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『やさしいしろくま』あらすじと感想【新進気鋭のイラストレーターによる心温まる水彩画本】

『やさしいしろくま』あらすじと感想【新進気鋭のイラストレーターによる心温まる水彩画本】

思えばこれまでの人生、絵を見て泣いたことなんて1度もなかったかもしれない。

その淡色のしろくまたちをTwitterではじめてみたとき、私は生活に疲れていた。

イラストレーター・しろさめさんの優しい色彩と言葉は、疲れ果てた心に深く染み込んで、久しぶりに涙が出た。

こんな人におすすめ!

  • 詩や写真が好きな人
  • 美しい絵に癒されたい人
  • もふもふした生き物が好きな人

あらすじ・内容紹介

なんでもなかったようなことが少しずつなんでもなくないものになってゆく。限りある特別を想って、今日も特別な『おはよう』を

主な登場人(熊)物は、親元を離れ生活する絵描きの少女、料理上手のおっきなしろくま、ちいさなしろくまの3名である。

おいしそうな手料理の数々、美しい花々、穏やかな時間、暗闇がおそれるだけのものではないこと。

彼らのとりとめのない日常が美しくも繊細かつ、やわらかなイラストで描かれている。

全編が淡い水彩画で描かれており、ページをめくるだけでも心が温まるが、添えられた言葉のひとつひとつにも心がきゅうとつかまれる。

やがて少女は絶え間なく過去の孤独に押し戻されながらも、しろくまたちの優しさとモフモフに包まれ、少しずつ自分を取り戻してゆく。

この本は単なるイラスト集ではなく、少女がふたたび笑えるようになるまでの温かさと再生の物語でもあるのだ。

『やさしいしろくま』の感想・特徴(ネタバレなし)

魅力1:しろくまズが圧倒的にかわいい

すでに穴があくほど、何遍も読んでいる。

せっかくの機会なので、一体なぜこんなにもしろさめさんの世界に惹かれるのか、その世界観の魅力について考えてみた。

この記事では核心的なネタバレは避けつつ、限られた文字数内で彼女の魅力を精一杯伝えていきたい。

 

目の前には雪玉みたいに小さな背中。寄りかかるのは氷山のように大きな背中

なんといってもまずはじめはここから始まる。

しろくまたちがとにかくかわいい。

ちいさなしろくまが、あたたかな春の日差しに目を細める表情。

すやすやと眠る幸せそうな顔。

おおきなしろくまのこころを抱きしめるような安心感。

1コマ1コマの表情にしろくまたちの生の感情が込められ、どれひとつとして同じものがない。

魅力2:美しい色使い、風のにおいまで感じるイラスト

2つ目の魅力は美しい色彩感覚が特徴のイラストだ。

画集なのだから、もちろん当然といえば当然だと思う方もいるかもしれない。

しかし、彼女の絵には視覚からくるものだけではなく、もっと別の五感に訴えるものがある。たとえば、四季や自然のにおいだ。

作中の季節は、桜、紫陽花、ひまわりなどの四季折々の花々と共にゆっくりとめぐっていく。

ページを繰るごとに、花の香りや気持ちのよい日差し、額を撫でる風の感触、雨や水、夜の匂いを彼らと一緒に全身で感じとることができる。

あるいは、こぐまたちの前に燦然と並ぶ、ふわふわのオムライス。

「おいしいよ、オムライスっていうの」とスプーンをくわえながら小さなしろくまが言うとき、すでにひとくちかじられたオムライスからはチキンライスが絶妙な角度で顔を覗かせている。

卵と食欲をそそるような甘酸っぱいトマトの味覚を思い出す、実においしそうな食べられ方だ。

きっとケチャップで描かれた絵を壊さないよう、大事に食べているのかもしれないな、とつい彼らの日常を想像し、何ともいえない愛しさがこみあげてくる。

ぐうかわ(ぐうの音もでないほどかわいい)。

他にも食卓に並べられたそれぞれのお皿のサイズがぴったりと身体のサイズごとに用意されていて、食卓に過不足がないこと。

それがとても幸福なことに思えて、いつまでもこの世界を、イラストを眺めていたいと思う。

魅力3:イラストに添えられた言葉の美しさ

鮮やかな色をした花火たちがパチパチと音をたてて爆ぜていく。彼の真っ黒な瞳がキラキラと輝いて、真夏の夜空のようだった

ご紹介する魅力の3つ目は、イラストに添えられた言葉の美しさだ。

まるで一遍の短編小説を読んでいるかのように、本書に書いてある言葉たちはまっすぐ情景を伝えてくる。

色彩や光の感覚を鋭く豊かにとらえる文章表現は、絵描きの方ならではだと読むたびに感じるし、他にも読者の心を一瞬どきりとさせるような、こんな表現もある。

私が私であることをいつだって許されたがっている。どうしていつもこんなに居場所を求めているのだろう

この物語は冒頭で書いたように、ひとりの少女が過去の孤独にさいなまれながらも、少しずつ自分の居場所を見つける物語だ。

だからこそ、わたしたちはこの少女に共感し、言葉少なに、けれども瑞々しく鋭敏な感性で語られる少女の内面に引き付けられるのだ。

イラストだけではなく、ぜひ添えられた文章の美しさも味わってみてほしい。

まとめ

「しろくま」は誰の心にでもいる。

それが読後にまず感じたことだった。

疲れて、しんどくて、泣きたい夜に、ほっとできて、すこしだけ明日の元気をくれるもの。そういう優しいものが人生にひとつでもある人は幸福だ。

物語の最後で明かされる「しろくま」が彼女にとって一体何なのか。

それはここでは明かさない。

しかし、私もまた作品を味わいながら、自分の人生にとっての「しろくま」を探す勇気ときっかけをもらえたような気がする。

これから読むほかのイラスト集もとても楽しみだ。

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