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『本屋の新井』あらすじと感想【書店員が綴るゆるくも真面目な等身大のエッセイ集】

『本屋の新井』あらすじと感想【書店員が綴るゆるくも真面目な等身大のエッセイ集】

この本の評価
読みやすさ
(5.0)
面白さ
(5.0)
考えさせられる度
(3.0)
装丁の美しさ
(3.0)
読みたい本が増える度
(5.0)
総合評価
(3.5)

あなたは新井見枝香と聞いて、何を思い浮かべますか?

「カリスマ書店員」?

芥川・直木賞を凌駕するほどの影響力を持つ、「新井賞」設立者?

彼女の肩書きに、惑わされていませんか。

今回紹介するのは、「本屋の新井」。

等身大の書店員の日常を綴る、スパイスの効いたエッセイ集です。

読書入門書としても充実しているので、面白い本を探す時にもおすすめですよ。

あらすじ・内容紹介

書店員の仕事は甘くない

利益も少ないし、紙袋の単価なんて、それこそ赤字覚悟の出血大サービスだ。

それでもなぜ、私は本を売るのか。

読者に伝えるべき本があるからに決まっている。

書店での仕事と、おすすめ本の紹介はもちろんのこと、個性豊かな書店員仲間にまさかの母ちゃん登場まで、愛とユーモアで日常を切り取った等身大のエッセイ集、ここに開幕。

注意
以下、ネタバレ注意です

『本屋の新井』の感想(ネタバレ)

母、かよ子現る。

レジが大混雑している中、隣のレジから「探している本があるんですけど、『すてきな奥さん』という雑誌はありますか?」というお客さんの声を聞いた新井さん。

いやに聞きなれたその声に、彼女は戦慄します。

「すてきな奥さん」は休刊だ!そしてその客は私の母親だ!

パソコンを叩いて、申し訳なさそうに新井さんの母(以下かよ子)にお詫びする新人の女の子。

そんな彼女に説明もせず、揚げたてのドーナツの箱を無言で押し付けるかよ子。

「そういうの、今ここでもらっても非常に困るんだが!」という新井さんの心の声も、どこ吹く風。

とことんマイペースな彼女は、「みーちゃん頑張ってねー!」と大声で手を振り振り、帰っていきました。

なんという母、かよ子強し。

彼女の後の受付で、新井さんは「忘れる・間違える・嚙む」の三大失敗をやらかし、舌も回らずレロレロ状態になってしまったのは言うまでもありません。

伊坂幸太郎に「似て非なるもの」なんて、私は売りたくない!

ある日新井さんは、売り場でお客さんから、「伊坂幸太郎みたいな面白い作家」が読みたい!とリクエストされます。

そこで彼女が取った行動は、思いがけないものでした。

伊坂幸太郎の何をもって伊坂幸太郎っぽいと思うのかは人それぞれで、私が思う伊坂幸太郎みたいなやつを勧めても、それは似て非なるものだろう。

と一通り思考した後、彼女は「伊坂幸太郎と全然関係ないけど自分が読んで一番面白かった本をお勧め」したのです。

「伊坂幸太郎のような作風の面白い作家」を知っているのに、あえて全く似ていない作家をチョイスする。

ここが新井さんの腕が窺えるところです。

私だったら、普通に村上春樹さんの「ねじまき鳥クロニクル」や佐藤正午さんの「鳩の撃退法」を薦めることでしょう。

知っていて、あえて突き放すというセンスをぜひ見習いたいものです。

三省堂書店、火星第一号店へようこそ!

新井さんが「三省堂書店火星第一号店」の書店員として、ホログラムであいさつをしているスタンスで書かれたものです。

巨大なドームに覆われた火星の中で、人々が地球と同じように生活できる世界。

地球政府が「火星移住者」を募った結果、希望者に共通したある点。

それは、ほぼ全員が、新井素子さんのSF小説「星へ行く船」を読んでいるということでした。

つまり、この話は星へ行く船を、彼女なりにオマージュしたもの、ということになります。

競合店がひしめく地球のターミナル駅書店で働くやりがいもありますが、その星唯一の書店として、星のみなさまに「三省堂書店があってよかった」と心から言ってもらえることは、書店員として最高の喜びです。

さあみなさん、星へ行く船に乗りましょう。以上、人手不足の火星からでした。

私の使命は、必要としている人の背中を叩いて、本を手渡すことだ。

作家の瀬まるさんが、小説「やがて海へと届く」を上梓したことについて、新井さんなりの見解を述べています。

実体験を元にした「暗い夜、星を数えて」も同じく、震災をテーマにしたルポです。

(どちらも2019年3月、文庫本になりました)

作家が抱いた震災への「想い」が凝縮、熟成され、ひとつの記念碑的小説が生まれたということ。

文学的にも、そして作家という人間の生きざまとしても、深く考えさせられる内容です。

見守る、なんていう距離ではない。だって私たちも、あの日を確かに経験していて、たまたま飲み込まれなかっただけだということを知ってしまっているから。

この小説を書くことは、「彩瀬まる」という人間の使命だったと私は思う。

(略)もはやこの小説のテーマは、震災ではない。それを含む世界そのものと、人間のありかたではないだろうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

まだまだこのほかにも入れたいエピソードが盛りだくさんだったのですが、泣く泣く削除しました。

私のおすすめは「終わらない遊園地のようなお店を作ろう。」「『くいしんぼちゃんと呼ばれている。」「作家のままならなさを、私はとても愛している。」です。

このエッセイを読んで、少しでも彼女に親しみを持っていただけたら嬉しいです。

その他にも、書店員ならではの苦悩も綴られているので、気になる方はぜひ書店や図書館で手に取ってみてくださいね。

主題歌:星座百景/この世で一番強いヤツ

パワフルな彼女に捧げたい一曲として選んだのが、未来創造型アイドルユニット、星座百景の「この世で一番強いヤツ」です。

書店を動かし、芥川賞、直木賞よりも注目されることがある新井賞を生み出した新井さん。

「新しいこの時代 すべてがチャンスなんだぜ」

彼女からは「なんてことはない。当たり前のことをしているだけだ」と謙遜されそうですが、熱意がなければ、愛がこもったPOPを作り続けることなど不可能でしょう。

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