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『よるのばけもの』あらすじと感想【想像力を手に夜を蹂躙するのはすべてを呑み込む「化物」】

『よるのばけもの』あらすじと感想【想像力を手に夜を蹂躙するのはすべてを呑み込む「化物」】

この本の評価
読みやすさ
(3.5)
面白さ
(4.0)
装丁の美しさ
(3.0)
葛藤度
(5.0)
総合評価
(4.5)

あなたが逃げ続けていることは何ですか

人間関係にまつわるものでしょうか。

それとも、また別の事柄でしょうか。

さて、今回は住野よるさんの『よるのばけもの』をご紹介します。

ヘヴンが被害者側の物語なら、こちらは加害者側の物語です。

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夜になると化け物になる男の子と、なぜか彼を怖がらない女の子が夜の学校で出会うことから始まる、友情とも愛情とも形容できない、奇妙で、人間の内面を深くえぐる作品となっています。

住野よる大ヒット映画の原作小説

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こんな人におすすめ!

  • 本音を言い出せない人
  • 傷つくのが怖くて、勇気が出せない人
  • 強がっているけれど、内心では独りぼっちは寂しい人

あらすじ・内容紹介

主人公のあっちーこと、安達は不思議な体質を持っています。

それは、「夜になると、ばけものに変化してしまう」という特徴です。

黒くてうごめく粒が集まってできた、八つの目と、六つの足と、四本のしっぽを持つばけもの。

身の毛もよだつような姿です。

なぜそうなるのかも分からぬまま、彼は人間の姿と、ばけものの姿を使い分けることになります。

いつものように家を抜け出し、一人(一匹)で夜の街を駆け抜けるあっちー。

忘れ物を取りに学校へ行くと、思いがけない人物に出会いました。

彼女は矢野さんといい、吃音まじりの喋り方が特徴的な女の子です。

そのせいで、クラスでは浮いてしまっているんですね。

あっちーとは全く関係性のない女の子でした。

彼女と化け物の僕との、奇妙な「夜休み」が始まります。

化け物の僕と、「奇人」の彼女

あっちーは心の中で、彼女のことを見下しています。

「いつもにんまりと笑っている、何を考えているのかがわからない、(頭の)おかしな子」だと思っているのですね。

それは夜のばけものの姿でも、昼間の人間の姿でも変わりません。

しかし、この判断が間違っていることに彼は後々になってから気付くようになるのです。

本音はひとつも言えない世界で

窮屈な学校。

本音はなにひとつ言わない友人関係。

少しでも本音を言えば、もしくは道理に合っていない行動をしたその瞬間に、仲間意識からはじかれてしまう「スクールカースト」。

それを加速させたのが、現在のいじめです。

今の時代を生きる子供たちは、非常に窮屈な生活をしています。

だからこそ、私たちは考えなければなりません。

欺瞞や詭弁でもなければ、肥大したエゴイズムでもない、本当の答えというものを。

空気を読み、波に乗り、自分の気持ちを隠しつづけるのでもなく、理解できないものをそのまま放置するのでもなく、自分の頭で考えるということを、この作品は執拗に説いています。

誰もが偽善者かつ傍観者

この世界の中に、本当の善人はひとりも居ません。

能登先生をはじめ、あっちーも、いつも本を読んでばかりの緑川双葉も、彼女のことを毛嫌いする矢野さんも、いじめられている矢野さんを心配しながらも、いじめる側に入ったまま動けない井口さんも、あっちーと仲のいい笠井も、自分の顔が目立つことを自負している中川さんも、誰もかれもが、何かしらの間違いを犯しています。

誰もが見て見ぬふりをする世界。

しかし、このような状況はどこにでも存在するのではないでしょうか。

本当は「おかしい」人なのではなく、その人のことが「分からない」だけなのではないか。

理解しようとしないから、誤解が生まれるのではないか。

「あの人はおかしい」と勝手に決めつけておけば、その方が安心。

少しでも想像力を働かせば、全く違った世界が見えてきそうなのに「見たくないから見ない」。

もっとちゃんと見るべきだ。

この問いかけの矛先は常に、私たちに向いています。

夜の時間、黒い粒をまとって六本の足を生やし八つの目をぎょろつかせる姿。

昼の時間、人間の姿をして皆からずれまいといじめに加わる行動。

それとも、いつも心の中に巣くって生きている、矢野さんが信じたような僕を覆い隠してしまうほど大きく育ったこの黒いもの。

どれのことだ。化け物って、本当はなんのことだ。

主題歌:a flood of circle/月面のプール

途中まで迷っていた、Nothing’s Carved In Stoneの「キマイラの夜」は彩瀬まるさんの「朝が来るまでそばにいる」に贈るとして、今回の選曲は二つです。

一つ目は、a flood of circle(ア・フラッド・オブ・サークル)の「月面のプール」です。

この小説の元ネタになった一曲ですね。

十字路で出会った悪魔がこの先の宿命をあざ笑っても 進むしかないんだ

まるで、あっちーの未来を示唆するような歌詞です。


もう一曲は、KEYTALKで「暁のザナドゥ」です。

同じ「ザナドゥ」ですが、間違ってもオリビア・ニュートン=ジョンが歌うものではありません。

語源はモンゴルで、「理想郷」「桃源郷」という意味です。

「シャングリラ」などと同じですね。

完全に中の人の趣味ということでご了承ください。

「心のどこかに潜んでいる化け物」ということで、想像した一曲となっています。

衝撃を受けた方には、「STAY」や「センチメンタル」「ロトカ・ヴォルテラ」「HELLO WONDERLAND」「東京シネマ」をおすすめします。

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