男子高校生〈阿良々木暦(あららぎ こよみ)〉の影に封じられた幼女、〈忍野忍(おしの しのぶ)〉。
今は力を失った彼女の、かつての姿は〈鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼〉、または〈怪異殺し〉、或いは〈怪異の王〉。
かつて数々の異名を恣にした伝説の吸血鬼・〈キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード〉。
その第一の眷属、〈死屍累生死郎(ししるい せいしろう)〉が、400年の時を経て蘇る。
彼の狙いは、忍野忍の持つ妖刀・心渡と、そして彼女との復縁。
かつては専門家でもあった規格外の怪異に、阿良々木暦は如何様に挑むのか。
〈物語〉の終焉への伏線が張り巡らされた、『猫物語・白』の裏側で起こるもう1つの事件!
こんな人におすすめ!
- 西尾維新氏のファンの人
- 『終物語・上』を読了済の人
- 『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンを読了済の人
- 『〈物語〉シリーズ』ファーストシーズンを読了済の人
あらすじ・内容紹介
世界の崩壊を目の当たりにするという、波乱に満ちた夏休みを終えた阿良々木暦。
彼はとある事件を機に、かつての伝説の吸血鬼・忍野忍とのペアリングを切られ、凡そ半年ぶりに生身の人間に戻っていた。
怪異と相対するには心許ないその状態で彼は、専門家の元締・〈臥煙伊豆子(がえん いずこ)〉から、後輩・〈神原駿河(かんばる するが)〉を呼び出して欲しいと頼まれる。
不穏な気配を感じつつも、依頼通りに神原駿河を因縁の場所・旧学習塾跡に呼び出す阿良々木暦だったが、突如彼らの前に謎の鎧武者が現れる。
この鎧武者こそ、忍野忍/キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの最初の眷属、死屍累生死郎であった。
かつては専門家であった故にそのやり方を熟知しており、その上これまでに阿良々木暦が行き逢った凡ゆる怪異の力を用いる彼の狙いは、忍野忍が所持する妖刀・心渡と、そして忍野忍との復縁。
かつてない強敵を前に、生身の人間となった阿良々木暦はどの様に挑むのか。
そして忍野忍は死屍累生死郎に、どのような言葉を掛けるのか。
『終物語・下』に至るまでの伏線が散りばめられ、『猫物語・白』の裏側も明かされる、〈物語〉終焉へのターニングポイント!
『終物語(中)』の感想・特徴(ネタバレなし)
遂に登場する、最初の眷属
ああ、残酷なことをしろと言っている
『鬼物語』で語られた、忍野忍の過去。
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード時代に出会った、全てを飲み込む〈くらやみ〉や、彼女を崇める村人たち。
そんな中で一際存在感を放っていたのが、〈初代怪異殺し〉にして初めて彼女の眷属となった、専門家だろう。
今作ではその〈初代怪異殺し〉が、400年の時を経て復活を果たす。
その名は、死屍累生死郎。
かつてキスショットの眼前で太陽の下に身を乗り出し焼身自殺を遂げ、彼女の心に大きなトラウマを植え付けた彼は、様々な怪異と融合して甦る。
彼の狙いは、自身の所有物であり、現在は忍野忍が所有している妖刀・心渡と、そして忍野忍との和解と復縁。
その為に、邪魔者となる阿良々木暦を排除しようとする
自身よりも圧倒的な力を、更に言うならば〈主人公力〉とでも言うべき存在感を備えたこの怪異を相手に、阿良々木暦は如何なる手段をもって立ち向かうのか。
そして、復縁を拒み続ける忍野忍は、彼にどのような言葉を投げかけるのか。
圧倒的な存在を前にした、阿良々木暦の戦いと忍野忍の葛藤から、目が離せない。
〈エピソード〉の再登場と、『猫物語・白』の裏側
これは驚いた…これは本当に想定外だ
更に今作では、かつて『傷物語』で阿良々木暦と敵対した専門家・〈エピソード〉も再登場を果たす。
以前は敵として立ち塞がった彼は、今回は臥煙伊豆子に呼び出された味方として姿を見せる。
古参敵、味方となれば、弱体化、とは少年漫画にありがちな展開だが、そこは西尾維新氏。
王道を歩めどは余計な定番は排除しており、決してエピソードの格が落ちることは無い。
もはや敵同士ではなくなった阿良々木暦とエピソードが何を語り合うのかも、今作の注目ポイントだろう。
また今作は、時系列的に『猫物語・白』と同時並行でストーリーが進行している。
そのため、『猫物語・白』で起こる放火事件が物語に関わってくる他、阿良々木暦が〈羽川翼(はねかわ つばさ)〉に送った、〈しんぱいすれな〉という心配を煽る様なメール、『猫物語・白』のラストシーンで登場した阿良々木暦がボロボロであった理由など、諸々の謎が明かされる。
本書を読み終わった後は、きっと『猫物語・白』を再読したくなることだろう。
〈終わり〉へと至る為の、伏線の数々
誰かと誰かが出会わなきゃ、話にならないだろうが。物語にならないだろうが
そして今作『終物語(中)』は、『〈物語〉シリーズ』の最終巻である『終物語(下)』に至るための、様々な伏線が張り巡らされている。
臥煙伊豆子の目論見、死屍累生死郎の復活、妖刀・心渡の存在。
様々な要素が、〈物語〉周辺への道筋を明確に形作っている。
これ以上はネタバレになるため、あとは是非とも実際に読んで、確かめてみて欲しい。
すぐに、『終物語(下)』にも手を出したくなることだろう。
まとめ
『〈物語〉シリーズ』のラスト、阿良々木暦の青春の終わりを描く、『終物語』。
その中間に位置する今作は、前作『終物語(上)』とは打って変わってバトル色の強い作品となっており、決して中弛みを感じさせない。
また、『猫物語・白』と同時進行で物語が展開していることにより、其々の物語が互いの謎を補完し合っている見事な構成。
〈物語〉の終わりへ向けて、最高潮に盛り上がる1冊となっている。
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