“ストレス”という言葉が当たり前のようにある現代社会においてストレスに負けない脳を作り上げるために参考になるのが幕末を生きた吉田松陰の生き方である。
吉田松陰の脳の特徴や人物像、生い立ちを辿ってみると、今の私たちにも必要な生き方や考え方がたくさん見つかった。
こんな人におすすめ!
- 幕末の歴史の話が好きな方
- 最近ストレスを溜め込んでいる方
- 後ろ向きな考えをしてしまいがちな方
あらすじ・内容紹介
明治維新の中核人物を育てた吉田松陰の生い立ちや脳の傾向、行動からストレスに負けない脳を作り上げるヒントをまとめた1冊。
今作の著者であり、長年脳外科医を務めている篠浦氏は、
吉田松陰ほどストレスに強かった人間は、日本の歴史上にふたりといなかったでしょう
と語る。
脳外科医ならではの視点で脳の種類、特徴の説明から吉田松陰の脳の分析をし、当時の歴史を振り返りつつ、今の私たちにも使える脳のレベルの上げ方、逆境に強くなる方法が書かれている。
また、著者が独自に開発した、自分がどの脳のタイプなのか、ストレス耐性が高いのかを調べられる「脳優位スタイルテスト」のWebサイトのリンクが掲載されているので、自分の脳タイプを調べてから読み進めていくと課題の解決法もより見つけやすいだろう。
自分の脳タイプを事前に知ることで脳の使い方の課題がわかり、逆行に立ち向かえる脳作りに役立つ1冊だ。
『逆境をプラスに変える吉田松陰の究極脳』の感想・特徴
吉田松陰の素晴らしい人物像
今作では吉田松陰がいかに優れた脳を持っているかについて書かれている。
4種類の脳のタイプが書かれているが、吉田松陰はどの脳のタイプにも当てはまるという万能タイプ。
また記憶力が人一倍よく、子供の頃から“神童”と言っていいほど学問ができたそうだ。
吉田松陰の脳はもちろんすごいのだが、私が吉田松陰の素晴らしいと思ったところはどんなに優れている部分を持っていても偉ぶることなく、皆に優しく思いやる態度で接していたことである。
吉田松陰の教え子・横山重五郎は初めて吉田松陰に会ったときの印象をこう述べている。
余は学問に志して来たとは言え、いまだ乳臭い少年に過ぎない。
天下に名のとどろいた鬼神、豪傑とも言うべき先生が、このように諄々と真情を傾けて教えてくださるとは思わなかった。
この先生に教えを乞えば、いかに自分が不才であっても、何かひとかどの、用に立つ人間になり得るかも知れない。
吉田松陰は自分よりも劣っていると思われる人間にも決して見下さずに優しく耳を傾けた。
その謙虚な姿勢に重五郎は感動したのである。
吉田松陰の優しくて謙虚な人柄を知り、私も重五郎のように吉田松陰についていきたいと思った。
自分のスキルや地位が上がっても、まだできていない人に寄り添えるようになりたいものだ。
今まで知らなかった歴史秘話
幕末について学校の歴史の授業で学んだ記憶はある。
私が吉田松陰について学んだことは明治維新に関わる人に勉強を教えたこと、処刑されたことだったが、今作を読んで知らなかった幕末の出来事をいくつか知ることができた。
その中でも特に印象に残ったのは獄中での教育エピソードだ。
吉田松陰は下田踏海事件で野山獄に収監されたのだが、野山獄に入っていた受刑者たちを教えたり、逆に彼らの得意なことを習うようになる。
次第に受刑者だけでなく牢屋の役人たちも吉田松陰の講義を受講するようになり、暗く淀んでいた牢屋が次第に活気溢れる雰囲気になっていったそうだ。
著者も、
私は、牢屋の中でみんながお互いに教えあって活気を取り戻すという話が、世界史を含めて過去にあったという話を聞いたことがありません。
と語っている。
私もそんな話を聞いたのは初めてだ。
幸せと言い難い獄中で学びをし、ネガティブな思考になっているであろう受刑者たちを一緒に勉学に巻き込む吉田松陰の力は本当にすごいと思った。
違う考えの人を自分の考えに共感させることは難しいことで、それができる人は少ない。
脳の分析のために書かれたエピソードにより歴史の授業だけでは知り得なかった吉田松陰の人間力をたくさん知ることができた。
苦しみを苦しみと考えない
ストレスがない状態は心の負担がないことかと思いきやどうやら違うらしい。
なんと、ストレスのある状態の方が幸せを感じやすいそうなのだ。
吉田松陰の脳の分析をしつつ、さまざまな試練に負けず乗り越えてきたエピソードがいくつか書かれているが、彼の持っている考えにストレスに負けないためのヒントがある気がした。
吉田松陰は獄中にこんな言葉を残している。
「苦しみがはなはだしいときは、そのあとに訪れる楽もまたはなはだしい。
苦しみが少なかったあとに訪れる楽もまた少ない。これでわかるだろう、苦しみのときは長くなく、楽のときは久しいことを」
人生を振り返ってみると辛いときに頑張ったときの方が、簡単に成功したときよりも達成感や喜びが大きかった気がする。
中学時代陸上部の長距離をやっていて、部活が終わった後も疲れていても自主練を毎日続けた。
身体には当時辛かったけど、その後自己ベスト記録が出たときの喜びが大きかったことは今でも覚えている。
今思えばあのとき辛かったと思っていたことを続けることで幸福が増していたのだろう。
吉田松陰の言葉、生い立ちから苦しいと思ったことは後に幸せに繋がる経験だと考えるようになった。
まとめ
ここまで読んだ人の中には「やっぱり楽な道を進みたい」と考える人は0ではないだろう。
だが、本書の吉田松陰の生い立ちに触れることで、厳しい道を選択した先には今までに味わったことのない幸福感が待っていると考えることができるようになるだろう。
私も吉田松陰みたいに逆境に負けない脳を作り上げたい。
脳について勉強するとともに今作をもっと読み込んでたくさん苦労を経験してみよう。
逆境を経験する前の今よりもっと幸せが待っているにちがいない。
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