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【木の香りに包まれて「自分」に戻れる場所】ペンギンが迎えてくれる本屋「ポルベニールブックストア」さんで本と目が合ってしまいました(神奈川・大船)

Twitterで開店前からチェックしていた本屋さんがありました。

その名も「ポルベニールブックストア(Porvenir Bookstore)」さん。

ペンギンがお迎えしてくれる本屋さんということで、ペンギン好きとしては反応せずにはいられませんでした。


神奈川県鎌倉市にある大船駅の南改札を抜け、東口へ。

6分ほど歩いていくと、コンビニの向かいに、大きな窓が印象的な建物が見えてきます。
夜7時過ぎ。店内の明かりにより、道路の向かい側から中がはっきりと見えました。

窓辺には1羽のペンギン。
車が行きかう道を見つめ、彼(もしくは彼女)は何をおもうのでしょう。

お店の中に入ると、木の香りに包まれました。
本棚はもちろん、床も、店主が作業している奥のカウンターも、天井でさえも、木製です。

にこやかに迎え入れてくれた店主、金野典彦(こんの・のりひこ)さんにお話を伺いました。

ペンギンがいる本屋さん

店内のペンギン

━━ペンギンがとても印象的なのですが、このペンギンたちに名前はついているのでしょうか?
金野さん(以下、「金野」) 以前もお客様に名前を訊ねられましたが、特につけていません。女性は名前をつけたがる傾向があるような気がします。

━━名前をつけることで愛着がわくからかもしれませんね。逆に、手放せなくなるから名前をつけないという人もいます。
金野 この店は長くやっていくつもりですので、つけてもいいかもしれませんね。

 

━━店内には4羽いますが、すべて開店するときに用意したのでしょうか?
金野 リアルな3羽は、僕が同じ店で買ってきました。あとの1羽は友人からもらったもので、新江ノ島水族館、「えのすい」のお土産です。
━━だからあの子だけ雰囲気が違うのですね。

ロゴマークのペンギン

━━ロゴにもペンギンがいますよね。それがかわいくてTwitterで気になっていました。どうしてペンギンを選んだのでしょうか?
金野 若い頃バックパッカーをしていて、南米にいたとき、どうにも調子が上がらない時期がありました。そんなとき、観光客向けのツアーに参加しペンギンを見ました。自然なしぐさがかわいくて、無心に楽しむことができました。

━━では、ペンギンを目的に行ったのではなかったのですね。
金野 そうですね。ふらっと行きました。ペンギンに救われた感じが今でもあります

━━“はるばるパタゴニアからやって来た?ペンギン”とサイトに表記されていますが、そのペンギンを見たというのは、パタゴニアという土地でのことだったのでしょうか?
金野 パタゴニアはチリやアルゼンチンの南部ですね。店名の「ポルベニール」はパタゴニアにある小さな街の名前です。あのあたりにはいくつかペンギンの生息地があり、そのひとつに行きました。

━━よく見ると、ロゴにはタンポポも描かれていますね。こちらもパタゴニアに関係があるのでしょうか?
金野 風の強さがパタゴニアの代名詞とも言われているくらいで、木がまっすぐに伸びないところなのです。だからロゴのタンポポも、斜めになっています。実際に旅先で見たものをロゴで表しました。

━━ポルベニールブックストアの「ポルベニール」は、聞きなれない言葉ですが、どういう意味の言葉なのでしょうか?
金野 スペイン語で「未来」という意味です。本を読めば、地球の裏側であるポルベニールにも、未来にもいける。そういった想いも込めています。

『本を贈る』との繋がり

本屋として初めて会った

━━過去のブログを拝読したのですが、最初に店頭に飾った本は『本を贈る』だったのですね。実はトークイベントを拝聴し、そのレポートをReaJoyで書いたことがあります。
【あなたに届けたい本】『本を贈る』刊行記念トークイベント「吉祥寺で本をつくること」

━━そちらで感じたのは「あなたに、届けたい」という想いでした。ポルベニールブックストアさんのコンセプト、「『みんな』のための本はない。『あなた』のための本がある。」と通ずるところがあるように感じました。
金野 それはもっともな話です。実は三輪舎の中岡社長とは直接お会いしてお話ししたことがあり、考え方や志向に近いものを感じました。

━━中岡さんとお会いしたきっかけは何だったのですか?
金野 7月に、いろんな出版社さんがブースを出すイベントに行った際、朝日出版社橋本さんと知り合いました。

━━『本を贈る』の著者のお一人ですね。
金野 そうです。橋本さんに紹介していただき、ポルベニールブックストアとして初めてお会いした出版社の方が、中岡さんでした。

━━橋本さんが繋いでくださった御縁だったのですね。
金野 はい、感謝しています。神楽坂のかもめブックスで行われた『本を贈る』のトークイベントは、橋本さんがゲストだったのですが、聴きに行きました。そうして、『本を贈る』を介してのご縁はより深まっています。

置く本・置かない本

長期間でも耐えられるもの

━━選書のこだわりを教えてください。
金野 この店にある本はすべて、自分の意志があっておいてある本です。ない分野の本を言ったほうが早いですかね。

  • 一般的な雑誌
  • ビジネス書
  • ハウツー本
金野 棚全般に言えることですが、情報の賞味期限が短いものはあまり置いていません。
━━最近はネットでもだいたいわかるようになってしまっているので、なおさらその期間が短くなっているような気がします。

金野 だからこそ、なるべく短期間で消費して終わるような内容じゃなくて、読んだ人に何かしら残るような、蓄積されるような本を選ぼうとおもっています。

絵本・児童書の動き

━━どういった本が人気ですか?
金野 よく動くのは、絵本や児童書ですね。

━━親子連れのお客様が多いのですか?
金野 すぐ近くに幼稚園や小学校もあるので、お子さんを迎えに来た親御さんが帰りに寄ってくれます。それに、年配の方も多いです。

━━年配の方はどういった本を求めてらっしゃるのですか?
金野 孫や、甥っ子姪っ子のために、何かいい本がないか探しに来てくださいます。

少子化の時代ですが、子どもにいい本をプレゼントしたい祖父母は多くいるのではないか、と金野さんは語ります。
本を贈ってもらえる子どもたちが羨ましいです。

豊かな棚を目指して

金野 長らく出版社に勤めてきましたが、技術系の版元でしたので、それ以外の本については詳しくありません。いま一生懸命学んでいます。

━━あまり知らないジャンルの本はどのように知るのですか?
金野 お客様に教えていただくことが多いです。ちょっとでもおもしろそうだとおもったり、自分が好奇心をそそられる本であれば、あまり迷わずに直感的に入れるようにしています。まだ棚を充実させようとおもっています。


ヨシタケシンスケさんの絵本などが並ぶ棚。
下のカゴに荷物を入れ、ゆっくり見てまわることが可能。

金野 「この分野には絶対に欲しい」という本でも漏れているものもあるとおもうので、そういうのを丹念に拾っていって、動きを見ながら、棚をちゃんと充実させていこうという方針です。

━━丁寧な棚は、じっくり拝見したくなります。先ほど見てまわりましたが、すでにほしい本がたくさんあります。気に入ってくださるお客様も多いのではないでしょうか?
金野 ありがたいことにリピーターのお客様もちょこちょこきてくれますが、やっぱり絶対数が少ないので……新しい本がないと、「この間と同じ本しかない」と感じてしまいます。それでは定着していただけないので、そうならないよう仕入れにもっと注力して、さらに本を増やそうとしています。

━━来るたびに新しい本と出逢える本屋さんは、通いたくなります。

本屋って面白い

1日目に感じた面白さ

金野 初日にまずおもいました。「本って多様なんだな」って。本当にさまざまなジャンルが売れて、こんなに本の世界って豊かなんだと。

━━最初から感じたのですか。
金野 はい。こりゃ面白いなって、はじめの日におもいました。

━━それほどはっきり表れていたのですね。
金野 売れたスリップを見ると、それが本当にバリエーション豊かなんです。こういう本屋ではこんな風に売れて行くんだ、と感じました。それが初日から見えてきて、よかったです。

売れない本

━━意外と売れなかったものもありますか……?
金野 ありますよ、そりゃ、いろいろ。ほかの本屋さんで平積みになっているような本でも売れなかったりします。

━━ここに来るお客様はベストセラーを求めているのではないのですね。
金野 そうみたいです。見たことがある本ではなくて、ちょっと変わった本のほうが手に取ってもらえます。

実際、棚を拝見していて、「この本は見たことがあるから今回はいいや」と考えていました。
それよりも、せっかくここまで来たのだからここで出逢えた本を買おう、と選びました。

ほかの人も、その気持ちが働くようです。

金野 個人のお店なので、失敗もすべて自分の責任です。自分が失敗しても、「ミスったー、やっちまったー」で、それ以上誰かに迷惑をかけるわけでもないので(笑)
━━なるほど。そういう意味では気楽ですね。

金野 失敗しても、面白いです

手書きメッセージ

黒板のメッセージは日替わり
訪れた日、2018年12月14日(金)のメッセージは以下の通り。

本を選ぶ時間は、
貴重な自分自身に
戻れる時間。
静かな至福のときを
どうぞこの場所で。

━━黒板のことばに込めた想いを聴かせてください。
金野 大人は、外ではいろんな役割があって、会社員だったり主婦(夫)だったり親だったりしますけど。ここでは一個人にもどって、静かに、自分の本を自分自身のために選んでほしいです

このお店はとても落ち着きます。
一定の基準をクリアした本はどれも、こちらに情報を押し付けてくることがありません。お客様と目が合うのをじっと待っているように見えます。

そのおかげで、ゆったりと選ぶことができます。

金野 その人の好奇心を大切に、「こんな本あるんだ」「この本面白そうだな」とおもって、本を選ぶことを楽しんでほしいです。

店舗の決め方

店の広さ

━━このお店は、想定していたよりも広い場所だったそうですね。
金野 そうです。ここは10坪なんですけれども、ひとりでやるイメージとしては、7~8坪くらい。ひとまわり小さいくらいの広さをイメージしていました。

━━それにもかかわらず、なぜこの場所を選んだのですか?
金野 とりあえずちょっと調べてみて、今後の判断基準になるからまずは一か所、とにかく見てみようと軽い気持ちで出かけたのが、ここでした。

━━ということは、最初の場所で決めたのですか?
金野 「ここいいなぁ」と、気に入ってしまって。いちおう、3日間くらい迷った、ふりをしたんですけど(笑)

━━はじめから決めていたのですね。
金野 いま自分が決めたらそのチャンスをつかめるのに、ここをスルーして別の人に決まってしまったら後悔するだろうとおもって、勢いで。

━━ほかのところは見ていないのですか?
金野 はい、ここだけ。店舗探しに苦労してらっしゃるほかの本屋さんには申し訳ないくらい、直感で決めました。

身体が動くほうに

━━直感を大切にしてらっしゃるのですね。
金野 基本的に直感で行動するようにしてから、大きな失敗はしていません。たぶん人間の直感って、本人がおもっている以上に、当たっているのだとおもいます。この歳になって、そう実感しています。

━━やりたいことの本質的な表れかもしれないですね。
金野 僕は頭で考えてもあまりうまくいかず、どちらかというと、身体が反応したほうに、ぱっと動いたほうがいいみたいです。

━━考えるよりもまず行動。
金野 それで失敗することもあるけど。数年前から基本直感です。物件を決めたのが5月の下旬だったので、そこから開業までほぼ半年ですね。

━━半年前のご自分がいまの状況を知ったら、なんて言うとおもいますか?
金野 「え? 年末には本屋やっているの?」って、驚くとおもいます。

オープンしてからの変化

長く続けるために

━━開店してから1か月ほど経ち、変えていこうと考えていることはありますか?
金野 休みや営業時間を変えようとおもっています。自分が倒れたり、ストレスをため込んでもいけないので。

金野 身体が悲鳴を上げている中で無理してやると、例えば不注意を起こしてケガするとか、そういったリスクがありますから。身体が「いまはやめておけ」と言っているなら、きちんと休みます。
━━身体の声を聴きながらやるのは大切ですね。

金野 お店を長く続けられるように、自分のコンディションを整えていくつもりです。

理想の生活スタイル

金野 直感で大船に決めましたけど、仕事場としても、暮らす場としてもいいところです。2か月くらい前に、家も大船に引っ越したんですよ。

━━大船の住民なのですか。
金野 そうです。ふだんは自転車で通っています。
━━通いやすい距離感というのはいいですね。

金野 東京まで通うのではなくて、ローカルで仕事をしたいという思いがありました。いままでは結果的に東京で仕事を続けてきましたが、心の中に違和感がずっとありました。
━━では、夢がひとつ叶ったのですね。

金野 大都市東京じゃない、自分が選んだ地域で、ようやく仕事ができるようになったということは、うれしいですね。やっと形にできた。まだ形になったばかりですけど。
━━なるほど。だからこそ、続けたいという想いが強いのですね。

金野 始めることはある程度勢いでできるかもしれないけど、続けることのほうが大変です。

この本屋に曲をつけるなら?

━━ReaJoyでは、本を紹介するときにイメージ曲を考えます。金野さんが考える、「ポルベニールブックストア」のイメージ曲は何ですか?
金野 イメージ曲? 考えたこともなかったですが、いまパッと浮かんだのは、My Little Lover の 「evergreen」でしょうか。

金野 「風通しの良い本屋」を謳っていますが、この曲の解放感・風が抜けていく感じが好きで、通じるものがあればいいなぁとおもいます。

結びに代えて

オープニングキャンペーンとして、税込3,240円以上購入すると、オリジナルのロゴ入りコットンバッグをプレゼントしていました。
(このキャンペーンは12月で終了しています。)

ペンギン好きとしてはこのバッグをゲットしたかったので、単行本を2冊お迎えする予定でした。


2冊で終わるはずがありませんでした。

『本を贈る』
イベントの記事を書いていながら実は未読。今回御縁がある本屋さんだと知り、ここでお迎えすることに決めました。
第1刷は絵の色が赤なのに対し、お店にあったのは第2刷の、いわゆる「緑版」。

『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』
「これから本屋さんを取材していくならまずはこの1冊」と、金野さんがおすすめしてくださった本。気になる本屋さんがどんどん増えてしまいます。嗚呼、全部行きたい……。

『僕たちはなぜ取材するのか』
ポルベニールブックストアさんで初めて出逢った本。題名に惹かれました。ほかの方はどのように取材してらっしゃるのか……知りたいです。


ブックカバーをかけるとき、金野さんは1冊ずつじっくりと見て、お話してくださいました。
どれも意図があっての選書、思い入れが1冊1冊あるのだと、感じました。

『僕たちはなぜ取材するのか』について、「本と目が合ったのですね」と金野さんが仰って、ストンと納得しました。そうです、目が合ったのです。この本と。

お迎えしたいとおもったのです。


話し手:金野典彦
聞き手&ライター:織
フォトグラファー:望月暁生

店舗詳細


店主の金野さん。「えのすい」のお土産のペンギンとともに。

ポルベニール ブックストア(Porvenir bookstore)
〒247-0056
神奈川県鎌倉市大船3-4-6 清水ビル1階D

営業時間と休日(2019年1月より)

営業時間
火   13:30~19:00
水~金 11:00~13:30/14:30~19:00 ※13:30~14:30はシエスタ(お昼休み)
土   10:30~19:00
日   10:30~18:00

※日曜日以外は、あらかじめお電話、Eメール、ツイッターのリプライなどでご連絡を頂ければ、可能な限り最長20時まで対応いたします(※都合により対応できない日もございます。ご了承下さい)。

休日
毎週月曜日/月2回火曜日(※祝日と重なった場合は営業し、原則翌日を休日)
お盆/年末年始

年末年始のお休み
12/31(月)から1/3(木)までの4日間
※1/4(金)より通常営業

詳しくは公式サイトをご覧ください。


ReaJoyの裏話等を、個人ブログ「しきおりつづり」にて綴っています。

よろしければこちらも是非、ご覧ください。

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