♪桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたきびだんご、1つ私に下さいな~
突然歌から始まりましたが笑
みなさんもご存知の桃から生まれた桃太郎です。
童謡も童話も必ず一度は聞いたこと・見たことあると思います。
「今更『桃太郎』なんて内容知ってるし!」なぁーんて思う方もいるかも知れませんが笑
私が今回紹介する『桃太郎』はみなさんが知っている『桃太郎』とは一味、いや二味も三味も違います!…と言っておきます笑
子供のころから知っているからこそ見たこともない、度肝を抜かされる『桃太郎』をご紹介していきたいと思います!
では、始まり始まり~
目次
あらすじ・内容紹介
誰もがご存知だとは思いますが『桃太郎』のあらすじを改めて紹介します!
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、川からどんぶらこ、どんぶらこ、大きな桃が流れてきました。
おばあさんは大きな桃を家に持ち帰り切ってみると、なんと!中から男の子が産まれてきました!
桃から産まれた男の子は「桃太郎」と名付けられ、すくすくと成長しました。
そんなある日、鬼が暴れていると聞いた桃太郎はおばあさんの作ったきびだんごを手に鬼ヶ島まで鬼退治に行こうと決心します。
鬼ヶ島へ向かう道中に出会った犬・猿・キジを仲間に引き連れ、いざ!鬼退治!
見事鬼を退治した桃太郎はおじいさんとおばあさんと一緒に幸せに暮らしましたとさ。
おしまいおしまい♪
…と、まぁ恐らくこれがスタンダードな童話『桃太郎』だと思いますが、私が紹介するのはただの『桃太郎』ではありません。
上記の私が書いたあらすじのように、一般的な童話『桃太郎』は、おばあさんが何した、桃太郎が何した、と作者の第三者視点で描かれています。
しかしこの私が紹介する『桃太郎』は一人称、つまり桃太郎の視点で描かれています。
出会い
私と『桃太郎が語る 桃太郎』の絵本と出会ったのは、インスタグラムだったかツイッターだったか、はたまた他のSNSだったか忘れてしまいましたが笑
たまたま出てきた広告でこの絵本を見かけて、「桃太郎が語る桃太郎!?何これ!どんな内容なの!?おもしろそう!!」と思ったのがきっかけです。
もうこうなった私は誰にも止められず、調べてみるとAmazonでしか購入できないらしく、秒速でAmazonでポチッと購入していました笑
1人称童話シリーズとは?
『桃太郎が語る 桃太郎』は、クゲ ユウジさんが企画し作られた1人称童話シリーズの第一作目です。
1人称童話シリーズとは、スタンダードな昔話を「主人公目線」で描き直すシリーズです。
1人称だからこそ場面、場面での人物の気持ちがわかる、その人物の物語で見ている景色がわかる、読者も今まで以上に物語に入り込める!
そんな良さが1人称童話にはあると思います!
1人称で描かれる物語を読んだからこそ、この絵本を読み終わった後に「自分が物語の人物だったらどうするか。」を想像し、そこから自分だけのオリジナルの物語を創造することができると思います。
もし自分が桃太郎だったならどうしていたか?
どんな結末になっていたのだろうか?
桃太郎じゃなくておじいさん・おばあさんだったら?
犬・猿・キジだったら?はたまた鬼だったら?
自分だったらどんな物語になるのか、考えただけでわくわくしちゃいますよね♪
桃太郎の感想(ネタバレ) 初めてわかる桃太郎の気持ち
──桃太郎が桃から産まれる前、桃の中はどんな感じだったのか?
──鬼退治に行くと決心した時の心境はどんなだったの?
──鬼を目の前にした時、何を思ったの?
小さいころ、桃太郎を読んで、この時の桃太郎はどんな気持ちだったのかな?と疑問に思ったことは少なからずあると思います。
では、昔から日本人にとってのヒーローであり続ける桃太郎はどんな思いで鬼退治に向かったのか見にいきましょう!
桃太郎生前・桃から誕生する時
すぅーっといきをすいこむと、あまくてやさしい、いいにおい。
ぼくは生まれる前、大きな桃の中にいました。
大きな桃はぼくをのせてどこかへながされていくみたい。
この先に何がまっているんだろう。
楽しみとしんぱいがぼくのむねにかわりばんこにやってきて、
なんだかとてもドキドキしました。
驚くことに桃太郎は産まれる前、桃の中で意識ははっきりしていたんですね笑
桃太郎は桃の中でお昼寝ばかりしているようで、桃太郎は甘く優しい香りに包まれながら、桃の中で快適に過ごしていたことがわかります。
そんなに快適なら一度は桃の中に入って眠ってみたい…なんて思ってしまいました笑
桃がグラリともちあがります。
大きなよろこびがこみあげてきました。
そのときばくはかんじたのです。
きっとぼくはもうすぐ生まれるんだ!
(中略)
あぁ、生まれるって、なんて気もちいいだろう。
なかなか産まれる瞬間を描く本って少ないと思いますが、桃太郎視点だからこそ描くことができる誕生シーンで、他にはない特徴です。
この世に生まれる喜び、「生まれるって、なんて気もちいいだろう。」と言う表現はなんて素敵な表現の仕方なのだろうと感動してしまいました。
桃太郎鬼退治を決心
おじいさん、おばあさんのあんなにしんぱいそうな顔を見たのはその夜がはじめてでした。
(中略)
その夜、ぼくはえんがわで白い月をながめていました。
思い出すのは、おじいさん、おばあさんの青ざめた顔。
ぼくのむねは、ズッシリおもたくなりました。
鬼が都で暴れている話を聞いた桃太郎は、いずれやって来るであろう鬼に不安を隠せないおじいさんとおばあさんの心配そうな顔が頭から離れないでいます。
桃太郎はよっぽどおじいさんとおばあさんが大好きで大切なのでしょう。
そして決心します。
ーあくる朝、ぼくはふたりに思いきって言いました。
「鬼ヶ島に行き、鬼たちをたいじします!」
大好きなおじいさんとおばあさんの為、桃太郎は一晩考えに考えて出した決断。
きっと二人に言い出すのも勇気がいったと思います。
でも桃太郎の決意は固く、
ぼくはふたりを三日三ばんせっとくしました。
ぶじに帰ってくると百回も約束し、ようやくたいじをゆるしてもらったのです。
鬼退治に行く桃太郎を心配して反対するおじいさんとおばあさんを説得してようやく鬼退治に行くことを許してもらえた桃太郎。
一般的な桃太郎ではおじいさんとおばあさんが鬼退治を反対していたことも、説得に三日三晩もかかったことも、無事に帰ってくると百回約束してようやく許してもらえたことも出てくることはありません。
桃太郎の視点だからこそ描くことができるエピソードなのではないかと思います。
鬼退治編
そうしてついに鬼と対面した桃太郎!心境はいかに!!
ぼくは刀をぬきました。
でもどういうわけか、足が前にうごきません。
ぼくはいつの間にか、ふるえていました。
ぼくは鬼がこわいと思いました。
日本人のヒーロー桃太郎も最初から勇敢果敢に鬼に立ち向かったわけではなく、鬼を前に足がすくみ、体は震え、鬼が怖いと感じています。
これが桃太郎の本音なのだと、今まで語られてこなかった桃太郎の本当の気持ちなのだと衝撃を受けました。
桃太郎も私達と同じ人の子。
自分よりも大きくて強いものを目の前にすると怖いし、恐怖で足がすくんで動けなくなる。
それでも勇気を振り絞って、大好きな人達の笑顔を取り戻すために仲間たちと果敢に立ち向かう大切さ。
そんな強さと勇気を教えてくれる、1人称で語られる桃太郎ではそんな魅力が詰まっていると思いました。
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「生まれるって、なんて気もちいいんだろう。」
コロンブスの卵のように意表を突かれた表現でした。その発想・視点はなかった、というか…。赤ん坊は気持ちよすぎて感動の産声を上げるのか、この世で待ち受ける業を憂いて畏れおののき泣き上げるのか。
それは想像する人の人生観で変わってくるのかもしれませんが笑
絵本がグッドデザイン賞を受賞していただなんて。グッドデザイン賞の展覧会に行ったことはありますが、あそこに絵本が加わるのはとても嬉しく思います。
淡々と語られる物語の視点を変えるだけでこれだけ新しいドラマの誕生や感情の発見が得られるのは驚きです。
反対に、一般的な小説を童話風の俯瞰目線で書くとどうなっちゃうのでしょうね笑
『ハリーポッターを童話風にしてみた』みたいな本があれば気になっちゃいます!