擬人化漫画に見る差別の構造。種族全体を悪者扱いするのはナンセンス

『BEASTARS』書影画像

アニメ二期も始まり好調な『BEASTARS』。

既に連載は完結し、単行本を楽しみにしている人も多いのではないか。

この漫画、人種差別や性差別など様々な差別問題のメタファーを含んでいる。

今回は『BEASTARS』を参考に、社会の差別の構造を探っていきたい。

種族全体を悪者扱いするのはナンセンス

『BEASTARS』の世界では力が強く、草食動物を食べる肉食獣が危険視されている。

肉食獣が草食獣を食い殺す事件が報道されるたび、肉食獣への風評被害やいじめが起きるのだ。

ここで読者の多くは黒人差別を思い浮かべるはずだ。

肉食獣には食殺衝動を禁じ得ない危険な者もいるが、その衝動を上手くコントロールし、草食動物と友好関係を築いている者もいる。

というか、後者が大半だ。

肉食獣の中に犯罪者がいるからといって、種族全体を悪者扱いするのはナンセンス。

これは人間にも同じことが言える。

いい白人と悪い白人、あるいはいい東洋人と悪い東洋人がいるのと同じ割合でいい黒人と悪い黒人がいるだけなのに、誰がどの視点で見るかによって偏った噂の流布や報道がなされる。

偏見を逆手にとってしたたかに生きる

本作のヒロインであるドワーフウサギのハルは、園芸部の部室で様々な男子と関係を持っていた、性に奔放な女の子だ。

しかし彼女が男の子と寝るのにはわけがある。

ハルは自分が可愛くか弱いウサギであり、その中でもさらに狙われやすいメスだという自覚がある。

そんなハルが唯一相手をリードし、優越感を味わえるのがベッドの中だった。

裏を返せば、肉食獣のオスと対等になりたいと望むなら肉体関係に持ちこむしかなかったのだ。

現実社会でも一見かわいくて守ってあげたい女の子が意外に肉食系だったりする。

あるいは彼女たちもハルのように、「自分が主導権を握り、相手をコントロールできるシチュ」を選んでいるのかもしれない。

男子諸君はか弱いウサギちゃんを見くびらないほうがいい。

居場所がない混血の苦悩

本作後半のキーパーソンとなるメロンは豹とガゼル、即ち肉食獣と草食獣の混血。

したがってどちらにも居場所がなく差別される立場だ。

肉食獣と草食獣のハーフであるため内臓機能に問題があり、肉への欲求を感じながら肉を受け付けられないジレンマに苦しんでもいる。

主人公のレゴシとハルも恋に落ち、結婚や子供の話をするが、彼らの子どもは必然混血となる。

どちらでもありながらどちらでもない、アイデンティティクライシスの苦しみ。

差別する側でもされる側でも居場所があるだけマシじゃないかと、メロンは叫んでいるようにも見える。

これは人種の混血に限らず、両親の国籍が違うなどあらゆるハーフにあてはまる悩みかもしれない。

現在はハーフよりもダブル、ミックスというポジティブな呼び名の方が好まれるが、これも複雑な背景を反映している。

半分こではなく倍に、混ざり合うことでさらに高まる。

人種も男女もミックスされてより良い広い社会を作り上げていく。

できればそうありたいものだ。

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