高校2年生から3年生にかけての春休み、怪異と出会った少年〈阿良々木暦(あららぎ こよみ)〉。
彼を襲ったのは、〈鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼〉とも〈怪異の王〉とも呼ばれる伝説の吸血鬼、〈キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード〉。
2人の出会いから始まった〈地獄の春休み〉を通して、怪異と共にあることを決めた阿良々木暦の前には、果たしてどのような道が広がっているのか。
阿良々木暦が歩む、怪異と青春に満ちた1年間の〈物語〉にして、『〈物語〉シリーズ』ファイナルシーズンの幕開け。
こんな人におすすめ!
- 西尾維新氏のファンの人
- 『〈物語〉シリーズ』セカンドシーズンを読了済みの人
- 『〈物語〉シリーズ』ファーストシーズンを読了済みの人
あらすじ・内容紹介
高校2年生から3年生へと移り変わる春休み、〈阿良々木暦〉は怪異に襲われた。
彼を襲った怪異は、〈鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼〉〈怪異の王〉の異名を恣にする伝説の吸血鬼、〈キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード〉。
その出会いを皮切りに、阿良々木暦の眼前には多くの人物が現れる。
〈猫に魅入られた〉少女や、〈蟹と出会った〉少女、〈蝸牛の迷子〉に〈猿に願った〉少女、〈蛇に巻きつかれた〉少女。
そして、〈詐欺師〉や〈暴力陰陽師〉といった専門家や、その元締めである〈なんでも知ってるおねーさん〉。
更に、謎の転校生である〈忍野扇(おしの おうぎ)〉。
数々の対立と、対話と、和解。
彼らと語らい、恋をし、勉強をし、そして戦う、阿良々木暦の1年間の軌跡。
『〈物語〉シリーズ』ファイナルシーズン、開幕‼︎
『暦物語』の感想・特徴(ネタバレなし)
〈ミステリー色〉強めの、初期作品の作風
あら?阿良々木くん。どうして人の独り言を勝手に聞いているの?育ちが悪いの?
今作は、『〈物語〉シリーズ』を代表する語り部、〈阿良々木暦〉が過ごした高校3年生4月〜3月の、1年間の軌跡を辿る物語だ。
ファーストシーズン、セカンドシーズンを合わせると全10作、12冊に及ぶ『〈物語〉シリーズ』は、第1作『化物語』の上巻が2006年11月、セカンドシーズン最終巻の『恋物語』が2011年12月に発刊されており、この時点で5年以上の月日が流れているという長寿シリーズ。
その息の長さ故に、やはり徐々に作風の変化が見られる『〈物語〉シリーズ』だが、今では少し懐かしめの〈ミステリー色〉が強めの作品が収録されている。
怪異に関わり続ける阿良々木暦が1年を通して出会う、ちょっとした〈謎〉の数々はきっと、過去から現在に至るまでの『〈物語〉シリーズ』がひと繋ぎの物語であることを感じさせてくれるはずだ。
これまでのキャラクター達も再登場
止まったらそこは道ではなくなるのです
更に今作は、これまでの『〈物語〉シリーズ』に登場した様々なキャラクター達が再登場を果たす。
ファーストシーズンからずっと登場していたヒロイン達、〈戦場ヶ原ひたぎ(せんじょうがはら〜)〉や〈羽川翼(はねかわ つばさ)〉、〈八九寺真宵(はちくじ まよい)〉に〈神原駿河(かんばる するが)〉、〈千石撫子(せんごく なでこ)〉などの初期メンバーはもとより、登場頻度はさほど高くなかった〈忍野メメ(おしの〜)〉や〈貝木泥舟(かいき でいしゅう)〉、〈影縫余弦(かげぬい よづる)〉といった専門家の面々と、元締めである〈臥煙伊豆湖(がえん いずこ)〉。
更に、阿良々木暦の2人の妹である〈阿良々木火憐(あららぎ かれん)〉や〈阿良々木月火(あららぎ つきひ)〉など、それはもうこれまでのキャラクター達が揃い踏みする。
1話につき1人、ないし2人は何がしかのキャラクターが登場するため、〈お気に入りのキャラクターが中々登場しない〉という読者も、存分に楽しめる作品となっている。
〈終わり〉に向けて加速する〈物語〉
怪談や流言飛語というのは、人心が乱れている時にこそ暴露する。人心が乱れるということは、つまり拠り所がないということだ
阿良々木暦の1年を1ヶ月毎に分けた短編を12作収録した今作ではあるが、本筋の物語もきちんと進行する。
4月から始まる阿良々木暦の〈物語〉は、月を跨ぐ毎になんとも言えない不穏な〈くらやみ〉が纏わり付き始める。
少しずつ欠けていくキャラクター達と、暗躍する〈奴〉。
徐々にシリアスな空気が蔓延する中で、阿良々木暦はどのような行動を見せることになるのか。
3月、臥煙伊豆湖との語らいの中で迎える結末とは。
そして最後に待ち受ける1つの再会は、どのような未来を示すのか。
〈終わり〉に向けて収束し始める〈物語〉の、行く末からも目が離せない。
まとめ
〈阿良々木暦〉が過ごす1年間を追った、12作の短編を収めた今作。
『〈物語〉シリーズ』ファーストシーズンにあった、ミステリー要素が盛り込まれることで、ちょっとした懐かしさが感じられる作品となっている。
更に、徐々に不穏になっていく空気感や、増していく緊張感、そして臥煙伊豆湖との語らいの末に阿良々木暦が迎える結末など、全体のストーリー展開にも進展が見られるため、単なる〈番外編〉として見逃すことはできない作品となっている。
是非とも阿良々木暦の1年間を、共に歩んでみてほしい。
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