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ヨルシカ【ボカロクリエイターによる、コンセプチュアル・バンド】

『コンセプチュアル』とは、日本語にすると「概念上の」という意味を持つ言葉だ。

有名な言葉の使い方だと「コンセプチュアル・アート」というものがある。
1960年代~1970年代にかけて世界的に行われていた前衛的な芸術運動のことだ。

他にも「コンセプチュアル思考」と呼ばれるものもある。
意味は「抽象化によって、その物事が何であるかをとらえる思考」というものだ。

そんな複雑な言葉を背負ったバンドが世の中にある――。それがヨルシカ」だ。

人気ボカロクリエイターにより組まれたバンド、ヨルシカ。
彼らの作る楽曲は、いったいどのような物事を求め、を捉え、音楽というアートで表現しようとしているのか。

いちヨルシカファンとして、彼らの作るものをぜひ、読書家の皆々様に知って頂きたく思う。

「ヨルシカ」とは?

2017年、ボカロPのn-buna(ナブナ)が、ボーカルであるsuisと共に結成したバンド。

きっかけは、2016年に行われたn-bunaのワンマンライブ『月を歩いている』。
ゲストボーカルとして参加していたsuisと組んで生まれた形となる。

「先入観で音楽を聴いてほしくはない」というコンセプトのもと、二人の顔、詳細なプロフィールは未公開である。

バンドの名前の由来は、『雲と幽霊』の歌詞から。
ヨルシカ1stミニアルバム『夏草が邪魔をする』の収録楽曲であり、現在MVがYouTubeにて公開されている。

このままずっと遠くに行けたらいいのに
夜しかもう眠れずに

(作詞:n-buna)

二人の他にも幾人かのサポートメンバーがいる。
その中には、同じくボカロPである「こんにちは谷田さん(キタニタツヤ)」も参加している。

どの楽曲も、表面的なものだけではなく、裏設定が多く紡がれたものとなっており、様々な考察の余地がある楽曲としてその曲の持つ物語性、そしてその世界観を深く掘り出すようなsuisの歌声、MVが話題を呼んでいる。

これだけは絶対に聴いてほしい一曲
『だから僕は音楽を辞めた』

売れることこそがどうでもよかったんだ
本当だ 本当なんだ 昔はそうだった

だから僕は音楽を辞めた

(作詞:n-buna)

2019年4月10日にリリースされた、ヨルシカ初フルアルバム『だから僕は音楽を辞めた』、その表題作にあたる楽曲だ。

歌詞には制作者であるn-buna自身の実体験が投影された部分もあり、「自身がとがっていた時代に『音楽以外はどうでもいい』と思って書き綴った」と音楽記事ナタリーのインタビューにて語っている。

ピアノが前線を張った、ピアノバラードロックソング。
不穏な空気のあるタイトルの楽曲だが、しかしその印象は、ボーカルのsuisの歌声を耳にした瞬間、覆されることとなる。

考えたってわからないし
青春なんてつまらないし
辞めた筈のピアノ、机を弾く癖が抜けない
ねえ、将来何してるだろうね
音楽はしてないといいね
困らないでよ

(作詞:n-buna)

「音楽以外はどうでもいい」という気持ちとは相反するように、まるで音楽をやることを否定するような歌詞。
その言葉だけを見ると、ただひたすらに音楽を毛嫌いし、かつて音楽をやっていた自分の事を憎んですらいるような面がうかがえる。

しかし、suisの歌声がそこに加わると、とたんそこに「深み」が加わる。

表面だけの言葉に込められたものではなく、歌声という、一人の人間が感情を込めて言葉を奏でた瞬間、その言葉には表面上だけではない「味」が生まれるのだ。

憎い音楽が嫌いだ音楽なんてもう辞めてやる――。ただそれだけの感情の暴力のような言葉が、誰か気持ちのこもった者に歌われる事により、その内面の深さまでをこちらに想像させるものになりかわる。
胸の中がかきむしられるような苦しくもがくような歌い方で歌われるさまを見ると、本当にこの歌の『主』は、本当に音楽を辞めたいのだろうか、音楽に対してあったのは憎しみだけだったのか、そういった考察へと導かれていく。

さて、実のところ、この楽曲が収録されたCD『だから僕は音楽を辞めた』は、ある一つの”物語”をコンセプトにして作られた作品だったりする。

ある音楽を辞めることになった青年が、エルマという人物に向けてその楽曲達を作るというストーリー展開で、このCDはその物語性を強く色出した新曲達が収録されたアルバムとなっている。

そして、この表題作は、その集大成として最後に歌を奏でるのだ。

全14曲という長い楽曲/道のり/物語。その果てに流されるこの楽曲は、それまでの音楽から知った青年の心もちを振り返りながら聴くと、また一味違った深さと彩りを感じて、その考察、そして音楽が脳裏から鳴りやまなくなる。

“音楽”という、本とは違った形で作られるこの物語”

ぜひ、本が好きで、物語が好きだという、読書家な方々に聴いて頂きたい一曲だ。

まとめ

実はこのアルバム。先日、対になる二枚目のフルアルバムがリリースされる事が決まっていたりする。

リリースは8月28日。タイトルは『エルマ』――かの青年が、楽曲を作っていた相手の人物の名だ。

青年から送られて来た手紙に影響をうけたエルマが、全14曲の楽曲達を手掛けたというコンセプトで物語/楽曲が綴られていく予定だという。

初回限定版には、エルマが青年がかつて辿った場所を旅する様を日記という形で綴ったものなどが、特典としてついてきたりと、その物語性によりいっそう「深み」がかけられたものとなっている。

もし、今回の記事でこの曲の紡ぐ“物語”に興味を持って頂けたならば、ぜひともアルバムという形でしか感じることのできない”物語”達にも触れてほしい。

選書:乙一『山羊座の友人(『メアリー・スーを殺して』収録短編)』

陰惨ないじめの標的にされていた少年が、その相手を殺してしまった。

主人公の「松田ユウヤ」は、今までいじめを見て見ぬフリをしてきた罪悪感から、その少年――「若槻ナオト」をかくまう。そうして二人で警察から逃亡する生活を始めるのだが……。実は、ユウヤにはもう一つ、彼を救おうとした理由があったのだ。

実は彼は、ひょんなことから、ナオトが犯罪を自首した後に自殺をしてしまう未来を知っていたのだ。
だからユウヤは彼を死なせない為に、彼を救おうと考えていたのだ。

けれど殺人が犯罪である事もまた確か。いくら理由の根本に『いじめ』が存在していてもそれを肯定的にとらえる事は、世間が許さない。

その事を念頭に置きながら逃避。そして胸の内にたまり続ける、今まで見て見ぬフりをしてきた自分への、彼への葛藤。いじめ、殺人というものに対しての考え

そしてこの逃避の中、見つけたある真実に、ユウヤの中の葛藤はさらに深まっていく――。

『いじめ』という、いつどこで起きてもおかしくはない事柄を題材に繰り広げられる事件展開、そしてナオトとユウヤ、それからもう一人の大事な登場人物の葛藤に、この楽曲の、表面上の言葉だけでは語りつくせない感情を歌う姿と被るものを感じ、選書した。

ヨルシカというバンドの楽曲で選ぶ本の雰囲気の参考に。
一度手に取って読んで下さると幸いだ。

【あらすじ】
「もうわすれたの? きみが私を殺したんじゃないか」
(「メアリー・スーを殺して」より)

合わせて全七編の夢幻の世界を、安達寛高氏が全作解説。
書下ろしを含む、すべて単行本未収録作品。
夢の異空間へと誘う、異色アンソロジー。

<収録作品>
乙一 愛すべき猿の日記 / 山羊座の友人
中田永一 宗像くんと万年筆事件 / メアリー・スーを殺して
山白朝子 トランシーバー / ある印刷物の行方
越前魔太郎 エヴァ・マリー・クロス

(Amazon引用/短編集『メアリー・スーを殺して』あらすじ)

 

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