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wowaka追悼 於 新木場STUDIO COAST【選書つきライブレポート】

さる令和元年、6月1日。
一人のアーティストの為の追憶ライブが、新木場STUDIO COASTにて行われた。

そのアーティストの名は『wowaka』
ボカロPとして、それからバンド『ヒトリエ』のギターボーカリストとして、音楽を行い続けていたアーティストだ。

今回は、そのwowakaの楽曲達について、追悼ライブを観た私の実体験を基に特集記事という形で書かせて頂くことになった。

ライブレポートをメインとしつつ、ReaJoyライターとして読書好きな方々にもwowaka/ヒトリエの楽曲について深く触れて頂きたいという気持ちのもと、当日の曲の簡単な紹介、そしてwowakaの楽曲に合う本を一つ紹介させて頂こうと思う。

一人のファンとして。
そして一人のライターとして。

私ができる方法で、wowakaというアーティストが生き抜いた形を皆様の中に残すことができれば幸いである。

wowaka/ヒトリエとは?

ライブレポートを始める前に、wowakaとヒトリエのことを知らない人達へ向けて、簡易ながらその情報をまとめさせて頂いた。
ぜひレポートを読む前に目を通して欲しい。

wowakaについて

2009年にボカロPとして、デビュー。
P名は『現実逃避P』(ただし、本人の意向で活動は基本的に『wowaka』名のみを使用)。

代表作は『裏表ラバーズ』『ローリンガール』
グレースケールのシンプルな一枚絵をバックに、歌詞が表示されるだけのシンプルな構造をしたMVで曲をあげる特徴がある。
だがその曲の中身は、シンプルなMVとは反対に、意味深な歌詞中毒性の高いメロディー、と忙しないリズムの曲が多い。

尚、ボカロPとしての動画本数は12本/曲(クロスフェードは除く)。
その全てが殿堂入り(10万再生越え)をはたし、内8曲がミリオンを達成している。

2011年ヒトリエとしての活動を開始。

2019年4月。急性心不全にて、この世を去る。

ヒトリエについて

2011年、ヒトリエの元となる『ひとりアトリエ』が、インターネットを通して結成される。
後にギターのシノダが加入し、2014年『センスレンス・ワンダー』をリリースし、メジャーデビュー。

曲の中身は、wowakaとして制作したボカロ曲にくわえ、ヒトリエとして制作された楽曲で彩られている。
バラード曲も多くみられるようになったが、ボカロP時代の曲の忙しないロックは変わらず残され、多くの中毒性の高い楽曲の演奏が行われている。
タイアップ曲としては、アニメ『ディバインゲート』OP『BORUTO-ボルト-』EDの二曲が存在している。

他メンバーは、以下の三名である。
・シノダ
ギター&コーラスを担当。
バンド活動以外にも、ギタリスト、歌い手、ボカロPとしても活動。
そちらの名義は『衝動的の人』。

・イガラシ
ベースを担当。
同人音楽を中心としたバンド活動を行っていたベーシストで、ヒトリエ以外でもいくつかのバンドと活動を行っている。
現時点では、同人音楽サークル『岸田教団』のボーカルであるichigoらとのユニット『JUDGEMENT』でも活動をしている。

・ゆーまお
ドラムを担当。
普段は『叩いてみた』の動画投稿しており、ヒトリエ以外にも『カゲロウプロジェクト』や『古川本舗』などのアーティストらの楽曲に、ドラムとして参加している。

 

ライブレポート

まず初めにことわりをいれておきたい。
私が今回書くこの記事であるが、ニコニコ動画にて行われた生配信を基に書き出した記事となっている。

実は私はライブ会場自体には足を運べなかった人間なのだ。
ニコニコ動画で行われたライブの生配信の視聴という形で、ライブ参戦をする形となった。

臨場感の足りない記事になってしまう可能性があることを先に謝っておきたい。その代わり、動画という形で参戦した者だからこそ見れた景色を書き出していきたいと思う。

尚、冒頭でも説明したように、こちらの記事はwowakaとヒトリエを知らない方向けに曲紹介も共に行っていく
その為、MVなどの公式動画も共に掲載をさせて頂きたく思う。

ご了承を頂れば幸いだ。

始まり、ワンミーツハー/目眩(過去ライブ映像)

ライブの始まりを彩ったのは、二つの過去のライブ映像だった。

最初の映像は、2017年に行われた全国ツアー『IKI』から『ワンミーツハー』
この曲は、アニメ『ディバインゲート』OPの為に製作された楽曲だ。と、同時にヒトリエ初のタイアップ曲となる。

「ねぇ!
その心を貸してよ、
扉を開けてしまうから。」
忘れてた理想に沿って
ニヤリ笑う
ソレを見たいんだよ

(作詞:wowaka)

OPという役割からか、その曲調も激しさが目立った曲調のものとなっており、歌詞の内容もストーリー展開に沿って作られた雰囲気にくわえ、wowaka特有のワードをふんだんに混ぜ合わせて制作されたような楽曲となっている。

暗闇の中、機材がセットされただけで誰もいないステージ。
それを前に流される過去の映像に、手を振る観客もいれば、涙する観客の姿も。
画面を流れていく白いフォントのコメント達は、とても色濃く映え、その言葉に込めた感動と悲しみを強く表現するかのように右から左へと画面を流れていく……。

次に流されたのは、『目眩』
こちらは1stライブの時の映像のものが流されたと思われる。

覚えてる
それでも眩しさに夢を見る
歪な姿でもそれが僕だと笑ってくれた

(作詞:wowaka)

出だしから歌い出されるタイプの一曲。
ギターの静かで綺麗なフレーズが何度も繰り返される中、歌われる歌詞。
何度も何度も同じリズム、メロディーのそれが載せる言葉を変えて静かに歌いかけてくるそれを聴いていると、まるでそのタイトル通りに眩むような感覚に襲われてくる。
けどその眩みの先にあるのは、とても胸に突き刺さる言葉達が並べられた歌詞達の姿なのである。

曲の終わり、「ありがとう」とwowakaが叫ぶ。その言葉にわきだつ観客たち。
それは過去の観客達のものなのか、それとも今目の前でその過去を見つめる観客達のものなのかは、画越しの暗闇の中からはわからなかった。
けれど、その暗闇を照らすかのように、次の瞬間、画面内はたくさんの『88888(拍手を現すコメント)』で覆われていったのだった。

三曲目、ポラリス

ライブ映像が終わると、驚きの光景が開始される事となった。
なんと、ステージ上にメンバー達三人が姿を現し始めたのだ。

wowakaの黄色いテレキャスターを、いつも彼がいる定位置にセットすると、自分達もいつもの定位置につく。

そして準備が整うと、ギターのシノダから挨拶が。
本来ならばこの会場はツアーのファイナルとして立つ場所だったこと、きっとリーダー(wowaka)も立ちたかっただろうということ、だから最も彼が信頼してくれた自分達三人で演奏をする日だと思いステージに立ったこと、それらを涙混じりな声で話してくれた。

そうして始まったのが『ポラリス』
アニメ『BORUTO-ボルト-』のED曲だ。

また一歩を踏み出して あなたはとても強い人
誰も居ない道を行け 誰も居ない道を行け

(作詞:wowaka)

EDという物語の終わりを飾る為に作られたこの曲は、どこか懐かしく切ない心地にせされるバラード曲だ。
が、その合間合間には、やはりwowaka節というべきな、早口で中毒性の高い特徴的なメロディーがぶち込まれた構成となっている。

wowakaの代わりに歌うのは、歌い手としての経験もあるシノダだ。

サビの歌詞である『誰も居ない道を行け』と繰り返し歌うそのさまは、まるでwowakaがいなくなってしまった世界に向けて、その胸の中の感情を歌いぶつけているかのような光景だった。

そんななか、画面上の誰もがうっすらとあることに気づき、それをコメントに残し始めていく。
コーラスに流されている音声の中にwowakaの声が混じっているという、そのことを……。

四曲目、センスレス・ワンダー

次の瞬間、それまでのしんみりとした空気を一掃するかのように、激しいメロディーがかき鳴らされた。

そのツナギのメロディーから続く形で始まったのは、高くつんざくかのようなギターの音。
この独特な出だしから始まるのは『センスレス・ワンダー』。彼らのメジャーデビュー曲だ。

「届かないよ、届かないな」って
笑えないよ、笑えないなって
見惚れたい、見惚れたい!

(作詞:wowaka)

この曲はwowakaのもつ特徴を全て詰め込んだような一曲だ。
理解できそうで理解ができない考察をさせられる、意味深な歌詞
中毒性の高い繰り返しのメロディーのサビ。
これぞwowakaの曲だ、と言わんばかりの楽曲。早いテンポに載ったスピードのある楽曲が、こちらの有無をもきかず、この鼓膜の内側までつらぬいていく。
そして先刻のしんみりとした空気も全て連れ去り、激しく熱いライブの空気を観客達の前に連れてきてくれた。

五曲目、シャッタードール

続く五曲目も、勢いのある曲だ。
四曲目の勢いをまるで延長させるかのように、ひどく頭に残るシンセサイザーのフレーズが疾走感と共に流れだし、その曲を連れてくる。

「誰もが、当たり前に暮らしを与えられ突然、
無法地帯に放り込まれてしまう人形です。」

(作詞:wowaka)

赤いスポットライトが、フラッシュのごとく散漫する舞台の中、ハードな疾走感のある曲が歌い続けられる。
ある少女の心模様を歌い出したようなその曲は『アイデンティティ』など、現実社会に生きる人々ならば一度は耳にしたことがあるだろう単語を中心に現代社会を、そしてそこに生きる人々の姿を揶揄するような歌詞で作られている。

激しい曲が二曲も続いた疲れからか、会場は一度暗転し、曲の流れが止まる。
観客たちからは難しい曲を歌い切ったシノダ、そしてメンバーへの「お疲れ!」という言葉が飛び、コメントでは「ありがとう」と「888888」の文字。

そしてそんな声援に返すように、再びシノダの声が会場内にあがる。

「慣れないけど、ハンドマイクで歌わせて貰うね」そう言って、ギターを置いて彼が歌い始めたのは……。

六曲目、SLEEPWALK

新作アルバムからの一曲。
先刻の赤い風景から一転。青いライトに照らされた光景の中、シノダの声で、そしてwowakaのコーラスで、『SLEEPWALK』が紡がれていく。

「愛してみようぜ」
「失ってみようぜ」

あたしの思うままに愛してみようぜ

(作詞:wowaka)

ポラリスの前に公開されたMVの楽曲であり、ポラリスと共に新作アルバム『HOWLS』の曲の一つとして入っている曲である。

曲名の正確な和訳はわからないが、まるで夢の中を歩きさまよっているような不思議な歌詞の内容から考えるに、『夢中歩行』という和訳が一番正解なのかもしれない(翻訳サイト調べ)。

ギターから手を離したシノダ。その歌声のみに集中をし、シンセサイザーの機械的で切ないメロディーに載って歌われるその光景の中、見えたのは本日ライブ初のシノダのほのかな笑顔。

その笑みにコメント内では、彼が楽し気に歌えていることへの喜びや、改めてこのライブの放送への感謝のコメントが流されていった。
このライブがただ悲しいだけではない、誰もがひどく嬉しく思うライブであることを、改めて感じさせられる瞬間だった。

七曲目、カラノワレモノ

七曲目が入る前に挟まれたMC。
「本当、忙しない曲を作るよね」とこぼしたシノダに、会場内にも明るい声があがる。
そんな空気の中、「次はヒトリエが、初めて作った曲をやりたいと思います」という一言で始まったのは『カラノワレモノ』

泣きたいな 歌いたいなあ
僕に気付いてくれないか?
掴みかけた淡い情も、それは、転げ落ちた今日だ

(作詞:wowaka)

青いライトをバックに緑のレーザーが飛び交う、いつもの演出で始まった演奏。
ヒトリエの始まりを語るようなロックバラードの登場に、わきだつ会場と共にコメント内もたくさんの歓声で白く埋め尽くされる。

そうしてサビに入るその直前。「歌える?」というシノダからの問いかけ。
それに答えるかのように、観客達がサビを大声で歌い出した。
画面上ではその光景に涙するコメントや、「一緒に歌ってるよ」というコメントが。

皆が皆、同じ場所には揃えなかったかもしれない。
が、この瞬間、きっと何万もの人々が会場にいる彼らと共に歌っていたことだろうと、そう思う。

八曲目、踊るマネキン、唄う阿保

再び曲が始まる前に挟まれるMC。
「今日ぶっちゃけ何人ぐらい会場に入ってるんですか? って訊いたら、『千五百人ぐらい』って言われて金玉縮みあがりましたよね」と再び雑談から入ったMCに、会場に笑いがおこる。

「『SLEEPWALK』の最後の方、歌えたじゃん。あれきっと天国まで届いたよ」というMCに、会場内画面内共に拍手がわきおこる。
そうして告げられる「もう後半戦なんだよね」という一言に、観客達からあがる「お願いします!」の声。「それは斬新すぎる」と笑うシノダに、会場内もふたたび笑いで包まれた。

「それじゃイガラシくん。いつもの奴頼んでいいですか?」というMCをしめたシノダに、隙間を見せることなくかき鳴らされ始めたベース。
この最高にイカすベースメロディーから始まるそれは、ファンの誰もが聞き覚えのあるキラーチューンソングだ。

きらい きらい きらい、いや好き
跳ねる感情に逆らって
今、今 思い出してんだ
どちらかって決めなくてもさあ
笑うことが出来ることをさあ

(作詞:wowaka)

「お客様の中で、踊り足りてない人はいらっしゃいませんか!」といういつものシノダの煽りに、観客達の歓声、そしてコメント内に喜びの声があがる。

飛び回るベースの音がメインとなるこの楽曲は、その曲名の通り、身体を揺らして踊りたくなる最高のダンシングロックソングだ。
実は私自身がヒトリエの曲の中で一番好きな楽曲でもある。

激しく明滅する赤い光の中、狂おしい程にノリのよいダンスソングが観客達に身体を揺らせ、踊れと告げてくる。

そうして、踊りという熱気に包まれた楽曲の後、流されたのは、なんとまた『ダンス』曲だった。

九曲目、トーキーダンス

イカすベースソロの次は、これまた最高にイカして、手を叩き合わせたくなるドラムソロによるツナギ。
それをバックにシノダが言葉を吐き出す。「今日みたいな日は、皆で頭空っぽにして踊ろうぜ。『トーキーダンス』で踊りませんか!?」

踊っていいよ 踊っていいよ
忘れることなど出来ないわ

(作詞:wowaka)

またしても激しく乱れ撃つレーザー。
その中で流された、二つ目のダンスソングに、また画面内が白いコメントで埋め尽くされる。

テンポよく叩かれるドラムにあわせて、観客達のクラップ(手拍子)が会場内に広がる。
そこにあるのはもう、悲壮的に悼むだけのライブではない。ヒトリエという、一つのバンドのライブを最高に楽しむ光景が完全に生まれたのだ。

コメント内でも『wowakaさんもきっと踊ってるな』といったこの曲を歌うライブシーンを前にした感想が流れていく。

この瞬間、ここはもう『追悼ライブ』から『ライブ』へと、その姿を確実に変貌させたのである。

十曲目、アンノウン・マザーグース

「それでは、wowakaより、愛をこめて!」
そう続けられたMCから始まったのは、ヒトリエファン、そしてボカロPとしてのwowakaファン、その両者の胸をつらぬく一曲だった。

ねぇ、愛を語るのなら 今その胸には誰がいる
こころのはこを抉じ開けて さあ、生き写しのあなたを見せて?

(作詞:wowaka)

この曲は、wowakaが最後にあげたボカロ楽曲だ。
ヒトリエメンバーによる生演奏をバックに、彼特有の無機質な高い機械音の初音ミクで歌われた楽曲。もちろん、MVもいつものグレースケールの一枚絵だ。
と同時に、ヒトリエとしても歌われたことのある楽曲で、楽曲内にはたくさんのコールや合唱を行えるシーンが入っている。
皆で合唱をする場所は、コメント内でもそのコールがあがることとなった。

まるで準備をしていたかのように流されるコメントを前に、私の頭の中には、ニコニコ動画にてあげられていたMVの映像を思い出した。
愛に溢れた素晴らしいコメント達で溢れ返った、あの動画を。

そしてこの時点で、動画来場者数はなんと二万を超えることとなった。

十一曲目、『青』

続けられたのはバラードソング『青』
こちらも、『SLEEPWALK』同様、新作アルバムに収録されている楽曲だ。

いつか
僕らが青を塗り潰したって
それでも僕らをやめることはないだろう

(作詞:wowaka)

ひどく真っすぐな歌詞で綴られた一曲で、今までの不思議な歌詞とはまた異なった強く突き刺さるメッセージ性を持つ楽曲だ。
青一色で染められたステージの上、静かなギターのコード進行に、それを支えるベースの低く切ないメロディー、そしてドラムの優しい叩き。
ギターソロでは、青とは正反対な赤いスポットライトが彼らを照らし出し、まるでその楽曲の持つ、切なくも強く激しい感情の詰まったメッセージを見せつけてくるかのような演出が行われ、一層聴いてる者達の胸を締めつけてくる光景となった。

そうして、観客達の歓声に、「888888」という拍手コメントに見送られる形で、再び会場内は暗闇に包まれていった。

十二曲目、ローリンガール

なかなか続きが始まらない暗闇に、コメント内では「まだ踊れるよ」「まだ歌える」「もう一回!」などというコメントが流れ始める。
しばらくした後、明るくなっていくステージ。ようやく戻ってきたヒトリエが、拍手と共に出迎えられる。

と、そこにはマイクスタンドを握るシノダの姿。
「次で最後の曲です」と口を開いた彼が話し始めたのは、今後のヒトリエの活動について。

「今後の活動については、まだなんにも決まっていない」と告げるシノダ。しかし続く「でも少なくとも解散はしないと思います」という宣言に、観客達からはわれんばかりの拍手があがる。
コメントでもたくさんの拍手コメに加え、「よかった」「ありがとう」「応援する」という、彼らの今後に喜びをあらわにするコメントが流されていった。

そうして鳴りやまぬ拍手の中、シノダが再び言葉を紡ぐ。「次の曲はね、皆歌える曲だと思うんだ。だからさ、天国のwowakaに聴こえるぐらいさ、皆ででっかい声出して歌おうよ」

映し出されるwowakaのテレキャスター。
拍手が続く中、「ありがとうございました、ヒトリエでした」という最後の挨拶と共に流れて来たのは、wowakaファン、それどころかボカロファンならばきっと誰しもが歌えるであろう、あの名曲だった。

もう一回、もう一回。
「私は今日も転がります。」と、
少女は言う 少女は言う
言葉に意味を奏でながら!

(作詞:wowaka)

wowakaの代表曲と言っても過言ではない一曲だろう。

先刻な一部だけのコールのようなそれとはまた違う。盛大な合唱が、会場内に響き渡る。
コメント内でも「もう一回! もう一回!」とサビを繰り返すたくさんのコメントが流されていく。
シノダの「もっとだよ!」という煽りや、二番冒頭では歌わずに観客達の声に耳を傾けるなど、ヒトリエとしてだけではない、今この場にいる全員の歌であることを示すような言動と共に、その演奏が続けられた。

われんばかりの拍手に「ありがとう」という観客の声、そしてコメント達の言葉と共に演奏は最後を迎えた。

「ありがとうございました。そして、wowaka、本当にありがとう」というシノダの言葉をもって、三人はステージをあとにしたのだった。

アンコール、リトルクライベイビー(過去ライブ映像)

三人がステージを去っても鳴りやまない拍手。
そこに「もう一回! もう一回!」とアンコールを求める声が重なった時、なんと場に予想外の声が流された。

「あなたがついてきてくれると言うなら、俺はどこまででも行けるような気がしています。
いつもありがとう、俺を作ってくれてありがとう、いてくれてありがとうございました、今日もありがとう!」
(wowaka)

それは、2018年3月25日に行われたツアー『UNKNOWN-TOUR 2018 “Loveless”』にてMCをつとめたwowakaの声。
そして続く形で流されたのは、同ライブからの一曲。『リトルクライベイビー』。

僕の生まれた
その朝に君の声を聞いて
誓ったんだ
君の生まれた
この世界ごと飲み干して
歌を唄い続けること

(作詞:wowaka)

ポラリス同様に、どこか切なく懐かしみを覚える、それと同時にポラリスとはまた違い暖かな優しみも覚える一曲。

wowakaの作る楽曲は、その大半がどことなく現実というものに対する鬱蒼とした気持ちを語るようなものが多い。
その中で、この曲はそれらとは珍しく反対に、まるで世界の全てを慈しみたくなるかのような、暖かい気持ちにさせられる一曲

wowakaのMCから始まったこの映像に、観客達は手をふりあげると同時に、再び現れたwowakaの姿に涙をこぼす。
「こんなの泣く」「泣いてコメントができない」などと、コメントでも涙をこぼす者達が姿をあらわし始める。

誰もいないステージをバックに、続く過去の映像。
wowakaのいた世界、wowakaというアーティストがこの世に生んだ数々の素晴らしい歌達。
それらに改めて「ありがとう」と、今までこの世界で歌い続けてくれたことへの感謝が深く深く胸から沸き起こる光景だった。

映し出されるwowakaのギター。
それをバックに、「ありがとう」「ずっと大好きだよ」といった言葉と共に拍手コメントで埋め尽くされる画面の中、改めてライブ映像を流しきり、追悼ライブは終わりを迎えたのだった。

「どうもありがとう、ヒトリエでした。また絶対、絶対、会いましょう。ありがとうございました!」
(2018年3月25日ツアー『UNKNOWN-TOUR 2018 “Loveless”』/wowaka)

まとめ

この記事を書こうと思い至ったのは、ライブ中継を観終わった後のことだった。
その為、運営様には急遽な企画の申し出をしてしまったことになる。私事の企画を書くことをご許可頂き、誠にありがとうございます。

長年ボカロPのファンを続けてきた身の上では、wowakaさんの名は当然ながら語らずにはいられないボカロPの一人として私の中に存在している。

その為、亡くなったという話を聞いた時は、信じられない気持ちでいっぱいになった。

彼が亡くなったと知らされた日のニコボックス(ニコニコ動画発の音声再生専用のアプリ)のボカロランキングの光景も忘れらない。
あんなにも、一人のボカロPの名前で埋め尽くされたランキングは、滅多に見れる光景ではない。

そしてなにより、今回のライブ放送。その中で、今後一生絶対に忘れられないであろう光景がある。

それはライブ終演後の光景。

大型のライブでは、終わると同時に辺りが明るくなり、アーティストの楽曲が流される。
通常はその曲に乗って、観客達は会場を後にするのだが、今ライブばかりは例外が起きた。

観客達が流されてくる曲に合わせて、合唱を始めたのである。

流された曲は『ポラリス』。
3人での生演奏のその一番最初に歌われた曲である。
音源はもちろん、wowakaさんの声で収録されたものである。

wowakaとHITORIEという文字、そしてwowakaさんのアイコンでもあった少女のマークがスポットライトで照らされたステージ。
そのステージの上、もういないwowakaさんに向けて最後のお別れと感謝の気持ちを込めるかのように、観客たちはwowakaさんと共に最後まで歌い続けた。

この光景を一生私は忘れない。

今回のこの記事でwowakaさんに、そしてヒトリエに興味を持ってくださる読書家な方々がいたら幸いである。

書籍:乙一/Arknoah 僕のつくった怪物

これは『アークノア』という異世界に迷い込んだ兄弟が元の世界に帰ろうと冒険する物語である。
王道的なトリップものとしての展開に加え、深い心模様が強く描き出された作品となっている。

そんな側面がwowakaさんの作る『意味深』な歌詞のそれと被り、選ばせて頂いた。

さらにもう一つ、理由がある。

このライブを見た直後、私の脳裏にふと、ある台詞が思い出されたのだ。

「どうして行っちゃうんだ。戻って来てよ! みんな、待ってるんだ!」
「帰ってきてよ! 話したいことがいっぱいあるんだ! 大好きなんだ! 愛してる! ずっとだよ! ずっとだ!」

本編内で弟が怪物に向かって叫ぶ台詞だ。
この怪物とは、兄弟がアークノアに来たことで生み出してしまった、彼らの『心の影』から生まれた怪物だという。
しかし、この怪物を倒さない限り、二人は元の世界に帰れない。

その中、弟は遠ざかる怪物の姿を前に、飛行機事故で亡くなった父の姿を思い出し、その姿を被せてしまう。
もう届かない大好きな人への言葉を叫びながら、逃げていく『怪物(自分の心)』を追いかけていく光景は、ただひたすらに苦しい光景だ。

そして私はそんなグレイ同様に、このライブの光景にこの台詞を被して見てしまったのだ。
それがもう一つの選書理由である。

ぜひ、wowakaさんの楽曲と共に聴いて頂けたら光栄だ。

 

【あらすじ】
父親を亡くした兄弟・アールとグレイは、不思議な世界『アークノア』に迷いこんだ。そして2人は出会う。世界を破壊するべく現れた、恐ろしい怪物と。乙一とtoi8のイラストでおくる、シリーズ第1弾!!

(BOOKデータベース引用)

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