドに行った方がよりリアルになる。でも、そこまでしなくても経験できるのが読書。

これはミュージシャンに限ったことじゃない。若い人は本を沢山読んだ方が良い。とくに20代の頃に吸収したことって、その先の人生ですごく糧になっていきます。

映画も沢山見るべきだし、いろんな景色を見て、いろんなものを吸収するのが良いんじゃないですかね。

ーー本に音楽を鳴らすとしたらどういう組み合わせにしますか?

今閃いたのは、『ムーン・パレス』はルー・リードの『Walk on the Wild Side(ワイルド・サイドを歩け)』が合うんじゃないですかね。僕が映画監督でこの映画を撮るならエンドロールでこの曲を流したいです。

ルー・リードは自分がバイセクシャルだと公言していたと聞いています。この曲の歌詞の本来の意味はジェンダー的マイノリティ、つまりワイルドサイドを歩け、ということだと思うのだけど、例えばこれを身近に当てはめるとすれば、自分の信じた道を進めって歌だと思うんです。ポール・オースターの『ムーン・パレス』も広い意味ではそういう作品だから合うと思いますよ。

内面っていうのはみんな隠したがるんです。だからそれを出さなきゃねって背中を押してあげる

ーープロデューサーについてもっと教えてください。音楽プロデューサーとはどんな仕事なのでしょうか?

実はアーティストってみんな自信を持ってないんです。だから作ってきたものに対して、最高じゃんって背中押してあげることが僕の最初の仕事ですね。レコーディングプロデューサーは経験がモノを言う。だから、こういう音を録りたいっていうアーティストにどうしたら良いのか教えてあげたりしてますね。

ーープロデューサーになるキッカケは何だったんですか?

音楽を聴き始めた頃にYMOを好きになったんです。なかでも細野晴臣さんが好きなんですけど。細野さんはYMOでプロデューサーをやっていて、僕もプロデューサーをやりたいって小学生のときから思っていて。でも10代の若い人がいきなり成れるようなものじゃないんです。

細野さんもYMOでプロデューサーになるまでにサポートでベーシストをやったり、はっぴいえんどをやってたりしてたから、僕も音楽を続けていればプロデューサーに成れるんじゃないかと思ってました。

ーー高橋優の『リアルタイム・シンガーソングライター』はギター演奏と編曲で参加していますが、メジャーのファーストアルバムと作るってどういう心境だったんでしょうか。

高橋優くんの場合はアコースティックギター1本で音楽をやってきた人。彼のアコースティックギターをバンド編成にアレンジしてあげるだけで良い。

インディーの頃から一緒にやらせてもらっていたし、メジャーの 1 枚目だからっていうのはあんまり意識してなかったです。例えば村上春樹さんと村上龍さんの文体が全く異なるように、僕には僕の音があると思っています。

だから僕が今まで作ってきたようなサウンドで彼の楽曲を包んであげれば良いんだなと思ってました。

ーー1枚目と言えば、クリープハイプのメジャーファーストシングル『おやすみ泣き声、さよなら歌姫』もプロデュースされていますよね。

クリープハイプの場合は何曲か候補があったんだけど、メジャーの1枚目だから疾走感がある方が良いんじゃないかなと思って始めました。

お茶の間にも届くように、傷跡を残すように、切れ味の良いナイフのような曲をやろうよって。好きでも嫌いでもないのが一番良くないと思ってます。だから「この人たち嫌い」って意見があっても良いと思う。振り切ったものをやった方がいいんです。

ーーアーティストの素質を拡張することもプロデューサーとしての仕事なのでしょうか。

リスナーはアーティストの内面が見たい。でも内面っていうのはみんな隠したがるんです。だからそれを出さなきゃねって背中を押してあげる。

僕もシンガーソングライターとして、名のあるプロデューサーにプロデュースしてもらった経験があります。その時に感じた良かったことや悪かったこと、こういうことされると嫌だなっていうのが分かります。無理にこちらの価値観を押し付けるのだけは良くないと思いますよ。その曲を一生背負っていくのはそのアーティスト自身ですから。

相手が何を求めているのかなっていうのを考えてあげることがプロデュースワークでは大事な気がしています。

ーー8月25日に渋谷クラブクアトロでのワンマンライブが決まっていますね。何か思いはありますか?

これは今年 50 歳を迎える自分自身のアニバーサリーライブです。今までやってきた音楽の集大成になるようなライブをやりたいと思っています。多くのファンの方々が楽しみにしていてくれるので、みんなに喜んでもらえるような日になれば最高ですね。

 

浅田信一ニューアルバム『DREAMS』Trailer Movie

浅田信一さん約3年半ぶりのフルアルバム
「DREAMS」
2019年8月21日全国流通リリース
(※オフィシャルHP先行Web販売7月21日より)

この記事を読んだあなたにおすすめ!

「本×音楽」インタビュー記事まとめ「本×音楽」インタビュー記事まとめ

本シリーズ記事に参加をご希望の作家様は、こちらよりお問い合わせください。

お問い合わせ

 

書き手にコメントを届ける

記事の感想や追加してもらいたい情報のリクエスト、修正点の報告などをお待ちしています。
あなたの言葉が次の記事執筆の力になります。