全国の読書会情報はコチラ

Track No.3 『ナイロンの糸』(サカナクション)

ーTrack No.3『ナイロンの糸』(サカナクション)ー

暗い海の底にあるのは、巨大な白い。藍色に光る剣のようなものは、繭を守るようにして建っている水中都市だ。

『ナイロンの糸』は、波の揺らぎのように静かな楽曲である。

潮の香りが立ち込めるこの曲を、過去作と比較しながら説明していこう。

注意
この記事はあくまでも一人のライターの『考察』であり、事実ではありません。ご了承ください。

『服』という、重要なモチーフについて

ここでは、初期作品である「ナイトフィッシングイズグッド」、「アドベンチャー」にスポットライトを当てていこう。

よく見ると、同じモチーフがあることが分かるだろう。

『去年と同じ服を着ていたら 去年と同じ僕がいた』-「ナイトフィッシングイズグッド」

『だけど思い出は色付くまま そのまま新しい僕の服になる』-「アドベンチャー」

(作詞:山口一郎)

ここでの服とは、思い出』『記憶を指すのかもしれない。彼はあえて「服」という単語を使うことによって、自分の事を俯瞰で考えることに成功したのだ。

リスタートとしての前奏曲-『ナイロンの糸』

前置きが非常に長くなったが、本題に入ろう。

『このまま夜にかけて 少し寒くなるから 厚着で隠す あの夜のこと』ー(作詞:山口一郎)

この曲では珍しく、恋愛の影が見える。どうやら言いたくないことを、「厚着で隠す」と表現しているようだ。(服の重要性は前に述べた。)

『君が消える 影が揺れる 甘えてもう一歩』ー(作詞:山口一郎)

ここでは、「甘える」という言葉が使われている。ぎこちなくも、一歩を踏み出そうとする曲の主人公。

そこには誰かに頼りたいという、人間らしい弱さが出ていて、シンパシーを感じる。

まとめ

この海に居たい』ー(作詞:山口一郎)

最後はこの言葉で幕を下ろす。

胎児のように丸くなった男女が、絹糸に巻き取られて、そのままの姿で海へ帰ってゆく。

手繰り寄せられた糸は、二人の身体を包み込み、新たな記憶=服となるのだろう。

この楽曲が表現しているのは回帰』『再生である。太古から存在する「海」への郷愁であり、リスタートとして、ふさわしい楽曲だ。


この曲に本を合わせるなら

三島由紀夫の『潮騒』だ。

シニカルでいて生命力を感じさせる文体に、漁夫と無垢な乙女の体が文字通りぶつかり合い、壮大な音楽を奏でる。天才ならではの「美」の視点に、心から酔いしれてほしい。

浮標は暗い海に大まかに身を委ねて揺れていた。波はたえずその半ばを洗っては、ざわめいて流れ落ちた。-p168

この記事を読んだあなたにおすすめ!

瀬尾まいこ『幸福な食卓』不完全であっても、家族は家族。たまには家族と一緒にご飯を食べてみよう。気付けなかった幸せが見つかるかもしれない。

『幸福な食卓』瀬尾まいこ【昨日がどんな日であっても、朝は来るし生活は続く。】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です