これからの冷蔵文庫
いろんな施設に設置
━━これからも活動は続けていくのでしょうか?
本藤 はい。半年間わたしがおもったことを、どんどん発信していきたいです。
━━ムサビに置き続けるのですか?
本藤 それを希望する意見もありました。入試の日に来てくれた人が、「ムサビに入学したら絶対交換しに来ます」ってコメントを残してくれて……。そういう人もいるんだ、って嬉しくなりました。
━━熱烈なファンがいたのですね。
本藤 でもわたし自身の希望としては、いろんな場所に置いて実験したり、この体験をたくさんの人にしてもらいたいです。
━━どういったところに設置したいですか?
本藤 ほかの大学とか、小学校や中学校でやっても楽しいかもしれません。図書館とか。会社とか。
━━企業に置くのいいですね。社会人の方が、「ビジネス書ばかりで小説を読めていない」って言っていました。
本藤 そういう人にいいかもしれないですね。結構小説が入るので。
━━普段ゆっくり本屋さんにいく余裕がないような人でも、職場にあれば、隙間時間で本と向きあうことができますね。
本藤 会社では、コミュニケーションツールとして機能するんじゃないか、と考えています。怖いあの人がこんな本を読んでいるのかもしれない、みたいな(笑)
━━意外な一面を知ることができるかも(笑)
本藤 匿名だからこそ機能する場所だとおもいます。
ほかの大学にも冷蔵文庫?
━━もしも大学生の頃にこういう仕組みがあったら、通っちゃうなぁっておもっていました。
本藤 わたし自身やっていて凄く楽しかったです。一時期、毎朝毎晩、冷蔵庫をチェックしに行っていました。
━━見たくなっちゃいますよねえ。
本藤 中を覗いて、写真を撮って、Twitterにあげて、反応をいただく。それが楽しくって。
━━SNSの反応は凄かったですね。
本藤 DMで奈良の大学の方から連絡をいただいたこともあります。「自分の大学でもこういう取り組みをしたい」って。
━━奈良にも冷蔵文庫が誕生するのですか!
本藤 可能性はありますね(笑) 参考にしている手紙社さんに許可をいただいてから、「いいですよ」ってお伝えしました。楽しみです。
━━あちこちに冷蔵文庫があったら楽しそうです。
本藤 「やりたい」っておもってくれる人がいたら、どんどん、やってほしいです。全国にあったら楽しいな。地域によって置いてある本が違うのかもしれませんね。それを練り歩くのも楽しそう。
━━冷蔵文庫をめぐる旅……わくわくしますね!
いろんなイベントで設置
━━イベントは参加していくのですか?
本藤 呼ばれたら行きたいです。この前参加したイベント(※1)のとき、歩いている人に「どうですかー」って言ったり、利用した方から反応いただけたりするのが、凄く楽しかったです。
※1
Dive in books!
2018年11月10日(土)に開催された、もぐらmeets!さん主催の本のお祭り。
冷蔵文庫初の学外イベント。
素敵なイベントにお誘い頂き、初めて学外に冷蔵文庫を置きます!
「もう読まなくなってしまったけど、誰かに届いて欲しい…」そんな本がおうちに眠っていたら、ぜひラッピングをして(タイトルを伏せた)メッセージを添えてお持ちください。そして、交換してみてください。
お待ちしております! https://t.co/dkXRtkYoTc
— 冷蔵文庫 (@reizou_bunko) November 4, 2018
本藤 本とは全然関係ないイベントとかでも楽しいのかなぁ、ともおもいます。パラソルとかさしてみたい。
━━パラソル! かわいいですね。夏にいいですね。
本藤 夏バージョンと冬バージョンがあったらいいかもしれないです。
━━楽しそうですね~。季節によって雰囲気が変わる冷蔵庫。
本藤 屋台みたいなこともやってみたいです。
━━飲食店とコラボできたら素敵ですね。
本藤 いいですね。ほっと一息。
━━食べたり飲んだりしながら本の話をしたら、さらに仲良くなれそうです。
運ぶことの課題
━━ちなみにあの冷蔵庫ってどうやって運んでいるのですか?
本藤 ムサビに設置するときは研究室から台車を借りました。イベントに持っていくときは運送会社を頼りました。
━━軽くしているのですか?
本藤 重いです。30kgぐらい。後ろの装置が重いんですけど、取り外し方がわからなくて。でも、軽量化プロジェクトを、しようとおもっています。
━━30㎏はとても運べないですね……。
本藤 冷蔵庫にしてはコンパクトではあるんですけど……。台車を使うにしても幅を取るので、周りに迷惑ですし。電車は乗れないです。
━━車内に冷蔵庫を運んでいる人がいたらびっくりします。
本藤 いろんなところに行きたいので、今後の課題です。
━━運送会社に毎回頼むのも、大変ですしね……。
本藤 冷蔵文庫専属ドライバーがほしいです。運転が巧くて力持ちの人に、お願いしたいです。
役目を終えた物たち
それは本当に“ゴミ”?
美術大学に4年間通うなかで、疑問を抱いた本藤さん。
美大生は新たなもの・デザインを生み出す。
それは尊いことだけれど、その役目を終えたら、まだ使える部分がたくさんあるのに捨ててしまう。
それでいいのだろうか?
ムサビには「ゴミストックヤード」という大きなゴミ置き場があり、毎日大量の廃材が持ち込まれます。その中には、1度しか使われず、まだ使える部分がたくさんある物も。
そこの“ゴミ”を“素材”として持ち帰ることもあるそうです。
━━ある人には“ゴミ”だとおもってしまっても、別の人には必要かもしれないですよね。
本藤 そうなんです。人によるんです。例えば「メルカリ」も、ないよりはあるほうが絶対にいい。捨てようとしていた物が、ちょっと操作するだけでだれかに送れるので。
本藤 若い人にとって、再利用する、使ったものを売る、っていうのが当たり前になってきているのはいいなっておもいます。
━━手放し方の選択肢が広がりましたよね。
本藤 断捨離が流行っていますが、なんでもかんでも捨てればいいってわけじゃないとおもうんです。それは本当にゴミかな? って、1度立ち止まって考えてみてほしい。ゴミだらけになるのは困りますけど(笑)
━━改めて自分が何を持っているのか、どうしたら活かせるか、そういうことを考えるきっかけになりそうです。
本藤 あわよくば、冷蔵文庫を体験してもらって、そういうふうにおもってくれる人がいたらとても嬉しいです。
冷蔵文庫ナカノヒト紹介
本藤はるか(ほんどう・はるか)
冷蔵文庫運営者。武蔵野美術大学芸術文化学科4年。
好きな芸人はピース又吉直樹さん。キングコング西野亮廣さんの勢いを「やさしい循環」にも取り入れていきたい。
Twitter:@reizou_bunko
Instagram:@reizou_bunko
写真撮影:織
撮影協力:本藤はるか
参考文献:本藤はるか『やさしい循環 研究ノート』(2018年1月16日)
ReaJoyの裏話等を、個人ブログ「しきおりつづり」にて綴っています。
よろしければこちらも是非、ご覧ください。
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