太宰作品との繋がり!?
子ども向きに作られた作品だからといって侮ってはいけません。
この作品を大人になって読み返した際にあることに気が付きました。
太宰治の『魚服記』と似ている、ということです。
簡単にこの作品について説明すると、
山の中に住んでいた父親と娘。あるとき15歳になった娘は青年が崖から滝へと落ちて死んでしまうところを目撃する。
なんの疑問も持たずに生きてきた娘はあるとき、生きる意味について父親に問う。答えられない父親に死ねばいいと怒鳴った。
夜、疼痛と父親の酒臭い息を感じ、娘は吹雪の中を歩き、滝へと飛び込む。
娘は龍になった、もうあの家へ帰らなくてもいいと思い喜んだ。だが娘は龍ではなく、小さな鮒であった。
という作品です。
どこが関係するかというと、娘の回想シーンで明かされる幼いころから父親に語られてきたとある話。
その話とは、兄弟がひとりの帰りを待ちきれずに魚をすべて食べてしまい、しまいには龍になってしまうというもの。
龍の子太郎の母親も魚を3匹食べてしまい龍になってしまいます。
調べてみると、信州の小泉小太郎伝説をどちらの作品も取り込んでいるらしいということです。
松谷みよ子も太宰治も昔の作品を取り込みながら、オリジナリティを加え新しい作品を生み出していっています。
昔から語り継がれてきた伝説がそれぞれ『龍の子太郎』『魚服記』と新たなかたちで伝承されているともいえるのではないでしょうか。
おわりに
子ども向けの太郎ものといえば『桃太郎』などがすぐに浮かんできますが、『龍の子太郎』と違うところは情けをかけるかどうかでしょうか。
ときどき鬼視点の『桃太郎』が話題になりますが、『龍の子太郎』は誰にでも心優しい性格。
鬼にだって優しく、許す心を持っています。
そんな龍の子太郎のやさしさに触れながら読んでみてください。
子どものころに読んだ本を大人になって改めて読んでみると、当時は気が付かなかった発見がたくさんあると思います。
それだけでなく、読んでいたときの思い出も一緒によみがえってくるのではないでしょうか。
本はただ読むだけでなく、その時の思い出などを一緒に保存することができます。
今回紹介したのは児童書でしたが、他の本もぜひ読みかえしてみてください。
難しかった本も、挫折した本もいまなら楽しく読めるかもしれません。
主題歌:水曜日のカンパネラ/メロス
水曜日のカンパネラ『メロス』
龍の子太郎じゃなくてメロスじゃんと思った方もいるかもしれません。
先ほど紹介したように太宰治との間接的な関係があったので、それも活かしつつメロスと龍の子太郎の性格に共通点があると思ったので選びました。
- 正しいものは正しい、間違っているものは間違っているという真っすぐな性格。
- そして誰かのために行動するところ
メロスと龍の子太郎の姿を重ね合わせながら楽しんでもらえればなと思います。
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