ロシア文学というと皆さんどんなイメージをお持ちですか?
私がドストエフスキーの名作、『カラマーゾフの兄弟』と出会ったのは高校生の時。私はエンタメ中心に読み漁っており、本作のタイトルだけは知っていましたが、堅苦しい印象を持って敬遠していました。
しかしある時ネットサーフィン中に『カラマーゾフの兄弟』のファンアートを発見。
イケメン三兄弟のイラストに興味を惹かれ、図書室で埃を被っていた分厚い本を借りることにしたのです。
こんな人におすすめ!
- 無神論者の人
- 世界の不条理に悩める十代二十代の若者
- 活字を通して人間の深淵を覗き込み、世界の真理に目覚めてみたい
あらすじ・内容紹介
『カラマーゾフの兄弟』は、片田舎の地主カラマーゾフ家の三兄弟を中心に展開される愛憎劇です。
放蕩者の長男ドミートリイ、インテリで無神論者の次男イワン、誰にも愛される純粋無垢な三男アレクセイが、支配的な父親フョードルの元に集うのが物語のはじまり。
フョードルは若い愛人グルーシェンカに入れ上げていましたが、ドミートリイもまた彼女に恋をしたことから、親子間で熾烈な争いが勃発します。激しい喧嘩の末ドミートリイは父親を「殺してやる」と脅し、先行きに暗雲が立ち込めました。
後日フョードルの撲殺死体が発見され、犯行現場から大金が盗まれる事件が発生し、ドミートリイに嫌疑が掛けられます。一方アレクセイは恩師ゾシマがきっかけで信仰の揺らぎに直面し……。
『カラマーゾフの兄弟』の感想(ネタバレ)
本作で一番心惹かれた登場人物は皮肉屋のイワンです。
三兄弟はいずれも強烈な個性の持ち主でそれぞれ違った人間臭さを持ち合わせていますが、中でもイワンの屈折ぶりは凄まじく、この世のあらゆる悲劇に憤り、それを許す神を呪いながらも見限れず苦悩する姿は、現代社会に通じる歪みを孕んでいました。
イワン屈指の名場面として推したいのが、酒場にアレクセイを誘い、児童虐待の凄惨な事例を列挙していくシーン。ネットやテレビ、新聞などで、胸糞悪い報道を日常的に見聞きしている人は、なぜ神は正義を成さないのか、と憤るイワンの主張に共感せざるを得ません。時に目を覆い耳を塞ぎたくなる実話も引用し、神の怠慢を糾弾するイワンの迫力には、聞き手に回ったアレクセイともども戦慄しました。
下男スメルジャコフとの対話やクライマックスの法廷シーンにおける精神崩壊などもドラマチックで、潔癖な男が堕ちていくことでしか得られないカタルシスを十分に堪能できました。
多感な高校生だった私は、イワンに性癖を捻じ曲げられたといっても過言ではありません。
アレクセイやドミートリイと育む麗しき兄弟愛、兄の婚約者であるカチェリーナとのもどかしすぎる両片想い描写にも一喜一憂しました。
まとめ
以上、私の人生を変えた小説『カラマーゾフの兄弟』の尽きせぬ魅力をお話しました。
もしこの小説と出会っていなければ、純文学に苦手意識を持ったまま他の名作にも手を伸ばさなかったかもしれません。それくらい衝撃的な読書体験でした。
個人的にはイワンと同じ無神論者の人や、世界の不条理に悩める十代二十代の若者にこそ読んでほしいです。活字を通して人間の深淵を覗き込み、世界の真理に目覚めるのも読書の醍醐味だと思います。
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