信の魅力が詰まった、名言を5つ紹介!
信には学が無い。
しかし熱き心と、真っ直ぐさがある。
聴く者の心をストレートに貫く、純粋な言葉の数々を紹介!
「奴らの見た夢を現実のものに変えてやれよ!!」
弱小王である秦王・政一行が、山の民の城で囚われの身になったとき。
かつての秦王と同盟を結んでいた山の民たちであったが、裏切られた過去がある。
積年の恨みもあり、政たちを処刑したがる山の民たちだったが、王である楊端和は葛藤の中にいた。
それは政が“中華統一”を口にしたからだ。
若い楊端和も山界だけでなく、世界を広げたいと願っていた。
この場面で楊端和の背中をドンッと力強く押す言葉が、信から放たれる。
信「だいたい一番の無念は夢を見てたものが、幻に終わったってことだろうが!!(中略)
奴らの見た夢を現実のものに変えてやれよ!!」
秦国へ対する恨みや憎しみ。
そんな後ろ向きな姿勢から、この言葉で一気に楊端和は解き放たれる。
率直にして、何の飾り気もなく、相手の心に突き刺さる言葉。
信が多くの仲間の心をつかむ、最初の名言がこれだった。
「戦友(仲間)だからだよ」
信と羌瘣が本気で剣を交えたことが、一度だけあった。
それは蛇甘平原の戦い後、かつての王弟の乱の残党が秦王・政の命を狙ったとき、刺客側に羌瘣が雇われていたためだ。
多くの刺客専門の一族が集う中、闇世界で幻の一族として恐れられてきた蚩尤族・羌瘣。
王を守る信に対し、人間離れした剣技を見せる羌瘣。
実力の差は歴然、切り刻まれていく信。
それでも一向に退かない信に対して、羌瘣が問う。
羌瘣「王を助けても将軍にはなれないぞ。なぜここで命を張る?忠義というやつか?」
信「はぁ?バカか、お前。そんなもん俺にあるわけねェだろ」
羌瘣「じゃあなんだ」
信「戦友(仲間)だからだよ。共に汗と血を撒き散らしながら戦ったなァ」
そして羌瘣に対し、刺客などやめて日の当たる戦場で戦えと伝える。
どこまでも仲間を大切にし、正直でストレートな言葉が、羌瘣のその後を変えた名場面。
「現実、現実つってクソみてェなことまで正当化する奴が一番ムカつくんだよ」
3百人将となった飛信隊を含む軍が、魏国の要所・山陽へ向かう途中の城を落としたときの出来事。
降伏した敵国の民を、人道無比に蹂躙する秦軍千人将・乱銅。
その蛮行に激高した信は、乱銅に切りかかる。
仲間の上官である千人将を切ったとなれば、信の首だけでなく飛信隊も消滅する。
乱銅の首を切る寸前のところで、蒙恬の言葉が響き渡った。
蒙恬「お前の大将軍への思いはそんなものか!」
手が出せないと踏んだ乱銅は、卑怯にも信を切りにかかる。
乱銅「てめェみてェに現実しらねェ正義感気取りが、一番むかつくんだよ!」
乱銅の一刀をかわし、切り返した信。
味方の上官を切ってしまった。
そこで信が言い放った言葉がシビレる!
信「俺はてめェみたいな現実現実つってクソみてェなことまで正当化する奴が一番むかつくんだよ!」
私の胸にはグサッと突き刺さった。
これほど極端な場面でなくても、生活の中で大なり小なり思い当たるコトがある・・・
信は続ける。
信「みんなやってるからなんて、何の言い訳にもなってねェ!!外道は外道だ!!」
ほんとにそうだ。
似たような言葉を思ったこともあるし、少しは聞いたこともあるセリフだ。
信「処罰が怖ェからってこんな状況を見て見ぬふりなんざして、何が天下の大将軍だ!!」
飛信隊のみんなが拳を上げて叫び、信の下へ駆けつける。
信の頭の中には「天下の大将軍」像がはっきりと描かれている。
そして飛信隊の隊員も、そんな信だからこそ迷い無くついていけるのだ。
「どんだけ離れようと・・・」
輪虎を倒した信だったが、受けた手傷を酷く数日間、目を覚まさない日々が続いた。
先に目を覚ました羌瘣は、戦前信に伝えていた通り、仇討ちの旅に出ようと考えていた。
羌瘣は飛信隊を自らの居場所と感じ始めていたが、仇を討った後、正直どうしていいのか分からず迷っていた。
夜明け前、信が目覚めるのを待たず、飛信隊の誰とも顔を合わすことなく去っていく羌瘣。
とぼとぼ歩く羌瘣は、飛信隊野営地から随分離れたところで落とし穴に引っかかり落ちてしまう。
待ち伏せしていた信をはじめとする飛信隊メンバーたち。
信「やっぱり落ちた」
高笑いする信に対し、羌瘣は怒りのオーラを発している。
羌瘣「何のマネだ」
黙って1人で行こうとしていた羌瘣に、重傷の信が仲間に肩を借りてまで伝えようとした言葉。
信「どんだけ離れようとお前の小っせェ背中、俺達がガッチリ支えているからなってこった」
迷いの中にいた羌瘣の胸に、恐らく深く突き刺さっただろう。
彼女の大きな瞳に涙が浮かんでいた。
共に戦場で血を流しながら一緒に戦った仲間。
誰よりも仲間を大切にする信を物語る、名場面の名セリフ。
「誰より強くてかっこいい天下の大将軍に・・・」
最後に、個人的に1番好きな名言を紹介!
黒羊丘の戦いでは、飛信隊は桓騎軍の指揮下で行動することになる。
予想していたとはいえ、敵国の村に略奪行為を行う桓騎軍。
ところが、桓騎軍へ出向していた尾平から略奪品が見つかる。
激怒した隊長・信は尾平を殴り飛ばし、隊からの追放を告げる。
失意に落胆する尾平だったが、桓騎兵が信をバカにする光景に我慢できず、殴りかかってしまう。
もちろん返り討ち。
意識なくボロボロになって、信のテントに運ばれた。
意識が戻った尾平に、信は幼かった頃、漂と話したキラキラした「天下の大将軍」像のことを話す。
キラキラの中には現状、戦場で黙認されている陵辱や虐殺を決してしないことも含まれている。
そしてその青臭い理想によって、飛信隊員たちがバカにされ色々我慢させていることを尾平に詫びる。
このとき飛信隊全員が、テントの外で信の言葉に聴き入っていた。
つまり信は隊員全員に詫びたのだ。
そして自らの理想を身勝手に追い求めるのではなく、ついてきてくれる仲間の不利益や苦労も全て理解し、背負い込む覚悟と決意を表した名言がこれ!
信「でもそこは譲りたくない。ガキ2人で胸高鳴らせた、誰より強くてかっこいい天下の大将軍に・・・オレは本気でそうゆう将軍になりたいと思ってる。そして飛信隊もそういう隊でありたいと思ってる。」
こんなリーダーがあなたの周りにいるだろうか?
強い理想を持ちながら、すべてを背負う覚悟を示し、謙虚な気持ちで部下と真剣に語り合う。
まさに理想のリーダーだと思う。
信を覚醒させた4つの戦いとは?
幼い頃から黙々と、漂と修行に励んできた信は強いのである。
追ってきた刺客や王宮奪還の際に戦った左慈など。
彼らも強かったが、実は信自身が自分の強さに気が付いていなかっただけのように思える。
信の強さに気付いていたのは、相手をしてきた漂だけだった。
だが、明らかに漂の知っている強さを、はるかに上回る強敵たちが信の前に現れる。
この数々の修羅場を信は覚醒することで乗り越えてきた。
これから紹介する戦いは、信が覚醒しなければ勝てなかった、4つの戦いである。
輪虎との戦い
信が覚醒を起こした最初の戦い、それは輪虎戦である。
山陽の戦いにおいて、信と輪虎は3度戦っている。
1度目は出会いがしらに、2度目は王賁を加え2対1の戦いだった。
どちらも輪虎の武力は圧倒的だったが、2度目の終盤に信が覚醒を始める。
注目すべきは信自身、強くなるには覚醒が必要不可欠であることを自覚しながら戦っていることだ。
信「もう少しで越えられそうな気がするんだ。限界って奴を!!」
馬上から大きな跳躍をし、上から渾身の一撃を叩き込む必殺技を見舞うも、輪虎はギリギリ受け止める。
そして最後の戦いとなる3度目は最初から一騎打ちに。
馬上から地上へ、死闘を繰り広げる2人。
輪虎圧倒的有利の中、何度も立ち上がり諦めない信の姿に驚く輪虎。
輪虎「この異常な程の精神(こころ)の強さ・・・何が彼をそこまで支えている・・・」
しかし決着は一瞬にしてついた。
輪虎を助けに信へ向かう魏兵を、副将・楚水がもつれながらも斬る。
起き上がった楚水の目の前に輪虎が!
反射的に楚水を斬ったその一瞬の隙を、信の体は逃さず輪虎を捉えた。
ところが、致命の一撃にも関わらず、輪虎は立ち上がり再び死闘へ。
豪雨の中、一歩も引かない2人。
勝敗を分けたモノ、それは背負ってきたモノの大きさと深さだった。
輪虎のそれは恩師であり、主である廉頗への思い。
対して、信は夢半ばにして逝った漂、憧れの大将軍・王騎や飛信隊の仲間たち。
そして信の強さは関わる者の思いを背負って、力に換えながら前に進むことができる『器』にあるのではないだろうか。
信「輪虎、お前と戦ったこともでっけェ糧にしてな」
関わる者、それは敵・味方関係ない。
自分より確実に数段強かった強敵・輪虎を、この『器』で覚醒を呼び込みながら討ち果たす。
結果としてこの勝敗が廉頗軍の敗戦を決定的とさせ、秦軍を勝利へと導いた。
龐煖との戦い(2度目)
2つ目の戦いは趙国三大天・龐煖との再戦だ。
1度目は王騎を失った馬陽で、羌瘣と共に立ち向かうも完敗だった。
そして2度目の戦いは、合従軍戦の最終盤・蕞防衛戦の時だった。
山の民の援軍により、秦軍の勝利が決定的となったその時、龐煖が現れた。
7日間の防衛戦ですでにボロボロとなっている信。
戦わず安全な場所から静観することもできた・・・
引き止める仲間たちに、信は落ち着いて理由を話す。
信「俺が天下の大将軍になる男だからだ」
龐煖のパワーの前に小石のように弾き飛ばされる信。
とどめを刺しにきた龐煖の大矛を狙い、信は自らが背負う全てを剣に託し叩きつけた。
やはり背負うモノを意識した時、覚醒する信。
しかし輪虎の時とは違い、意識的に、しかも一気に覚醒レベルに引き上げた。
今度は龐煖が弾き飛ばされる!
ここで李牧により、戦いは終了を告げられる。
結果、武神・龐煖を討つことはできなかったが、合従軍を秦国から撤退させることとなった。
龐煖は最後に信へ言葉を残す。
龐煖「今一度だけ見逃す。だが名を覚えておくぞ、信」
この5年後、2人の戦いは秦趙大戦にて最終決戦を迎えることとなる。
慶舎との戦い
3つ目の戦いは桓騎vs趙三大天候補・慶舎の戦い、黒羊丘でのことだった。
飛信隊を囮に使った桓騎の策は、すんでの所で失敗し慶舎を打ち損じてしまう。
慶舎に脱出を許したかと思われたその時、信の決断で慶舎のいる本陣へ特攻をかけた。
この作戦は一撃必殺、つまり1回のアタックで必ず慶舎の首を獲るしかない。
しかしこの時、飛信隊は誰もが傷つき数も少ない。
対する慶舎本陣は、無傷で屈強な兵士ぞろいだ。
分厚い戦力の前に、中々前に進めなくなり劣勢に追い込まれる飛信隊。
「今のお前など眼中に無い」と言い放つ慶舎に向かい、信は隊員たちに檄を飛ばす!
信「苦しいんなら俺の背を見て戦え。俺の背だけを見て、追いかけて来い!!」
全員が目を見開く。
信「続け飛信隊!!」
この言葉を機に、全隊員が覚醒と呼べるほど息を吹き返し、戦況が一変する。
この戦いでは信個人が覚醒したのではなく、一緒に戦う仲間を覚醒へと導き勝利をもぎ取ったのである。
それはかつて大将軍・王騎が先頭に立ち戦う時、自らの軍を何十倍の強さにして率いた姿と同じ。
信はそれをやってのけたのである。
趙峩龍との戦い
かつての趙三大天・藺相如、その盾といわれた趙峩龍(ちょうがりゅう)との戦いは、まさに死力を尽くす、今までで最大のピンチとなった。
黒羊丘では飛信隊ごと覚醒することで死地を突破できたが、趙峩龍は藺相如と共に王騎ら秦六大将軍と互角に戦ってきた生き残り。
飛信隊が覚醒し、自分たちと互角に戦える敵が現れたことに、喜びすら感じている恐ろしい敵だ。
戦いの最終盤、右翼を任された飛信隊は「肉を切らせて、骨を切る」、つまり危うい仲間を助けることなくひたすら前に出て、趙峩龍を討ち取ることだけに集中する戦術を取る。
「藺相如の盾」の防陣も、信を先頭にした突破により、本陣の趙峩龍へ迫る。
その様子を見ていた趙峩龍は、ついに本音を漏らす。
趙峩龍「王騎のようだな」
ここぞという時に先頭に立ち、矛を振るうことで、続く兵たちを“鬼神”に変貌させた王騎。
まさにその姿を信が再現している。
だが、趙峩龍はその上で飛信隊の弱点を見抜き、的確にその弱点を攻めることで死地に追いやる。
この最大のピンチを救ったのは羌瘣だった。
この絶対的な切り札の人知を超えた活躍により、信は趙峩龍との一騎打ちへと進む。
共に大きく、いろいろなモノを互角に背負って戦う2人。
勝負を分けたのは時代の流れだったのだろう。
機が熟していなかった時代の生き残りである趙峩龍では、まさに中華統一の流れに乗っている信に勝ってはいけなかったのかもしれない。
信の勝利は敵総大将・李牧と、仇敵・龐煖へと続く道を開いた。
まとめ:信の覚醒(成長)が意味するものとは?
こうして信の覚醒の歴史を並べてみると、覚醒の範囲が1人から飛信隊全体へと波及していくことが分かる。
趙峩龍との戦いでは、末端の兵士までもが覚醒することで、広い視野を持ち直感や連携を戦闘に役立てている。
それは同じ目的を具体的に語るリーダー(信)の言葉であったり、絶えず先頭に立ち戦う背中を見せることで、隊員たちは持っている力以上のモノを発揮できるからだ。
ここまで極端ではないが、実社会でも同じことに心当たりがあるのではないか?
漠然とした目標だけでなく、具体的にどうするか、どうあるべきかといった行動指針を指し示すことで、ついてくる者は自発的な試行錯誤の下で、経験値を上げていく。
肝心な場面で先頭に立ち、メンバーを鼓舞し自らの背を見せながら戦う(仕事する)姿は性別関係なく惚れるし、尊敬を集める。
『キングダム』がビジネスシーンで注目を浴びたり、コミュニケーションの取り方の著書が出版されたりするのは、「信」のこの一連の行動がまさに理想のリーダー像といえるからだろう。
大きな目標を達成しようとするとき、決してひとりでは成し得ない。
周囲に良い影響を与えながら、巻き込んで行くことで立ちはだかる大きな壁を乗り越えて行くことができると、飛信隊のリーダーは教えてくれている。
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