ロックバンドBlueglueボーカル「読書」を語る【ゲーテから曲を作りました】

それは、ある日突然ReaJoyに届いた一通の手紙から始まった。

そこに書かれていたのは、ある一曲への招待状。曲の名前は、『ウェルテル』。
ドイツ作家、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』をモチーフにして楽曲を生んだという、とある4人組ロックバンドからのもの。

文学有名作品×ギターロックバンド。

驚きの組み合わせで生まれた、偏愛ダンスポップ『ウェルテル』。

はたして、どのような経緯をもって、どんな人達が作ったのか。
文豪の作品をモチーフにした彼らにとって「読書」とは一体どのようなものなのか。

楽曲制作者である、ロックバンドBlueglueのボーカル渡邊直也さんに話を聞かせてもらった。

Blueglue(ブルーグルー)
東京都内を拠点に活動する、平成生まれのバンド。
2007年結成後、2016年にギタリストが加入し、4人組となる。
身体に馴染む90年代の楽曲をルーツに、等身大の言葉、シンプルなビートを掛け合わせ、日本の歌謡感と情緒を全世界に向けて発信していくロックバンド。


2019年4月10日に、最新曲『ウェルテル』をデジタルリリース。ゲーテ著『若きウェルテルの悩み』の主人公のような、熱狂的な片思いを描いた「偏愛ダンスポップ」である。

渡邊直也(わたなべなおや)
1990年生まれ。
Blueglue、ボーカル&ギターを担当。
好きな音楽:スピッツ、岡村靖幸、The 1975
好きな作家:村上春樹、三島由紀夫

本ってパスタより高いんですよ。ちょっと考えさせられました

―先日はReaJoyへご連絡いただきありがとうございました。
ドイツの文豪ゲーテの代表作である『若きウェルテルの悩み』から楽曲を作られたとのことでしたが、本はよく読まれるのですか?
夏目漱石や太宰治などの文豪辺りを主に読んでいました。でも、僕、実はあまり本好きって言えるような奴じゃないんですよ。有名なのは読んでおきたいなという感じで。
『若きウェルテルの悩み』を読んだきっかけも、学生の頃に村上春樹を読んで、そこから枝葉を伸ばす形で「海外作家の有名なものも読んでおきたいな」と思ったのがきっかけです。
実は今持ってる『若きウェルテルの悩み』もこの間買い直したものなんです。

―そうなんですか?
以前、イベントでお客さんにプレゼントしちゃったんです(笑)
それで買い直した時に気づいたんですが、本ってパスタより高いんですよ。その前にパスタを一食買っていたんですが、買い直した本がそれより高くって。ちょっと考えさせられました。

―考えさせられた、とは?
小説はパスタと違って消化されて排出されるだけのものじゃない。ずっと体に残って財産になるものだし、それが「芸術」ってものなので。だから、一食のパスタよりも値段がつくんだなあと。
そういうことを考えさせられました。

―なるほど。
けど、有名な作品ばかり読んでいるので、逆に最近の作家さんとかは知らなかったりします。
最近は、伊坂幸太郎をメンバーに薦めてもらって、『チルドレン』を読みました。陣内という男を中心に色んな事が起きる小説なのですが、この陣内の台詞と言いますか、スタンスがまたかっこよくって! 名言が多いんですよ。
他の作品も読んでみたいなと思い始めました。
なんだかにわか感隠せてないですね笑

―皆、そんなものですよ。最初はそんな感じに読み始めたりしますよ。
なんだかんだ『風の歌を聴け』みたいなのが好きだったりするんですけどね(笑)
あぁいう、カラッとした、アメリカのかるーい、薄いビールが浮かぶ感じの小説。
絶対、太平洋側で書いてますよね。

日本海側に居たら、あんな小説書けないと思います(笑)
アメリカって、スポーン! バコーン! イェーイ! みたいな感じのが多い。
でも反面、イギリスはどんよりとしてるものが多い。小説だけじゃなくて、音楽や映画なんかも。それが日本で言うと、日本海側か太平洋側か、みたいなことなんだと思います。
僕が好きな岡村靖幸さんなんかは新潟出身の日本海側で、やっぱり鬱屈しているものがあります。逆にSuchmosやサザンオールスターズは、神奈川、湘南の方じゃないですか。
気候ってやっぱり大きいと思います。

―ちなみに、渡邊さんのご出身は?
埼玉県です。
海もないような県なので、なんだかこう、非常に何者でもないような感じがします(笑)

気持ち悪さを、エグみを出したいと思ったんです

―『ウェルテル』という曲についてですが、どのような経緯からこのような楽曲の制作を行う事になったのですか?
たまたま生まれたんです。
コンビニでコーヒーを買った時、風がバッと吹いてこぼれちゃったんです。それで悲しくなっちゃって……。そうしたらふと、サビの「こぼしたコーヒー 見つめたんだ」というフレーズとメロディが浮かんできたんです。
そしてこれは片思いの曲になるなって思って。そうしたら、『若きウェルテルの悩み』を思い出したんです。

―ちょうど、読んでいたのですか?
ちょっと前に。
自分にも憧れだけで終わってしまった片思いの経験があって、そういうのとも重なって「これは『若きウェルテルの悩み』に近いな」と思いました。そこから歌詞の内容も、この本を踏まえたものに寄せていったりしました。

―それはつまり、歌詞から制作を行ったということでしょうか?
曲の方が先にできて、歌詞を詰めていきました。
歌詞は一番時間がかかるんです。長くて、2、3カ月ぐらいかかったりもします。

―そんなにかかるんですね! 『ウェルテル』は、どのくらいかかったのですか?
1か月ぐらいです。1回書き上げたんですけど、録音する3日前ぐらいに考え直しました。

―その3日間で変わったところはありますか?
実は最初、『若きウェルテルの悩み』にそこまでコミットできていない歌詞だったんですよ。あの物語ってどんどん泥沼になっていくじゃないですか。そういう風にこの歌の物語も進めたいと思って、2番で「本当は僕を気持ち悪がっているんだろう 感じてるよ 終わりだよ 安心だろう」と歌い、終わりでは「一緒になろう いつまでも いつまでも いつまでも」と歌うようにしました。気持ち悪さ、エグみを出したかったんです。
だって恋愛って、そういう気持ちを行き来するものでしょう?

―『ダンスポップ』という部分は、どこからできたんですか?
昨今のワールドトレンドでは、わりとロックバンドが少なくて、80年代のディスコファンクのような少し古臭い感じのものが流行っていました。
それを意識して、ドラムをロックバンドの音というよりは、クラブミュージックで流れるような音で作ったり、シンセサイザーのような音をギターで表現してみたりしました。

―あの音、ギターのものだったんですか!?
実はそうなんです。僕、ギターが好きなんですよ。だから世界の音の傾向を意識しながら、それを好きなものでやってみた。その結果生まれたのが、偏愛ダンスポップ『ウェルテル』です。

―今回は配信のみでのリリースとのことでしたが、MVは作らないのですか?
ビジュアルイメージ一枚でこの曲を出したいと思ったんです。情報量を少なくしたくて。
たとえば、この楽曲のポスター。これは僕が自分の感覚で作ったんですけど、情報はこれだけでも充分な筈なんです。

逆にどれだけ文字があって情報が詰まっていても、どうでもいい人は見ない。
でも、このビジュアルイメージのビビッドさでより多くの人に興味を持ってもらいたくて、こういう形で作ってみました。

―Twitterで拝見したのですが、ジャケットのコーヒーのシミ部分は、元々は花だったそうですね。
変えたのには何か理由があるのですか?
それも情報を絞った結果ですね。
ピンクでラブリーな気持ちを、青で溺れていく様を、最後にこぼれているコーヒーで絶望を表現しました。
小説を読んでいると映像みたいなものが浮かぶじゃないですか。この曲もそんな風に聴いた人の頭の中に映像が浮かべばいいなという思いで、このような形にしました。

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